鎮西の主将でエースの鍬田憲伸(3)ら

全国高校総体(インターハイ)バレーボールの男子決勝が8月1日、山形市総合スポーツセンターで行われ、鎮西(熊本)が開智(和歌山)を3-0で下し、21年ぶり3度目の優勝を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

主将の鍬田、不調から復活「みんなが声かけてくれた」

主将の鍬田憲伸(3年)と1年生の水町泰杜。頼れるダブルエースが〝カナリアイエロー軍団〟を21年ぶりの日本一に導いた。

前回覇者の駿台学園(東京)や、大塚(大阪)、東福岡(福岡)といった近年の優勝校が大会序盤で次々と姿を消す中、鎮西は決勝トーナメントに入ってから準々決勝までの4試合をすべてストレート勝ち。順調に勝ち上がったかに見えたが、鍬田は予選グループ戦や1回戦は不振にあえいでいた。

「畑野(久雄監督)先生を優勝させたい思いや、キャプテンとして、エースとして自分がやらないといけないと考えすぎて、プレーが小さくなってしまいました」と鍬田は振り返る。しかし、「みんなが後ろから声をかけてくれた」ことで徐々に復調し、準決勝の習志野(千葉)戦と開智戦では、持ち味の破壊的な攻撃力を完全に取り戻していた。

鎮西の主将でエースの鍬田憲伸

中学優勝メンバーの1年生と上級生の息ぴたり

今年度の鎮西には、昨年12月の全国都道府県対抗中学バレーボール大会で14年ぶりに優勝した熊本チームの主力数人が加入。赤星が「刺激をもらっています」と言うように、元気のある1年生がチームを勢いづけている。その1人で鍬田とともにエースを担う水町は、「大事な場面で引っ張ってくれるのは3年生。1年生は下から押し上げていきたい」と、上級生に厚い信頼を寄せていた。

1年生エースの水町泰杜

セッターの赤星伸城(3年)は、印象に残った試合として習志野戦を挙げた。

「今年1月の春高バレーの初戦で負けた相手。絶対にリベンジするという思いで挑みました」と並々ならぬ決意でコートに向かった。最初のセットを落とし、「少し焦りもあった」というが、「まだ1セットあると自分たちに言い聞かせて、しつこくしつこくプレーした」ことが鮮やかな逆転劇につながった。

セッターの赤星伸城

ダブルエースの攻撃とブロックフォローが決め手

初優勝を狙う開智との決勝戦。鎮西は水町や鍬田の攻撃を軸に、要所でブロックも決まって、幸先よく2セットを先取する。鍬田は「スパイクを止められても、ブロックフォローができればまた攻撃ができる。意識していたブロックフォローはかなりできていたと思います」と手応えを感じていた。

第3セットに入ると開智の反撃にあい、2-7と劣勢ムードとなったが、リベロの荒尾怜音(1年)を中心に粘り強くつなぎながら1点ずつ返していく。中盤に逆転に成功して逆に相手を引き離すと、マッチポイントでは鍬田の強烈なサーブで開智の守備を崩し、谷武珍(1年)が冷静に押し込んだ。

優勝を決め、喜びを爆発させた選手たち。鍬田は重圧から解き放たれた安堵感からか、目を真っ赤にしていた。

リベロの荒尾怜音

熊本地震で自校の体育館使えぬ日々も「やれることやる」

昨年4月に熊本を襲った地震の影響で、鎮西バレーボール部は今なお、学校の体育館で練習できない。新たな体育館が完成するのは来年7月。現在は近隣のいくつかの体育館を借りて練習を行っているものの、移動だけで往復2時間以上かかる場所もあるという。畑野監督は「やれることをやっていくしかありません」と話し、選手もその状況に不平を漏らしたりはしない。

だが、そうした苦境にいることが選手をより一層たくましくした面はあるだろう。水町が言い放った「秋の国体と来年の春高も獲ります!」という言葉には、王者だけが持つ力強さがみなぎっていた。

インターハイバレーボール男子を制した鎮西
インターハイバレーボール男子を制した鎮西