2024年度大学入学共通テストの本試験が1月13・14日に実施された。河合塾は14日夜、2日間の出題内容の分析や来年以降の受験生へのアドバイスをまとめた「総合コメント」を発表した。

「思考力、判断力、表現力」を問う出題

出題内容は「共通テストも4年目となり、各教科とも出題の意図や難易度が明確になって安定してきた」とみている。「思考力、判断力、表現力」を問うという問題作成方針におおむね則った出題だったという。

教科書にない資料・実験も題材に

教科書に載っていない資料や実験などを出題し、「資料や問題文から得られる情報と授業や教科書で学んだ既知の知識を基に関連づけ、推論、考察する力」が今年も求められた。

日常生活を題材も出題され、「数学ⅠA」の「電柱の高さと影の長さの測量」や化学の冷却材や医薬品などが素材とされた。時事に関連した出題では、現代社会の「インターネットを利用した選挙」「SDGs」、政治・経済の「成人年齢の引き下げ」、生物基礎で「外来生物と生態系」などがみられた。

「日々の学習から『疑問をまとめる』」習慣を

来年以降に受験する新高校3年生以下も、授業や教科書で学ぶ内容と関連した「日常生活や社会の出来事にも目を向けておきたい」と助言する。「教科書に出てくるような標準的な知識・項目をしっかり身に付けることと併せ、考えることを意識しながら学習をする癖、習慣を身に付けておく」ことや「普段の授業や日々の学習の中で興味を持ったり疑問に思ったことを整理したり、意見をまとめたりすることを意識して、自分自身の頭でしっかりと考え、知識を活用する力」を伸ばすことが大事という。

コメント全文は以下の通り。

1.志願者、受験者数

本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災されたすべての方、そのご家族および関係の方々に心よりお見舞いを申し上げます。

そのような厳しい環境にいる受験生もいる中、4年目となる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が、1月13日・14日の両日に、全国668会場で実施された。

確定志願者数は491,914人(昨年512,581人)で、20,667人減少(昨年比96.0%)。

志願者数の内訳をみると、現役生は419,534人(昨年436,873人)で昨年比17,339人減少(昨年比96.0%)、既卒生等は72,380人(昨年75,708人)で3,328人減少(昨年比95.6%)した。

現役生志願率(令和6年3月の高校卒業見込者のうち、共通テストに出願した者の割合)は45.2%で過去最高となった。

受験者数は、外国語(リーディング)ベースで450,535人。英語志願者での受験率は91.6%で、昨年よりややアップした。

2.出題内容

共通テストも4年目となり、各教科とも出題の意図や難易度が明確になって安定してきたと思われる。

出題傾向・形式についても、総じて昨年に引き続き大きな変化はなく、大学入試センターが示している「思考力、判断力、表現力」を問うという問題作成の基本的な考え方、各教科・科目の出題方針に概ね則った出題であった。

受験生にとっては初見と思われる教科書に載っていない資料や実験などを掲出し、出題との関係を正確に問う問題も引き続き出題されている。これらの問題では、資料や問題文から得られる情報と授業や教科書で学んだ既知の知識を基に関連づけ、推論、考察する力が求められている。どの教科も思考や理解の質が問われており、身に付けた基本的な知識や解法、公式の使い方などを十分に理解した上で問題にあたることが重要である。また、限られた時間の中で文章、資料、図表などの内容をしっかり把握した上で、設問の意図を正しく理解し、解を導く力や様々な場面で実践的に活用する力を問う出題となっている。

今回の共通テストの特徴的な問題例として、英語リーディングで、第4問「英語クラブの部屋をよりよくするには」というテーマで、記事やアンケート結果を読みながら答える問題が今までにない形式だった。様々な情報を組み合わせて答えなければならず、受験生には負担が大きかったと思われる。

英語リスニングの、ガラスの性質として「あてはまらないもの」を選択させたり、名詞や形容詞ではなく動詞から始まる選択肢を選択させたりする問題は、受験生にとっては見慣れない出題であった。動詞の主語が何なのかすぐに思い浮かべられる高い英語力が必要である。

国語(現代文)第1問では、文章Iと文章IIという2つの評論文を読んで答えさせる昨年・一昨年とは異なり、1つの評論文から出題され、問1~問5はセンター試験時代の第1問と類似したタイプの設問となった。新教育課程で学んだ高校生が受験する次年度以降の共通テストでもこうした比較的オーソドックな問題が出題されるかは予測しづらいが、どのような形式にも幅広く対応できるようにしておきたい。なお、試行調査で示された共通テストの新傾向の1つとして出題が注目されていた「現代文の実用文」は、今回もなく4年連続で出題されなかった。

数学I・数学Aでは、共通テストになってから毎年出題されている日常の事象を題材とした問題として、今年は電柱の高さと影の長さの測量の問題が出題された。さらに、近年出題の増えている分野の融合問題として、2次関数と図形の融合問題も出題された。

数学II・数学Bは、論理的思考力を問う設問が多かった。出題者の誘導に乗りづらい設問も多く、選択肢に紛らわしいものがあった。計算量はあまり多くないので、数学が得意な受験生はすぐに解答できるが、苦手な生徒には解きにくかったであろう。

化学では、実用電池、冷却剤、医薬品、テストステロンなど日常生活や社会と関連する物質を題材とした問題が多く、アスタチン、ニッケルの製錬、質量分析などの目新しい問題もみられた。質量スペクトルをはじめとして、グラフや表からポイントとなる情報を読み取ったり、適切なグラフを判断したりする力が重視された。

生物では、第6問の探求活動による考察で、サイコロを用いて遺伝子頻度の変動をシミュレーションする問題が目新しい。

日本史Bでは、昨年に引き続き、歴史事象を多面的・多角的に考察させる問題が多く出題され、特に史料を用いた出題が増加した。

時事的なトピックとしては、現代社会で「インターネットを利用した選挙」、「SDGs」、政治・経済で「成人年齢の引き下げ」、生物基礎で「外来生物と生態系」などの出題があった。

大学入試センターの作成方針にあるような、「どのように学ぶか」を踏まえた問題の設定として、授業において生徒が学習する場面、身近な出来事や世の中で起こっていることから課題を発見し解決方法を構想する場面(主体的な学び)、資料やデータを基に考察する場面など、学習の過程を意識した出題が昨年同様に見られた。この出題傾向は新課程入試となる次年度以降も継続することが想定されるので、日常生活や社会の出来事にも目を向けておきたい。

3.平均点

5教科7科目(900点満点)総合の現時点での平均点は、理系で561 点、文系で546点になると予想される。

新高1・2・3生のみなさんへ

共通テストでは、単なる知識問題ではなく、知識を活用して運用する力、図表やグラフを分析して読み解く力、長めの文章や多くの資料を時間内に読み込んで正確に理解する力が必要となる。

日頃の学習から教科書に出てくるような標準的な知識・項目をしっかり身に付けることと併せ、考えることを意識しながら学習をする癖、習慣を身に付けておくと良い。

受験学年になったら、共通テストはもちろんセンター試験時代を含めた過去問に多く取り組み、限られた時間内に問題を解く練習を積んでおくことが有効な対策になる。まずは、教科書に載っている基本的な知識の習得や解法、公式の使い方などをしっかりと身に付けておいてほしい。

ただ、それらの知識や公式・解法などを単に暗記していればすんなり問題が解ける訳ではなく、なぜそうなるのかという本質的な理解の上で、様々な出題に対応できる「知識を活用する力、使いこなす力」が必要である。例えば知識はその意味や相互の関係などについて、資料、史料、図、グラフ等も合わせて総合的に理解しておきたい。

また、共通テストで出題される問題の場面設定は、日常的な場面や学習の場の設定も増えてきている。普段の授業や日々の学習の中で興味を持ったり疑問に思ったことを整理したり、意見をまとめたりすることを意識して、自分自身の頭でしっかりと考え、知識を活用する力を伸ばしてほしい。

河合塾は、これからもがんばる受験生を応援し続けます!!