データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2024年度大学入学共通テストの「生物」の問題分析は次の通り。
― さまざまな分野から、知識と思考力がバランスよく問われた。昨年より易化 ―
全6大問必答で、昨年と同様、複数の大問で分野融合問題が出題された。与えられた情報をふまえて初見の実験結果を予想したり、分析したりする問題がみられた点は昨年と同様であったが、問題を解くうえで処理する情報量は減少し、昨年より易化。
大問数・解答数
大問数6は、昨年から変更なし。昨年28個であった解答数は26個に減少した。
出題形式
語句選択問題を中心に出題された。
出題分野
昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
問題量
昨年並。
難易
昨年より易化。(昨年は得点調整が行われたため、問題自体の難易を比較)
大問別分析
第1問「生命現象と物質」(14点)
代謝と遺伝子発現の調節(オペロン)が扱われた。問1では、呼吸に関するやや細かい知識が問われた。問2では、実験結果を示すグラフから遺伝子発現の調節について推論することが求められた。問3では、仮説を検証するための適切な実験条件を選ぶことが求められ、グルコースの有無での比較をキシロース存在下で行うかどうかで、判断に迷った受験生もいたと思われる。
第2問「生命現象と物質、生物の環境応答」(17点)
問1は、輸送タンパク質に関する知識問題であり、問2は、気孔の開口におけるカリウムチャネルのはたらきに関する実験考察問題であった。 問3・問4は、ニューロンの興奮における電位変化でのチャネルとポンプのはたらき、ニューロンの興奮の伝導と伝達に関する知識を問う問題であった。問2の実験考察問題以外は、基本的な知識を活用して解く問題であった。
第3問「生殖と発生、生物の環境応答」(16点)
生物の環境応答と生殖と発生の分野から、筋肉と筋肉の分化について出題され、知識問題と考察問題の両方が出題された。問1は、筋肉に関する知識を問う問題であった。問2は、筋肉の収縮に関する問題であり、問3は、発生と筋肉の分化に関する問題であった。問2・問3は、いずれも与えられた実験とその結果を読み取り、新たな実験の結果を予測する問題であった。
第4問「生殖と発生、生物の環境応答」(19点)
問1は、有性生殖と無性生殖の特徴に関する基本的な知識を活用する問題であった。問2は、フィトクロムと光周性に関する基本的な知識を用いれば判断できるため、答えやすかったであろう。問3は、同化産物の分配を題材とした仮説検証に関する問題で、測定すべき項目と比較する値を求める計算式を判断する内容であった。計算式の検討には時間を要したと考えられる。
第5問「生態と環境」(14点)
生態系の物質生産が扱われた。問1では、生産構造図に関して、知識を活用して推論することが求められた。問2では、生態系の気候と物質生産の特徴に関して、表のデータから推論することが求められた。問3では、森林を焼き払って農耕地として利用することが生態系に与える影響について、推論することが求められた。
第6問「生物の進化と系統」(20点)
Aは、生物の系統・分類に関する問題であった。問2は、海の3種類の動物の特徴から、その動物が当てはまる門を推論する問題であった。 Bは、世代間における遺伝情報の伝達に関する問題であった。問3は、提示されたシミュレーションの方法にもとづいて、世代8で世代1の個体Eの遺伝情報をもつ個体数と、突然変異をもつ個体の一世代での最大数を推論する目新しい問題であった。見慣れない形式に戸惑った受験生もいただろう。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2023年度 48.46点
- 2022年度 48.81点
- 2021年度 72.64点
- 2020年度 57.56点
- 2019年度 62.89点