データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2024年度大学入学共通テストの「地学」の問題分析は次の通り。

―複数の図表を組み合わせて考察する問題が多く出題された。昨年よりやや易化 ―

第1問ではさまざまな分野からグラフを用いた問題が出題された。表を用いて未完成のグラフを完成させ、さらに考察する問題は目新しい。第2問~第5問でも図から読み取れることがらと知識とを組み合わせて考察を行う問題が多く出題されたが、必要とされた知識は標準的であった。昨年よりやや易化。

大問数・解答数  

大問数5、解答数27個は、昨年から変更なし。

出題形式

語句選択問題を中心に出題された。

出題分野

昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。

問題量

昨年並。

難易

昨年よりやや易化。

大問別分析

第1問「観察や実験の結果をグラフや図を使って可視化し、自然の特徴を抽出する作業」(20点)

幅広い分野から基本的な知識や理解を問う問題が出題され、未完成のグラフを完成させて特徴を読み取る力が問われた。問1は海洋底の年代と海嶺からの距離よりプレートの移動速度を比較する問題、問2はハッブルの法則から銀河までの距離を読み取る問題であった。問3は圧力と温度の図からマントル物質の状態を読み取る問題で、与えられたデータをグラフにプロットして曲線を描くことで正答を導く目新しい問題であった。

第2問「固体地球」(15点)

問1は中央部の氷がとけて消失した後の地殻のようすを推測するアイソスタシーの問題で、定性的な図を選択する形式は目新しい。問2は地磁気の逆転とオーロラや残留磁気との関係に関する問題であった。問3は日本付近のプレートの三次元的な位置関係について考察する力が問われた。問4は余震の分布と各点の地震計の記録から断層運動を分析する典型的な問題であり、演習経験の有無で差がついただろう。

第3問「鉱物と岩石、化石、地質図」(25点)

Aは鉱物と岩石について問われた。問1は鉱物をさまざまな視点から分類する問題であった。問3は与えられた環境において安定に存在する鉱物を図から読み取る力が問われた。Bは化石から過去の環境を考える問題であった。問5は複数の貝の化石から地層が堆積した水深を推定する問題であった。Cは「地質図から読み取れることがら」を「二つ選べ」という指定がされた問題であり、地質図から褶曲構造を読み取ることがポイントであった。

第4問「地球における気圧と気温、雲の形成、黒潮」(21点)

Aの問1は気圧の測定実験についての問題であるが、問題文の意味を正確に読み取れれば易しい。Bの問3は凝結核や氷晶核に関する基本的な内容であった。問4は過冷却水滴と氷晶が共存する場合、どちらから水蒸気が生じてどちらが成長するかという重要な知識を問う問題であった。Cの問6は黒潮の蛇行部分の海面の高低分布を問う基本的な問題であった。

第5問「太陽系の惑星、恒星」(19点)

Aは木星と火星の視運動と特徴に関する出題であった。問1と問2はいずれも惑星の視運動について正確な知識が必要な問題であった。問2は問われ方が目新しく、戸惑った受験生がいたかもしれない。BはHR図を使った出題であった。問4はB型の主系列星の進化が問われたのが目新しい。問5は年周視差、見かけの等級、恒星の色の関係からHR図上の位置を考察する問題であり、絶対等級やスペクトル型についての確かな理解が求められた。

過去5年の平均点(大学入試センター公表値)

  • 2023年度 49.85点
  • 2022年度 52.72点
  • 2021年度 46.65点
  • 2020年度 39.51点
  • 2019年度 46.34点