データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2024年度大学入学共通テストの「地理B」の問題分析は次の通り。

― 現代の地理的事象について、確かな知識に裏づけられた思考力が求められた。難易は昨年並 ―

地図や統計表、写真などを含む多様な資料が用いられ、限られた時間のなかでの図表読解力と地理的思考力が問われた。基礎的な知識をもとに判断できる問題も多く、知識と現実の地理的事象を結びつけて定着させている受験生にとっては考察しやすかったであろう。難易は昨年並。

大問数・解答数

大問数5は、昨年から変更なし。解答数は昨年の31個から1個減少し30個になった。第5問が地理Aとの共通問題。

出題形式

すべての設問において地図、統計表、写真など、多様な資料が扱われた。また、昨年同様、複数の情報の組合せも多く出題された。解答形式では、昨年みられた5択の問題は出題されなかった。

出題分野

「自然環境と自然災害」「資源と産業」「都市と生活文化」「環太平洋地域の地誌」「島根県石見地方の浜田市の地域調査」からの出題構成。地誌の大問は昨年同様に1大問であった。

問題量

昨年並。

難易

昨年並。

大問別分析

第1問「世界の自然環境と自然災害」(20点) (20点・標準) 

世界の自然環境と自然災害について出題された。様々な資料が扱われ、取り組みやすい問題と判断に時間を要する問題との差異が大きかった。問5は4か国における洪水災害の発生時期について判断する問題であった。カナダは雪融けにより3~5月に、メキシコはハリケーンの影響から9~11月に発生割合が高くなることから判断できる。国土の位置する場所や、気候の特徴といった知識から考察することが求められた。

第2問「世界と日本の資源と産業の変化」(20点・やや易) 

世界と日本の資源と産業の変化に関して、鉄鋼業を中心とした製造業についての探究の場面設定で展開された。問6は製造業の地域社会への影響について、資源や産業をめぐる新しい具体的取組みとその目的を組み合わせる問題。目的と取組みの関係を結びつける、論理的思考力が問われた。

第3問「都市と生活文化」 (20点・標準) 

都市と生活文化について、様々な資料をもとに展開されたが、受験生になじみのある指標も多く、取り組みやすかったであろう。問1は日本のある大都市圏の1960年代以降の変容について、写真と説明文を組み合わせる問題であった。都市の内部構造についての理解が問われた。問3は都市圏における人口の増加について、先進国とBRICSを比較する問題。図の読み取りとともに、農村からの流入者が就く職業を具体的にイメージすることがポイントであった。全体を通して、基礎的な知識をもとに判断することが求められた。

第4問「環太平洋地域の地誌」(20点・やや難) 

受験生にとってなじみが薄いであろう、環太平洋地域に属する国や地域の特色への理解が求められた。問1は太平洋各地の海底地形の相違が問われた。海嶺と海溝の大まかな分布だけでは正答を導くことができない。プレートの移動に加えてホットスポットの理解も求められたため、自信をもって判断できた受験生は少ないだろう。問5は4か国の貿易額の変化と相手国の特色を題材とした問題。なじみの薄い模式図を読解することと、中国の貿易の変化への理解が求められた。

第5問「島根県浜田市の地域調査」(20点・やや易) 

島根県石見地方の浜田市について、地形図、写真など多様な資料が扱われた。資料を丁寧に読み取り、活用する地理的技能が問われた。問2は商品やサービスによる購買利用先の相違を問う問題。商圏への理解をもとに、中心地機能の大小と商品やサービスの利用頻度の関係から考えることがポイントとなった。見慣れない図を読み取ることに時間を要したと思われるが、問われた知識は標準的であった。問3は施設の立地と小学校区に関する組合せの問題。資料を読み取り、手がかりをみつけることに悩んだ受験生が多かったと思われる。施設の性質と分布の傾向の差異に着目したい。それぞれの小学校区の形状についての空間的理解が問われた。問5は江戸時代の商品流通に関する問題。歴史的見方と地理的見方をあわせて考える必要があり、題意を読み取りながら考察する思考力が求められた。

過去5年の平均点(大学入試センター公表値)

  • 2023年度 60.46点
  • 2022年度 58.99点
  • 2021年度 60.06点
  • 2020年度 66.35点
  • 2019年度 62.03点