データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2024年度大学入学共通テストの「物理」の問題分析は次の通り。
―ペットボトルロケットなど、探究活動についての問題が増加した。昨年よりやや難化 ―
ペットボトルロケットの運動、金属線を用いた弦に交流電流を流したときに生じる弦の固有振動、導体紙上に生じる電場など、探究的な問題が出された。太陽の中心部にある原子核を題材として、原子核1個あたりの運動エネルギーを問う問題は目新しい。設定の把握に時間を要する問題もみられ、昨年よりやや難化。
大問数・解答数
大問数4は、昨年から変更なし。昨年24個であった解答数は22個に減少した。
出題形式
文字式選択問題を中心に出題された。
出題分野
昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
問題量
昨年と比べて減少。昨年28ページであったページ数は23ページになった。
難易
昨年よりやや難化。
大問別分析
第1問「小問集合」(25点)
原子を含む各分野から出題された。問2は、太陽の中心部にあるばらばらの原子核(プラズマ)を単原子分子理想気体とみなし、1個あたりの運動エネルギーの平均値について問う目新しい問題であった。問3は、光が水、ガラス、空気層へと進むときの全反射の条件についての問題で、屈折についての理解度で差がつく問題であった。問5は、原子核反応における質量の減少と核エネルギーの放出、および半減期について問う基本的な問題であった。
第2問「力学」(25点)
ペットボトルロケットを題材にした探究活動についての問題であった。問題に記された誘導に沿って解答すればよいが、与えられた物理量が多く戸惑いやすかったであろう。問2は、噴出した水の質量と圧縮空気がした仕事についての問題で、物理量の次元について注目すると正解が絞り込めた。問4は、運動量保存の関係を表す式を選ぶ問題で、運動量の正負の符号に注意する必要があった。問5は、運動量の変化と力積の関係をロケットについて適用するとよい。
第3問「波動」(25点)
磁石が作る磁場中において、金属線を用いた弦に交流電流を流したときに生じる弦の固有振動に関する探究的な問題であった。問1は、弦を流れる電流が磁場から受ける力の向きと生じた定在波のようすを問う問題であった。イについては、問2の3個の腹をもつ横波の定在波のようすがわかれば考えやすかったであろう。問5は、弦の固有振動数と金属線の直径の積がほぼ一定になっていることに気がつくと、容易に解答できる。
第4問「電磁気」(25点)
等電位線と電場、電流に関する探究活動についての問題であり、理論と実験がバランスよく出題された。問1は二つの点電荷の周りの等電位線の図、問2は等電位線と電気力線に関する知識を問う基本的な問題であった。問3は、導体紙上の等電位線から電場と電流の向きを定性的に考察する問題であった。問4の電位と位置のグラフをもとに電場の大きさを計算する問題から、問5の導体紙の抵抗率を考察する問題へと展開する点は目新しい。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2023年度 63.39点
- 2022年度 60.72点
- 2021年度 62.36点
- 2020年度 60.68点
- 2019年度 56.94点