受賞者インタビュー

【地域民話研究部門(団体)】最優秀賞 

「伊予の国小野谷に残る小町伝承の謎を解く3 ~第二の小町伝承を求めて~」

愛媛県立松山北高等学校  郷土研究部           作品はこちらからご覧いただけます 

 

―受賞した感想を教えてください

大変嬉しく思っております。三年連続で最優秀賞を受賞させていただけるとは思っていなかったため、とても光栄に感じています。

 

―このコンテストに応募しようと思った理由を教えてください

一昨年度、昨年度と松山市小野谷に残る小野小町伝承について研究してきましたが、小野小町伝承の伝承地と宗派の関係、いつ梅元寺に伝承が持ち込まれたのか、また、誰が伝えたのかについて全国規模で再調査する必要があると感じ、同じ題材で研究を継続し、コンテストに応募させていただきました。

 

―調査・研究のきっかけとなった出来事や体験したことを教えてください

一昨年度に部員の一人が持ってきた、松山市立小野小学校の副読本『ふるさと小野』の中に、平安時代、顔にあざができた小野小町が住吉大社の御神託により松山市小野谷の梅元寺に来て、病気平癒を祈願したところ100日目に回復したという伝承を元に、地名が小野になったという伝承が載せられています。この伝承は、戦前は有名でしたが、現在は地元の方々でさえ詳しい内容を知らず、風化して消えようとしていた伝承を再発掘し、調査研究をしていく中でこの伝承の素晴らしさに気付いたため、今年度も昨年度に引き続き、松山市小野谷地区に残る小野小町伝承について調査研究を継続しました。

 

―今回、探究活動をするにあたって、一番重要視したことを教えてください

重要視したところは、「先人が伝えてきた伝承を誠実に分析する」ということです。過去の文献を調べるにあたり、文献ごとに違う記述がされていたり、元号が異なっていたりして真実を見極めることに難航しました。特に、「長慶天皇伝承」では、『芳闕嵐史』について書かれてある二つの文献で元号が異なっていることが発覚し、正しい伝承を見極めることは難しかったです。また、工夫した点は、表やグラフをわかりやすく作ることです。グラフの色を変え、判別がつきやすいようにしたり、二つの文献の年表をまとめたりすることにより、比較しやすいように作り上げました。

 

―探究活動を通して、成長したことや学んだことを教えてください

成長したことは、史料を見比べ史実を判断する力がついたことです。浮嶋神社の神主の方のお話を伺った際、史料は多いものの正確性に欠けるものが多く、史実かそうでないかが分かりにくくなっており、それらの史料と一般的に良質とされる史料とを見極めることに時間を要しました。同時に、史料はすべて正確ではなく、様々な文献を読み比べてからこそ史実が浮き彫りになってくると学ぶこともできました。ある文献では記述があるものの別の文献に記述がない、といったものも多く、どれが真実かを丁寧に史料を見る必要があることを認識しました。いずれも歴史や民間伝承を研究する上では最も重要なことですので、この機会に学び、成長できてよかったと感じます。

 

―今回、探究活動を行って、伝承文化に対する意識に変化はありましたか?

私は日本史が好きですが、伝承文化にはあまり興味はありませんでした。郷土研究部に入部した理由も、伝承文化が好きだから、ではなく日本史に関わりたい、という一心で入部しました。しかし、この部活動に入り、この小野小町伝承の研究、そして地域活性化に携わり、地域に残る伝承が廃れていこうとしている現状を認識しました。実際、私自身私が住む地域の伝承についてですらあまり詳しく知らないことに気づきました。よって、小野地区および松山市に残る伝承をより多くの人に知ってもらい、後世の人たちに継承することこそ私たちがする使命だと強く感じています。

 

―伝承文化を継承していくことについてどのように考えますか? また、伝承文化の魅力は?

伝承文化を継承していくことはとても大切なことだと思います。昨年、部員自らの手で作り上げた小野小町の劇や地域のイベントで行った発表を、地域の方をはじめ老若男女沢山の方々に見聞きしていただきました。その際、「こんな伝承があるとは知らなかった」「もっと地域に目を向けていきたい」と言っていただき、私たちの手でこの伝承が廃れることを防いでいる、伝承伝播に自分が直接かかわっている、と強く感じました。 伝承文化の魅力は、疑問点を見つけ調べるにつれ、その土地の地域性や昔の人々の様子、当時の世情などがだんだんと分かってくることだと思います。伝承は一見何の変哲もないような物語のように感じますが、裏では何かの歴史的事件に絡んでいたり、その土地の人々の様子が事細かに描かれていたりします。歴史の教科書では語られませんが、深く掘り下げると当時の民衆の人々の様子がはっきりと判明することが地域の伝承文化調査の魅力だと感じています。

 

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