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学校活動部門

  優秀賞 
 「幻の「八郎様祭」~知られざる伝承の謎を解く~」
  福岡県立朝倉高等学校 史学部
 
 「伝統芸能継承活動の意義 -「会津坂下の早乙女踊り」継承活動を通して-」
  福島県立会津農林高等学校 早乙女踊り保存クラブ
 
 「小豆島中山農村歌舞伎
  岡山学芸館高等学校 歴史地理探求ゼミ

    ■審査員講評も参考にしよう! 学校活動部門 講評

 

【 優秀賞 】

「幻の「八郎様祭」~知られざる伝承の謎を解く~」

福岡県立朝倉高等学校 史学部

応募の動機

このコンテストは毎年、史学部が活動目標の1つにしているので、顧問の先生からの説明もあって、入部して調査活動を始めた時からこのコンテストへの応募を意識していました。また、私たちが調査している内容は文字で伝えるよりも、映像で伝えた方がより適切であると考え、映像部門がある「学校活動部門」に応募することに決めました。

研究レポート内容紹介・今後の課題

今回の研究調査は福岡県嘉麻市馬見地区のある集落に残る「八郎様祭」という貴重な神事を調査したものです。なぜこの祭りが貴重かということについてはその独自性にあると考えています。1つは「八郎様」というのが平安時代の強弓で知られた猛将である源為朝のことであり、彼を直接的に祀った珍しい神事であるということです。史学部が調べた限りではありますが、源為朝を直接的に対象とした祭りというのは全国的にみて、伊豆大島などごくわずかしか残っていません。もう1つは、これが最大の独自性だと考えているのですが、「八郎様祭」の日程が昔から必ず7月11 日に決まっているという点です。長い伝承のうちに「八郎様祭」の様々な要素(由来や手順など)が消失しているなかで、この日程だけは集落のなかで最も強固に言い伝えられてきた、言わば「掟」みたいなものだったのです。為朝を祀った神事が集落内だけでひっそりと伝承されていた事実にも強く興味を惹かれましたが、それ以上に「7月11 日開催」という強固な伝承に強烈に探求心が刺激されました。集落の人々は「八郎様」が誰を指すのか、そして「なぜ7月11 日でなければいけないのか、この日付に何の意味があるのか」ということについて誰も知りませんでした。そこで史学部はまず「八郎様」というのが確かに源為朝を意味することを明らかにするために、文献調査と周辺の現地調査を行いました。その結果、文献面では「福岡県地理全誌」という明治初期の文献に為朝にまつわる伝承記録を見つけ、そして現地調査では為朝に関連したいくつもの伝承遺跡や興味深い建築物の存在を明らかにしました。7月11 日の謎については正直苦戦しました。文献記録はない。口伝として由来が残っているわけでもない。調査のなかで私たちは為朝にとっておそらく人生最大のターニングポイントとも言うべき1156 年勃発の「保元の乱」に注目しました。天皇の皇位継承問題などを含んだ争乱だった「保元の乱」を調べてみるとこの争いが具体的に起こったのが7月11 日だったのです。私たちは「これだっ!」と直感しました。正直これ以外に考えられませんでした。この「八郎様祭」が7月11 日に行われることになったのは、間違いなくこの「保元の乱」が由来であると結論づけました。「八郎様祭」に関する明確な記録としての文書が残っていないので直接的な裏付けがとれないのは残念ですが間違いないと思います。このような祭り(神事)は全国的に見てもこの地に伝わる「八郎様祭」だけだと思います。その意味でこの「八郎様祭」は高い独自性を有した貴重で希少な祭りであり、今後とも伝承され続けるべき神事であると考えています。今後の課題としては、この「八郎様祭」を伝承していくためにどうその存在を知ってもらうかということになると思います。現時点では研究発表会の開催を予定しています。また、「八郎様祭」をテーマにした絵本制作を構想中です。簡単にはいかないと思いますがいろいろな可能性を考えながらこの貴重な神事が今後とも長く伝承されるように活動を進めていきたいと考えています。

為朝を祀る石祠を調査する史学部
住民への聞き取り調査をする史学部

受賞者コメント

 はじめての本格的なコンテストへの応募で、今は喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。このコンテストでの受賞を目標に今年入部してから顧問の先生と一緒に1年生全体(3人)で頑張ってきたので本当にうれしい気持ちでいっぱいです。
 史学部に入部した際、このコンテストを毎年目標に頑張っているという話があったので、自然とこのコンテストに応募できるように入部してからの調査活動を頑張ってきました。
現地へ行って聞き取り調査や現地調査をする際に、時間が限られたなかでの調査活動なので、どういう動きで調査計画を立てれば一番効率がよいかということや、何をどう質問するのが一番大事なのかなど、質問の中身を吟味した点が工夫と言えるかもしれません。楽しかったことは調査自体が楽しかったです。現地の住民の方も親切な方ばかりでとても感謝しています。学校空間を離れての調査活動は、学校とは種類が異なる楽しさがあるように感じます。まだ1つの調査活動しかしていないのですが、学んだことはいろいろあります。例えば文献の調べ方や、文献調査の重要性などは今回の調査活動を通して感じました。また、地域の方への聞き取り調査実践などは言葉ではうまく表現できませんが大事な経験となり、自分自身が内面的に成長したように思います。1年生3人で頑張ったので協働性や協調性も養われたと思います。
 現時点ではまだ具体的には決めていませんが、私自身は理系に進むことを希望しています。まずは目の前のことに全力で取り組んでいき、それを繰り返していく中で自ずと自分が進むべき道が見えてくるのではないかと考えています。
 今後の課題としては、今回よりもより優れた調査を実施していきたいということと、動画編集の技術レベルを向上させたいという点になります。次回もまた、興味深いテーマを設定して、史学部で取り組んでいきたいと思います。後輩は現在いませんので、来年度に新入部員がたくさん入部することを期待しています。

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【 優秀賞 】

「伝統芸能継承活動の意義
-「会津坂下の早乙女踊り」継承活動を通して-」

福島県立会津農林高等学校 早乙女踊り保存クラブ

応募の動機

会津坂下町の伝統芸能「早乙女踊り」を継承して14 年目となる。クラブ活動の歴史と共に多くの方々の「心」のバトンがつながれてきた。しかし、コロナ禍による活動制限等の理由により、クラブ員間で活動に対する意欲に差が出てきてしまった。そこでレポート作成を通して活動の歴史や多くの方々の思いを再確認し、クラブ員の心を一つにしたいと考え応募した。

研究レポート内容紹介・今後の課題

伝統芸能継承活動の意義は、「人々の心のつながりを守る」ところにあると考える。これは、私たち福島県立会津農林高等学校「早乙女踊り保存クラブ」が、地域の宝である、「会津坂下の早乙女踊り」の継承活動を長年行ってきて肌で感じてきた答えだ。
 本校「早乙女踊り保存クラブ」は、会津坂下町の伝統芸能「早乙女踊り」を女子生徒のみで守り、14 年間継承してきた。しかし、「少子化による入学者数の減少」によるクラブ員の減少、「コロナ禍による活動制限」に起因するクラブ員の活動に対するモチベーションの低下により、今後の活動の継続が危惧されている。令和5年度には他の農業高校との学校統合も控えており、今、改めて「伝統芸能継承活動の意義」を再確認し、「地域の伝統芸能を安定的に継承していく方法」を考えることが、「伝統芸能継承の当事者」である私たちに求められている。また、東日本大震災以降、被災地、特に福島県は多くの伝統芸能が消失、中断されている。「心の復興」を果たす役割を担う伝統芸能を復活させ、継承している一つの事例として多くの方々に私たちの活動を知っていただきたいと考えた。
 「伝統芸能継承活動の意義」を確認し、「伝統芸能を安定的に継承していく方法」を考える手順を以下のようにした。
⑴ クラブの14年間の活動を総括した。
 活動を総括することで、「人々は伝統芸能に何を求めるのか」「活動にどのような意義・価値があるのか」を分析することができる。またその分析結果は、活動の制限に苦悩する私たちに継承活動の意義を再認識させ、活動への情熱を奮い立たせてくれるものにもなると考えた。
⑵ 「第4章 扇舞復活」までの経緯を検証した。
 令和元年に、戦後70 年以上踊られていなかった「扇舞」を私たちの手で復活させた。高齢者への「聞き書き」を通して復活させた「扇舞」にはどのような価値があるのかを分析した。
⑶ OG を含めたクラブ員へのアンケートを実施した。
 「地域の伝統芸能を安定的に継承していく方法」についてアンケートを取って話し合い、具体的な方法をまとめた。
 今後の課題は、「クラブ員を増やすこと」と「クラブ員の活動に対するモチベーションを上げること」である。OG を含めたクラブ員で考えた具体的な方策を実行に移し、地域の大切な伝統芸能を大切に継承していきたい。

幻の第4 章「扇舞」練習風景(90 歳のおばあちゃんからご指導いただく)
令和3年7月7日 御田植祭(感染症対策をして奉納)

受賞者コメント

 初めての応募ということもあり、顧問の先生から受賞の一報を聞いた時は大変嬉しく思いました。このような素晴らしい賞を受賞でき、大変光栄です。この論文は部員全員が間接もしくは直接関わり協力して完成したものです。そして、地域の方々、忙しい中でも労を惜しまず協力してくださったクラブOGの方々、先生方の協力があってこそ完成したものです。クラブの軌跡、地域との繋がり、たくさんの方々に支えられてきたことを知り、何より歴代クラブ員全員の早乙女踊りに対する熱い想いを知る良い機会となりました。後輩達には会津坂下の早乙女踊りの伝統と共に、私達の思いがたくさん詰まっているこの論文を継承してもらいたいと思います。この論文作成をとおして気持ちを1つにできたことを思い出してもらいたいと考えています。クラブ活動の歩みを振り返り、より良い活動にしていってほしいと思います。
 7月時点の私達のクラブの活動で3年生と1・2年生の間に活動に対する気持ちの違いがあり、このままでは歴代の先輩方や私達が思いを込めて繋いできた伝統継承のバトンが中途半端なまま繋がれてしまうのではないか、最悪の場合、継承活動が終了するのではないか、という危機感を持ち、論文作成をとおして、全員の気持ちを1つにしようと考え、応募を決意しました。色々な形でたくさんの人に協力していただき、その中で私達でも知らなかったことが多くあり、改めて早乙女踊りの軌跡を知ることができたことがとても面白かったです。作成にあたって、早乙女踊りを知らない人でも知ってもらえるように、クラブ員以外の第三者にも論文をチェックしてもらい、分かりやすさを意識して作成しました。作成をとおして、私は改めて地域の方々との繋がりを肌で感じました。さまざまな人が早乙女踊りに関わり、繋いできたからこそ今の私達があるのだと理解すると同時に、今まで私達でも知らなかった歴史があり、どこか人の温かみを知れた気がします。活動の歩みについてを調べ、まとめてくれた後輩達も早乙女踊りの伝統を継承することの大切さと重さを学べたと思います。この経験を忘れることなく、次の世代に繋げていってほしいです。
 私は卒業後、短大に進学し、栄養について学ぶ予定です。将来、病院で栄養士として働きたいと思っています。
 全国的にも伝統芸能継承者の数が減少していることが今後の課題だと思っています。私自身、同級生や後輩に伝統芸能に興味があると思う人が少ないと感じ、難しい問題であるからこそ早乙女踊りの良さを発信していき、継承者の数を増やしていってほしいです。大変なことすら楽しみに変えていくことで、心の底から継承活動が楽しくなります。楽しむことを忘れず、前を向いて進めばどんなことも解決できます。論文作成をしたこと、そこから各々学んだことを忘れずに継承活動を頑張っていってください。

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【 優秀賞 】

「小豆島中山農村歌舞伎」

岡山学芸館高等学校 歴史地理探求ゼミ

応募の動機

私たち歴史地理探求ゼミは、課題研究という授業の一環で、自分たちの興味関心に基づき、中山農村歌舞伎の調査研究を始めました。研究活動の一つのゴールとして、先生に勧めていただき、中山農村歌舞伎の現状をより多くの方に伝えられると感じた私たちは、コンテストへの応募を決めました。

研究レポート内容紹介

小豆島中山農村歌舞伎は、江戸時代に上方から小豆島の中山地区に伝わり、今なお地域住民の手によって受け継がれている伝統的な農村歌舞伎です。小豆島という島嶼部で他地域との交流が乏しい中どのようにして伝統が継承されてきたのか、地域の人々とどのように関わりを持つのかという点に興味を持ち、中山農村歌舞伎について研究をすることを決めました。
 私たちはまず中山農村歌舞伎についての知識を得るため、岡山県立図書館に通い文献調査を行いました。その結果、中山農村歌舞伎には様々な特徴があることがわかりました。全国を見ても中山でしか行われていない「デコ芝居」や、「油鉢」と呼ばれる火を用いた照明器具などが例として挙げられます。さらに、中山の舞台は江戸時代から現存する木造建築であり、国指定重要有形民俗文化財に指定されています。
 そして、中山農村歌舞伎をより深く知るために、中山農村歌舞伎保存会の方々の協力のもとで現地調査を行いました。実際に現地の方にお話を伺うと、中山農村歌舞伎の現状が見えてきました。その中でも特に、舞台建築を守るために「油鉢」を使わなくなったことや、演技のお手本に歌舞伎座のDVD を用いていることが、中山農村歌舞伎の抱える最大の課題であると私たちは感じました。
 歴史的建造物としての価値や、農村歌舞伎の継続を重視するあまりに、地域の人々が脈々と受け継いできた「油鉢」を用いた伝統的な演出や、中山農村歌舞伎にしか見ることのできない芝居が後回しにされており、「『歴史的建造物』として扱われる以前から人々が大切にしてきたもの」や、「地域に暮らしてきた人から人へ、教え伝えることそのものの中に見える伝統や独自性」を失いつつある現状は、「継承」がうまく行われているとは到底言い難いのではないか。そして、以前は娯楽として、人々の生活の中に息づく文化として嗜まれていたのに対し、現在では続けていくことにその第一義を奪われ、伝統としての側面やその独自性を失いつつあるのではないかと感じました。
 これより私たちは、中山農村歌舞伎を継承するということは、その娯楽性や演出、そしてそれを受け継ぐ中にみられる人々の息づかい、地域の人々の営みとしての歌舞伎そのものを繋ぐことこそが、中山農村歌舞伎を「継承」するということではないだろうかという結論に至りました。

今後の課題

今後は、中山農村歌舞伎をどのようにして継承していくかが課題になってくると思います。また、コロナ禍の影響を受け二年連続で開催が中止されており、さらに継承が危うくなっていることについても、私たちに何かできることがないかを模索していきたいと考えています。

図書館で小豆島の歴史について学んでいる様子
中山を実際に訪れ、史料を見学させていただいた時の様子
 

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