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地域文化研究部門(個人)

 最優秀賞・折口信夫賞 
 関西弁は広まっているのか~東京と関西の高校生から考える~
  東京・東京大学教育学部附属中等教育学校 3年 湯浅 綾
 
 優秀賞 
 鳥居の強度の秘密とは~熊本地震と鳥居の被害・再建~
  熊本・熊本学園大学付属高等学校 3年 藤本 彩佳 
 
 佳作 
 小谷と下細谷におけるささら獅子舞の比較研究
  埼玉・筑波大学附属坂戸高等学校 2年 関口 莉音
 
 秩父神社系統の神楽の独自性に迫る ー寶登山神楽を事例にー
  埼玉県立熊谷西高等学校 3年 手嶋 友希
 
 「川の速さと流れの特徴から河川の伝統工法「聖牛」について考える
  東京・玉川学園高等部 2年 持田 貴大

     ■審査員講評も参考にしよう!【 地域文化研究部門 講評 】

 

【 最優秀賞・折口信夫賞 】

「関西弁は広まっているのか~東京と関西の高校生から考える~」

東京・東京大学教育学部附属中等教育学校 3年 湯浅 綾

応募の動機

先生に紹介していただいたのがきっかけだ。私の学校では卒業研究として各自好きなテーマを約1年半かけてまとめる。その中で私は、小学2年生から5年生まで兵庫県神戸市に住んでいた時、最も驚いたのが方言の違いだった。この経験から、東京の人が考える「関西弁」という存在がどのようなものか気になり、この研究を始めるきっかけとなった。

研究レポート内容紹介・今後の課題

研究方法
 
渡辺・唐沢(2013)「共通語と大阪方言に対する顕在的・潜在的態度の検討」から分かった2つを中心として、関西弁は広まっているのかを東京と関西の高校生の視点から研究していく。
 1つ目の「メディアからの影響」は、メディアの中で関西弁の歌詞の楽曲と関西弁を話す芸能人に絞って調査し、実際に関西弁の広がり方の影響度合いを明らかにするため、東京と近畿地方に住む高校生を対象にアンケートを実施する。
 2つ目の「コミュニケーションの道具として使われていること」では、高校生を対象としているためSNS も1つのコミュニケーション方法と考え、文献調査をして実際にどのような言葉が使われているか調べる。その結果をもとに東京と近畿地方に住む高校生を対象にクイズに答えてもらい関西弁への理解度を図り、アンケートも実施する。以上の2つの視点から得られた情報の関連性をもとにして、関西弁の広がり、人気について考察する。

考察
 
この研究を通して、東京に関西弁が広まってきていると結論付けた。なぜなら、アンケートから多くの東京の高校生が関西弁を知っていて興味を持っていることが分かったからだ。方言は標準語を話す人にとって憧れがあり、使えるようになりたいと思う人がいた。また、近畿地方の高校生は東京の人と関わりがあり、関西弁に触れる機会を多く持っていた。さらにマスメディアを通して関西弁の歌詞や芸能人の影響を受けて関西弁の知名度が上がっていた。特にバラエティー番組やお笑いのネタによって関西弁の使い方を知り、コミュニケーションの場で利用されていた。文献調査からは、「方言コスプレ」や「ネオ関西弁」など様々な視点から、標準語と関西弁のつながりを理解することができ、関西弁が若者に注目されていることも分かった。
 また、関西弁は今後若者を中心にますます東京に浸透していくとも結論付けた。だが、関西弁が標準語に近づいて魅力が薄れていくことも懸念される。そうなれば、よりなじみやすい形に変わるため、東京に広がりやすくなると考えられるが、それで「関西弁は広まっている」と言えるのだろうか。よく考えてみる必要がある。

受賞者コメント

 素直にとても嬉しいです。最優秀賞と折口信夫賞の2つに選んでいただけると思っていなかったので驚きました。1年半かけてやってきたものを大学の先生方に評価していただけて光栄です。この研究の指導をしてくださった先生や協力してくれた高校生に感謝しています。
 先生が教えてくださったのが応募のきっかけです。学校での卒業論文としてこの研究を始めて、私のテーマとコンテストのコンセプトが合っていたので応募しました。
 作品の創作にあたっては、私が神戸に住んでいた経験があることを生かして、東京側の目線から関西弁について考えることを意識しました。研究を進めているうちに、メディアでの関西弁を話す方々の活躍を見て、とても嬉しくなりました。私の学校は卒業研究として16000字以上の論文を書き上げる必要があったので、文章力や論文の構成を学ぶことができました。また、常に疑問点を考えることで様々な視点から物事を見ることができるようになりました。関西弁を通して地域の良さを改めて実感したため、地域のコミュニケーションについて学んでいきたいです。そしてそれを地域の活性化につなげていきたいと考えています。また、興味があるものには、何でも挑戦することが大切だと思いました。興味がわくという経験を無駄にせずに、納得いくまでやり切ることで自分への自信につながると思います。

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【 優秀賞 】

「鳥居の強度の秘密とは~熊本地震と鳥居の被害・再建~」

熊本・熊本学園大学付属高等学校 3年 藤本 彩佳

応募の動機

総合学習の時間に深学化プログラムという探求活動で鳥居の研究を行い、グループの代表として学年の前で研究を発表しました。それきり探求活動には手をつけていませんでしたが、今回のコンテストのお知らせが学年主任の元へ届いた際に「これは藤本にぴったりだ」と紹介してもらい、偶然のお知らせと先生のご厚意で今回の応募を決めました。

研究レポート内容紹介・今後の課題

私は高校2年生の時に総合学習の授業で、「鳥居の強度の秘密とは〜熊本地震と鳥居の被害・再建〜」というテーマで個人探求活動を行ないました。その動機は、原子爆弾投下後の街の様子と東日本大震災後の街の様子を映した2枚の写真をインターネットで見つけたことです。そこには無残に破壊された建物で溢れた中で、どちらの場所にも鳥居だけが壊れずに立っていました。私はこの写真を見て、なぜ鳥居だけが被災を逃れたのかという疑問を持ち、鳥居の構造が未来の建築物の耐震技術に用いることができるのではないかと考えました。
 まず、熊本地震の震度と鳥居の被害状況を調査し、形状や構造との因果関係を探ることにしました。新型コロナウイルスの影響ですべての神社に直接訪れることができないため、インターネットで調べた画像と照らし合わせながら電話でお話を伺いました。宮司さんや神主さんだけではなく、その地域の役所、教育委員会、自治体、住民の方、総代の方、など多くの人の手厚いご協力のおかげで研究を進めることができました。
 県内の全地域、計75 本の鳥居を、震度、鳥居の形の種類、材質(1つの神社に複数の鳥居がある場合のみ)、土台の有無と種類、壊れ方、再建について、という項目で調査し、種類ごとに分け分析を行いました。調べたうちのほとんどが明神鳥居と台輪鳥居という2種類だということがわかりました。そして震度4以上の地域でそれら2種類の鳥居の被害を比べると、明神鳥居の方が被害が少ないことが判明しました。また、同じ境内にある鳥居でも、その材質や少しの場所の違いで被害の内容が異なる結果も出ました。複数の鳥居がある神社で調べた、鳥居の材質からは、石造よりも木造の方が強いのではないかということが考えられました。多くの神社関係者の方々とお話をする中で、鳥居についてとても詳しい方がいらっしゃり、「鳥居は壊れないように作られていない」という衝撃の事実や鳥居に隠された宮大工さん達の技術や工夫について詳しく教えてもらいました。
 今回の研究を通して、インターネットで調べるだけではわからないようなことを沢山知ることができ、もっと鳥居について知りたいと思いました。今回分かった、明神鳥居の被害が少ないという結果からその被害の有無のキーとなる鳥居の重要な構造は何であるか突き止め、現代建築にその工夫を用いる方法を考えたいと思います。この活動を続けて、日本の伝統的な宮大工の建築技術が海外にもいつか「昔の日本人が考えていた素晴らしい耐震技術」として広がっていくことを望んでいます。

工学部志望者の探究グループ内での発表の様子
実際に鳥居を見るために訪れた神社で撮った一枚

受賞者コメント

 突然担当の先生から入賞の報告を受けた時はとても驚きました。とても時間と労力のかかる研究だったため、今回評価していただけたことを非常に嬉しく思います。また、お世話になっている先生方や、いつもは冷静な担任の先生が、今回の結果を聞いて喜びを爆発させているところを見て、やっと研究の成果が出て期待に応えることができたかもしれない、と満足しています。
 私の学校では深学化プログラムのいう探求活動をグループや個人で行うプログラムがあります。今回、研究を進めた深学化プログラム3では、大学の志望学部に分かれ、私は工学部の中での発表と投票で選ばれ、学年の前で発表しました。その際、最優秀賞を取ることができず、このまま研究の成果を発表する機会は終わる予定でしたが、私の研究を最初から最後まで気に入ってくださっていた学年主任の家入先生とよくアドバイスをくださった山住先生の勧めで応募することにしました。家入先生が、「これは絶対に藤本のためのコンテストだ」と思われたらしく、まだ発表の場がある! と、とても嬉しかったのを覚えています。
 創作にあたっては、ひたすら電話をして記録するという作業の繰り返しでしたが、神社によっては宮司さんが常駐されていない場所もあり、神社だけでなく、その地域の市役所や、役場、教育委員会、図書館にも調査をお願いしました。そこから地域の人へ電話を繋いでもらい、地域の自治会長さんにまで電話をし、ようやく管理人の方まで漕ぎ着けるなどということもあり、とても大変でしたが、沢山の人の人脈と手厚い協力に助けられました。ここまで労力のいる研究を地道に続けられたのも私の神社愛と建築愛ゆえだと自負しております。全ての作業に細かくこだわりとても楽しい研究でした。
 創作活動を通して、とても小さな成長ではありますが、研究期間内に133件の電話をした事で電話での話し方を習得しました。特に鳥居という立体物について互いの顔や身振りが見えない状態で説明するのはとても難しかったです。相手に伝わりやすい声と口調、専門的なワードを入れすぎないように説明することと、最後にしっかりお礼と感謝を伝えることを意識してこなすことができました。また、私が尋ねたこと以外にも鳥居の建築について詳しい宮司さんがいらっしゃり、インターネットで調べただけではわからないような鳥居の秘密を沢山教えていただき、さらにその鳥居の不思議さに惹かれ、興味を持つきっかけになりました。
 鳥居以外にも伝統的な建築に興味があり、建築の道へ進むことを志しています。将来は一級建築士になり、鳥居の研究を他の視点から続けることと、日本の伝統的な建築やクリエイティビティを世界へ発信していきたいです。今後はこの研究からわかった鳥居の形の種類による地震の被害の違いの結果をもとに、何がそれを強くしているのか調べ、建築にこの耐震を活かせないかということを調べていきたいです。後輩の皆さんへ。研究は単にすごい発見をするために行うものだという堅い印象を一度取っ払って欲しいです。自分が好きなことをひたすら詳しく調べていくと、徐々に「これは何でだろう」という疑問が湧いてきます。私はこの研究以外にも高校生の間に3度の研究を行いました。どれもテーマはバラバラですが趣味である、サッカー観戦や神社巡りなどの延長線上に疑問や課題を見つけました。そして、テーマを決める上で大切なのは誰のためにその研究を行うのかということです。これは私の学校での探求活動の際に毎度先生から言われることです。私得な内容よりも誰かのための研究をすることは研究を続けるモチベーションにもなります。課題をクリアすることは簡単ではないこともあるかと思いますが、楽しく続けられるテーマを見つけて是非その先に素晴らしい発見をして欲しいです。

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【 佳作 】

「小谷と下細谷におけるささら獅子舞の比較研究」

埼玉・筑波大学附属坂戸高等学校 2年 関口 莉音

応募の動機

私の住む埼玉県吉見町は、歴史的価値のある遺跡等はあるものの知名度のかなり低い町で、私はそのことをとても残念に思っていました。しかし学校での地域創生や地域活性化に関する授業や活動を通して、まずは自分自身がこの町について知らなければならないと思うようになりました。そんな中授業でこのコンテストを知り、自分の理解度を深める目的も兼ねて、身近な神社と獅子舞について研究しようと決めました。

研究レポート内容紹介・今後の課題

1.下細谷天満宮について
 
下細谷天満宮は、私が幼いころから親しんできた近所の神社です。毎年10 月には豊作を祝う祭りがあり、そこではささら獅子舞が行われます。ささら獅子舞とは3匹獅子舞とも呼ばれる、東日本を中心に広い地域で継承されている伝統文化です。私も実際に祭りにおいて、ささら奏者や棒使いという役割を経験したことがあります。

2.小谷と下細谷の比較研究
 
獅子舞はかつて吉見町内に複数存在していましたが、現在では下細谷地区のものだけとなってしまいました。それにより町内で比較をするのが難しいため、町外のものについて調べてみたところ、鴻巣市の小谷という地区でもささら獅子舞が行われているということがわかりました。インターネット上で実際の動画を見つけたため確認したところ、下細谷のものと共通点があるように感じられ興味が湧いたため、下細谷と小谷をフィールドに比較研究を行うことに決めました。
  鴻巣市は吉見町の隣に面しているため、地理的には遠くありません。しかし私は小谷の神社について何も知らなかったため、まずはインターネットで情報を集めるところから始めました。市役所のHP をはじめ、複数のサイトを比較しながら神社に関する基本情報を集めたのち、祭りの役職、囃子、衣装、ささら奏者、棒使い、獅子の順で項目ごとに比較を行いました。
  次に、インターネットでの情報収集を通して生まれた、新たな疑問を解決するために、実際に鴻巣市役所や神社に赴いたり、聞き取り調査をしたりしました。市役所にある資料では疑問に対する直接的な答えを得ることは出来なかったものの、小谷文化財保存会の会長様の連絡先を教えて頂けたため、実際に会長様に後日お電話でインタビューを行うことができました。もちろん、小谷の情報収集と並列して、下細谷の獅子舞関係者にも聞き取り調査をしました。複数の方法を用いることで、小谷と下細谷のどちらにも情報量や情報の質に偏りが出ないように意識して調査することができました。

3.今後の課題
 
時間の都合上、獅子舞の具体的な演目についてや、囃子の分析、比較ができなかった為、それらを研究することが今後の課題です。また、今回は下細谷と小谷という限られた狭い範囲であったので、より広い地域での比較も視野に入れたいと考えています。

祭り当日の下細谷天満宮の境内
下細谷の祭りの様子

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【 佳作 】

「秩父神社系統の神楽の独自性に迫る ー寶登山神楽を事例にー」

埼玉県立熊谷西高等学校 3年 手嶋 友希

応募の動機

私は中学生の時に、埼玉県秩父郡長瀞町の寶登山神楽団に入団して、神楽の継承や保存に力を入れている。学校の総合的な探究の時間で、神楽について調査研究していたところ、先生からの紹介で「地域の伝承文化に学ぶ」コンテストを知ったため、この場で多くの人に調査研究の成果を伝え、伝統文化の魅力を知ってもらいたいと考えて応募した。

研究レポート内容紹介・今後の課題

一般的に神楽とは、神を安置する神座という場所に神を迎えて、その前で行われる招魂・鎮魂の神事芸能のことである。
今回の調査の対象とした寶登山神楽は、系譜をたどると埼玉県秩父市の秩父神社神楽に行き着く。
 秩父神社神楽は、一般の神楽と同じ黙劇であるが、その中に演劇的な表現の多いことが特長で、関東一円に分布する江戸神楽と異なる構成と芸統をもつ神楽であるとされている。しかし、どのような点が江戸神楽と異なるのか詳しく分からなかったため、秩父神社系統の神楽の独自性とは何か、独自の発展に関与している背景は何か疑問に思った。そのため、秩父神社系統の寶登山神楽を中心に独自の芸風について調べることにした。
 調査方法としては、文献や資料調査、インタビュー、現地調査を行った。
 第1節では、神楽の歴史、変遷についてまとめた。
 第2節では、神楽に対する神事と芸能の捉え方の違いについて、寶登山神楽の演目の中で神楽師が観客を巻き込んで行う場面に独自性があると考え、関東の里神楽の源流と言われている鷲宮催馬楽神楽と比較した。これらの結果から、鷲宮催馬楽神楽を含む関東一円に分布する神楽は、厳粛さがある神事としての神楽をするのに対して、秩父神社系統の神楽は娯楽性のある芸能としての神楽であるとまとめた。
 第3節では、なぜ秩父神社系統の神楽は、娯楽性のある芸能としての神楽をするのか、観客に対する催しや神楽師の考え方、神楽殿の造りに着目し、調査した。これらの結果から、やはり秩父神社系統の神楽は娯楽性の強い神楽であり、鷲宮催馬楽神楽は厳粛のある神事としての考えが強い神楽が行われていると結論付けた。
 第4節では、秩父神社系統の神楽に娯楽性がみられるのは、心理的な距離感が近かったのではないかと考え、秩父地域の神への信仰の特色に着目し、調査したことをまとめた。長瀞町では、林業が盛んだったことが演目の内容に影響している部分があったり、秩父神社神楽で見られる養蚕に関する演目は、養蚕は秩父地域の人々にとって重要だったことを表す舞であると述べた。
 第5節では、これまで調査して思ったことや考察、今まで神楽師を経験しての考えを提言した。
 今後の課題としては、秩父神社系統の神楽だけでなく、秩父地方に伝わる他の系統の神楽はどうなのか。そして、隣県の群馬県の神楽では、地域の発展が神楽に関係しているのか、他の県でも同様な関係性が見られるのか、調べていき、地域ごとに見られる神楽の特色について理解を深めていきたいと思った。また、神楽師として神楽の舞をしたり楽器を演奏する技術を上げていきながらも、研究を続けて未来に伝承していきたいと思った。

神楽をしている筆者
寶登山神楽の演目の中で観客と関わる神楽師

 

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【 佳作 】

「川の速さと流れの特徴から河川の伝統工法「聖牛」について考える」

東京・玉川学園高等部 2年 持田 貴大

応募の動機

川の流れについて研究しているのは、幼い頃から川の流れに興味があるからである。中学生の夏休みには、多摩川の地形について調べ、奥多摩の小河内ダムや水についての歴史などを知った。そして昨年、「川の流れの速さの特徴」として研究を始めた。昨年の夏休みには、神奈川県内の相模川や酒匂川の特徴を調べた。また、特徴を調べるだけでなく、洪水や氾濫について何か役に立つことができないかと考えた。

研究レポート内容紹介・今後の課題

まず、相模川と酒匂川ではペットボトルとストップウォッチ、メジャーを使用した。まず、メジャーで3mを計測し、空のペットボトルを川に流した。ペットボトルが流れる時間をストップウォッチで測った。距離(3m)÷流木とペットボトルが流れた時間でその川の速さを求めた。また、洪水や氾濫について何か役に立つことができないかと考えた。2年前に長野県の千曲川中流域で氾濫し、昨年7月には九州地方で球磨川が氾濫した。そこで、昨年の12 月に、山梨県の富士川の上流である釜無川の信玄堤を見学したとき、「聖牛」という伝統工法を知った。今年の夏休みには、聖牛の模型を作り、川の流れについて実験を行った。この実験での目標として、自然や生物にも適した川の流れを再現してみようと考え、釜無川で見学した「聖牛」の模型を作った。「シュロ縄」でかごを編み、「麻ひも」で木と木を結び組み立てた。模型でも環境に配慮した。河川にあるコンクリートのブロックは、実験ではレンガを用いた。レンガと「聖牛」ではどちらを置いた時の速さが遅く、緩やかになるのかを実験した。この実験で「聖牛」は流れる速さは遅くなり、流れが緩やかになることが分かった。しかし、「聖牛」は固定しないと大雨で洪水が起こったときに流されてしまう可能性があるので、「聖牛」は流れが急な場所に設置するのではなく、川魚が住みかを作る場所や比較的流れが緩やかな地形などに向いているのではないかと考えた。また、設置する場所が人々の目に留まることによって、防災意識も高まるのではないかと考えた。「聖牛」の材質から考えると丸太やわら、植物のつるなどを用いることが出来れば、川に生息する生物にとっても良いと考える。例えばアユなどの川魚の産卵で卵を産み付けたり、下流から遡上するときなどの休憩にも対応出来るような地形にあった方が環境にも良いと考える。「聖牛」の柱となる丸太は伐採されて用途が無くなったものを使用したり、植物のつるなどは、伸び過ぎてしまったものなどを再利用すれば環境にも良いと考える。僕は、自然と触れ合ったり、歴史や地形を生かして人々の防災意識を高めることが重要だと考えている。伝統工法「聖牛」は、現代の人々の防災意識を高める手段の1つと考えられる。これからも人々に知ってもらうために、研究を続けていきたい。

山梨県信玄堤の「大聖牛」
自作の「聖牛」の模型を使った実験風景

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