受賞者インタビュー

【地域民話研究部門(団体)】最優秀賞 

栃木県立矢板東高等学校 リベラルアーツ同好会

 

 

―コンテストに応募しようと思った理由を教えてください

本コンテストには、昨年も応募しており地域民話研究部門(団体)で優秀賞を受賞させていただきました。その研究のなかで、地域に伝わる民話(伝説)について新たな疑問点が生まれたため、今回の研究をはじめました。本研究では、民話の題材の変化や移動について着目し、民話の広がり方について研究を進めました。研究のなかで、地域に伝わる民話について考察し、関係する神社などを訪れました。そうした活動の結果、研究としてまとめることができたので、本コンテストに応募しました。

―調査・研究のきっかけとなった出来事や体験したことを教えてください

私たちの住んでいる栃木県北部地域は、全国的にも有名な那須与一の出身地であり、地域では那須与一にまつわるお祭りなどが数多く行われています。また、九尾の狐という有名な伝説が伝わっている地域でもあり、九尾の狐にまつわるたくさんの民話が語り継がれています。そのため、私たちは幼いころから那須与一や九尾の狐の存在を知っており、それらは非常に身近な存在でした。ある研究の中で、地域の神社仏閣を調べる機会があり、その際に那須与一や九尾の狐と関わりのある神社が近くに存在することを知りました。そこで、その神社と民話との関係を深く知りたいと思ったのが今回の研究の動機となりました。

―今回、探究活動をするにあたって、一番重要視したことを教えてください

研究を進めるうえで、フィールドワークを積極的に行い、実際に現地に訪れてみることを心掛けました。今年は新型コロナウイルスの影響もあり、対人でのインタビュー活動が制限されるなど、活動が思うようにできないことがありました。そのような中で、文献資料やインターネットによる調査だけでなく、限られた条件の中で、地域ならではの活動をすることができて非常に良かったと思います。また研究するにあたって、机上の学習だけでなく、実際に現地で感じたことをもとにして進めるように意識しました。

 

 

―伝承文化を継承していくことについてどのように考えますか?伝承文化の魅力とは?

伝承文化を継承していくことは、過去と今をつなぐ大切なことだと思います。しかし、ただ継承するだけでなく、その伝承文化にはどのような歴史や目的があるのかをしっかりと理解した上で、継承していく必要があります。地域の伝承文化を学ぶことにより、自分の知らなかったことを知れたり、伝承文化と意外なものとのつながりを発見したりすることができます。このような発見の楽しさが伝承文化の魅力の一つでもあり、未来へ継承していかなければいけない理由になると思います。

―探究活動を通して、成長したことや学んだことを教えてください

探究活動を通して、私はより広い視点で物事を見ることができるようになりました。実際に研究を進める中で、一つの課題について考察する際に、ある一方面からの視点だけで物事を捉えてしまうと、偏った考え方になってしまいました。複数の視点から物事を捉え、それら一つ一つを検証していくことで、的確に物事を捉えれるようになったと思います。探究活動を通して物事には様々な側面があることを学べたので、これからも自分の都合の良いようにだけ物事を捉えることがないようにしたいです。

―以前から伝承文化に興味がありましたか?

いいえ。

ですが、私はもともと歴史が好きだったので、伝承文化について調べれば調べるほど教科書に記載のある歴史がより身近な歴史に感じることができ、興味をもつことができました。

―「伝承文化」と聞いて、難しさを感じますか?

いきなり「伝承文化」という言葉を聞くと、難しさを感じるのかもしれません。「伝承文化」とはどのようなものなのかを、すぐにイメージするのは難しいと思います。しかし、幼いころから親しんできた民話や民謡、または地域の伝統行事などに目を向けてみると「伝承文化」というものは自分たちのすぐ近くにあるということに気付けると思います。これからも、自分の身近にある「伝承文化」をどのようにして守り、伝えていけばよいのかを考えていきたいです。

―今回、探究活動を行ってみて意識に変化はありましたか?

私は小学生の頃から歴史という漠然としたものに興味を持っていました。その後、高校に入学し、このような探究活動を行える環境に恵まれ、自分の好きな歴史について多角的な視点から学ぶ機会を得ることができました。今回のような探究活動を通して、一言に歴史と言っても分野によって様々な側面を持っていて、それぞれの分野がそれぞれの楽しさや難しさを持っていることを知りました。今回は、伝承文化という観点から研究を進めましたが、この活動により私の中の歴史という言葉の意味が大きく広がりました。

 

指導教諭インタビュー

栃木県立矢板東高等学校  坂本 慶 先生

―なぜ本コンテストに取り組んだか教えてください

本コンテストには、同好会の活動の一環として取り組みました。前回のコンテストに参加した際に大学の先生方に頂いたアドバイスや、他校の素晴らしい取り組み内容を知ったことで、生徒達がもっと研究をしたいと思ってくれたことが今回応募した一番のきっかけとなりました。新型コロナウイルスの影響もあり、学校に登校できない時期もありましたが、生徒達がそれぞれ連絡を取り合って、調べる手段や役割を相談しながら研究を前に進めていったように感じています。

―ご指導はいつ、どのようにされましたか?

2020年の1月には、どのようなテーマでコンテストに臨むかを生徒達と検討していました。検討するにあたっては市史をもう一度読むことから始めました。また前回の研究過程で生まれた疑問が研究テーマになり得るかも議論しました。最初からテーマがしっかりきまったうえで取り組めるのが理想かもしれませんが、生徒達には多様な視点をもって欲しいと思っていますので、色々なことを調べながら研究をまとめるような取り組みをしています。

―具体的にどのような指導・アドバイスをされていますか?

校内で出来る活動には限界がありますので、文献調査以外にも、博物館や資料館に赴き有識者から助言を頂くことやフィールドワークを実施することで学びを深められるように指導しています。また、生徒達が立てた仮説が論理的であるか、研究結果が正しいかどうかなどを第三者的な視点から判断することを行っていますが、私自身が伝承文化に精通しているわけではないので、指導するというよりは生徒とともに学びながら研究を楽しむということを意識しています。活動の中でのふとした会話から、思いがけない発想や結論が浮かぶこともありました。

―探究活動は高校生にどんな影響・効果を与えると思いますか?

主体的に物事を考える力が身に付いたり、他者と協働して物事を成し遂げることでコミュニケーション力が身に付くなどの効果があると感じます。また、昨年度の部員の中には、考古学的な内容に関して化学実験を用いて研究をするなど、教科の枠や文系・理系のような枠にもとらわれない自由な発想で取り組むような傾向も見られました。このような経験から、探究活動を通して生徒達はより自由に、試行錯誤しながら学問を楽しむことができるようになると実感しています。

 

併せて聞いてみた!

―2022年から「総合的な探究の時間」が実施されますが、貴校ではどのような学習内容を想定していますか

まだまだ手探りの状態ではありますが、1年次には市内のフィールドワークを通して気がついたことをもとに課題を設定し、まとめたものをポスターセッションすることを考えています。また2年次以降は、自分の興味のあることについて研究テーマを設定して取り組む予定です。

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