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学校活動部門

  優秀賞 
 「幻のRib-arch ~年代特定と名称発見~
  福岡県立朝倉高等学校 史学部
 
 「わたしたちの蔵の街!先人が伝える不変の伝統工芸品を次世代へ
  ~幸作箒地が創る新たなビジネスプロジェクト~」」
  栃木県立栃木農業高等学校 農業環境部地域デザイン班
 
 「「石鎚黒茶」伝統文化の未来
  愛媛県立西条農業高等学校 石鎚黒茶SEL プロジェクトチーム

    ■審査員講評も参考にしよう!【 学校活動部門 講評 】

 

【 優秀賞 】

「幻のRib-arch ~年代特定と名称発見~」

福岡県立朝倉高等学校 史学部

応募の動機

史学部では2019年6月より、福岡県嘉麻市の山中に使われなくなったまま存在する、地元でもほとんど知られていないあるアーチ型石橋の調査研究を始めました。調査を進めてみると、その独特の構造に高い希少性と魅力を感じ、この石橋のすばらしさを伝えるには映像作品として制作するのが一番有効だと考え、学校活動部門へ応募することを決めました。

研究レポート内容紹介

今回応募した「幻のRib-arch ~年代特定と名称発見~」は、福岡県嘉麻市の山中深くに眠る、名もなく、これまでその存在を忘れ去られていたあるアーチ型石橋の調査研究が骨子となっています。このアーチ型石橋が架かっている場所は嘉麻市桑野の掛橋地区で、標高200m 前後の山村であると同時に九州を代表する河川の1つである遠賀川の源流近くであり、川の流れも速く、高低差もある場所です。このような山中に架橋されているので現地に行くまでが大変で、道は整備されておらず、調査のたびに雑木林をかき分け、土崖のような箇所を進んでいくという困難さがありました。
 このアーチ型石橋の最大の特徴はその構造にあります。それは「リブアーチ型」と呼ばれる構造で、この構造は国内では大変希少で、史学部が調べた限りでは国内に数基しか存在しません。しかもこの石橋は、昭和初期には地元の人々が「農道」として往来していたことが聞き取り調査よりわかっており、「装飾性が高い」他のリブアーチ型石橋とは異なり「実用性を有する」石橋だったのです。その意味で、人々の生活を支えてきた歴史を持
つ、「実用性」に富んだ嘉麻市のアーチ型石橋は、特に貴重なリブアーチ型石橋だと言えるのです。
 史学部ではこの石橋について、聞き取り調査だけではなく文献調査にも取り組みました。参考になる文献が少ない中、明治初期に制作された『福岡県地理全誌』は大変重要な資料となりました。この中の嘉麻地域の項を分析した結果、そこに記述があった1つの石橋の説明が、史学部が調査していた石橋と一致することが明らかになったのです。これにより、この石橋は少なくとも明治7年には既に架橋されていたことが明らかになり、少なくとも建設から146年以上は経過していることがわかりました。史学部では約150年前後は経過していると見ており、恐らく江戸時代後期の建設・架橋ではないかと推測しています。また、文献調査からはこの石橋の名称を特定することもできました。『福岡県地理全誌』にわずかに記された記述から、この石橋の名称が「梯(かけはし)」であることを解読したのです。ただ、史学部ではすでに同じ読み(かけはし)で、付近に「掛橋」や「掛橋橋」と呼ばれるコンクリート橋が建設されている状況を踏まえて、この地域で最も古い、本家本元の石橋であるという観点から、この石橋を「梯」ではなく「梯本橋(かけはしほんばし)」という名称にすることを提案しています。
 史学部ではこの石橋の恒久的保存に向けた文化財指定を目指し、現在、地元地域との連携を進めている段階です。実際に地元区長の方々と史学部が連名で保存に向けた要望書を市長に提出したり、地元地域で説明会を開催するなど着実に動きを進めています。

今後の課題

今後はこの石橋自体についてのさらなる調査を進めるとともに、石橋保存に向けた地元との連携をどう発展させていくかということが課題になってくると思います。高校の部活動としてできることは限られるかもしれませんが、全力で頑張っていきたいと思います。そして今後とも地域に息づく伝承・伝統文化の調査研究を積極的に進めていきたいと思います。

幻のリブアーチ型石橋
石橋調査の様子

受賞者コメント

受賞を顧問の先生から聞いたときは、やはり大変うれしかったです。毎年、史学部はこのコンテストを1つの目標に頑張っているので、ここ2年間は応募しても受賞することができませんでしたが、今年、3年ぶりに受賞することができたので、私個人としてもうれしいですが、史学部としてもとてもうれしい受賞になったと思います。テーマとなったアーチ型石橋の調査研究は、新たな局面を迎えつつもあるので、今後ともしっかりと顧問の先生の指導やアドバイスを受けながら、頑張っていきたいと思います。
もともとは、1つ上の先輩方が卒業して、新たなテーマで調査研究に取り組むことになり、顧問の先生からいくつか調査テーマの候補を示された際に、一番気になったのが、このアーチ型石橋の調査研究だったのです。それでこれを調査していくことに決めて、具体的に2019年6月から調査を始めました。少しずつ成果が出てくる中で、これを映像作品にしてコンテストに応募することを決めました。勉強になったことは、本当にいろいろあるのですが、やはり「地域とのつながり」がとても大事である、ということを強く感じました。現地調査をしていくなかで、よく地域の方々に助けられたり、支えられたりすることが多くありました。やはり自分たちだけではどうにもならないことがあります。地域とのつながりのなかで「事実」を調べていくことの大事さを感じました。あとは地道に文献調査をすることの大事さです。
今後は石橋の石材について調査を進めるとともに、地元の方との連携を進めながら石橋保存に向けての動きを進めていく予定です。後輩へのアドバイスとしては、地域にもっと目を向けてみよう!自分の知らなかったたくさんの魅力があるよ!と伝えたいです。

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【 優秀賞 】

「わたしたちの蔵の街!先人が伝える不変の伝統工芸品
を次世代へ ~幸作箒地が創る新たなビジネスプロジェクト~」

栃木県立栃木農業高等学校 農業環境部地域デザイン班

応募の動機

蔵の街栃木市のお悩み「耕作放棄地増加と伝統工芸品後継者不足」を一挙に解決したい。耕作放棄地は幸作箒地になり、生産力を向上することができるのか。美と機能性を備えた「座敷箒」を継承・発展させることができるのか。この二つの難題解決のため、生産者・職人・ヒトを繋ぐ地元栃木市の農産業発展に貢献し、多くの方々に栃木市の伝統文化を発信していこうと考え、応募しました。

研究レポート内容紹介

私たちの住む栃木県には、県の伝統工芸品に指定されている栃木市の「都賀の座敷箒」や鹿沼市の「鹿沼箒」という手作り箒があり、かつては全国有数の箒の産地でした。また、箒の原材料であるホウキモロコシは戦後に生産量のピークを迎えましたが、座敷箒の需要は徐々に衰退していき、現在では、生活スタイルの変化に伴い徐々に箒を見かけることが少なくなってきました。さらに、高齢化が進み、現在の県内の箒職人の数はわずか2名、ホウキモロコシを生産する農家もわずか1件となり、後継者不足が深刻化しています。
 そこで、私たち地元の高校生で何かできることはないかと考え、生産者・職人・ヒトが一体となり、耕作放棄地の有効活用と伝統工芸品後継者不足の難題解決に取り組んでいます。
 一つに、箒職人や箒の原料を作る生産者との連携を密にしていきます。特に、①箒職人直伝の技法を学ぶこと、②より多くの方に発信できるよう実演できる機会を提供すること、③座敷箒専用の作業台を製作すること、④生産農家と原料栽培に関する情報交換や共同作業を継続的し、栽培マニュアルを作成することに取り組んでいます。
 二つに、官学民を通して、地域に溢れている耕作放棄地の有効利用化を提案していきます。特に、①市と連携して耕作放棄地の情報共有をすること、②商工会議所等と連携してイベントの宣伝やニーズに合わせた商品開発をすること、③マーケティング論についての学習を深め、販売促進に努める、新たなビジネスモデルを構築すること、④地元小中学校
でホウキモロコシの栽培から箒作りまでを体験し農業と伝統文化に触れる学習を支援すること、⑤生産者増収を目的として、地元大学と協力し、イネ科植物特有のクリーニングクロップとしてホウキモロコシ利用価値についての検証に取り組んでいます。
 三つに、活動内容をより多くの方に栃木市特有の農産業を発信できるよう、研究をまとめイベントや各種発表会に出場します。

今後の課題

このコロナ渦により、イベントや活動自粛により、ワークショップ等の開催が困難になっています。また、活動時には十分な感染症対策をしなければなりません。今後は、「都賀の座敷箒」の高い機能性やデザイン性、箒作りの楽しさをYouTube やSNS を通して、全国に発信していく必要があると思います。

 

 

 

受賞者コメント

 この度は優秀賞という評価をしていただき、大変うれしく光栄に思っています。伝統工芸である「都賀の座敷箒」への熱い想いを伝えることができ、本当に感動しています。ありがとうございました。
 私たちが住む栃木県では、県の伝統工芸品に指定されている「都賀の座敷箒」という古来からの手作り箒がありましたが、げんざいでは、箒職人の高齢化や箒の原材料であるホウキモロコシを栽培している生産者が減少し、箒の需要が減ってきてしまいました。そんな中、私たち高校生が箒を作成し、原料であるホウキモロコシを栽培することで箒の魅力を知ってもらい、伝統文化を次世代へ継承していきたいと考えています。ワークショップを通して人へ伝える事、教えることの難しさを感じました。しかし、一つ一つ取り組むことで、人と人との温かさや完成した時の達成感を得ることができました。また、モノづくりの楽しさを知ることができ、貴重な経験ができました。
 かつては、座敷箒の産地だった伝統工芸品を、まずは栃木市の多くの方々に知ってもらい、座敷箒の機能性や魅力を全国、世界へと発信できるよう、頑張ってほしいと思います。

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【 優秀賞 】

「石鎚黒茶」伝統文化の未来

愛媛県立西条農業高等学校 石鎚黒茶SEL プロジェクトチーム

応募の動機

私たちの活動は、先輩たちの活動を引き継いだ継続研究活動です。研究活動を始めた先輩が、過去に応募しており、先生に紹介していただきました。昨年先輩方の活動を引き継ぎ、さまざまな活動を行ってきました。その一つに石鎚黒茶の認知度向上を目的とした普及活動です。その一環としてコンテストに応募しました。

研究レポート内容紹介・今後の課題

私たちの住む西条市は西日本最高峰の石鎚山があり、そこで栽培、製造されていた石鎚黒茶という伝統のお茶があります。その昔、弘法大師が中国から伝えたとされており、お遍路さんに振舞われるお茶でした。

糸状菌による好気発酵と乳酸菌による嫌気発酵という世界でも珍しい二段発酵茶です。日本で初めて食文化として、無形民俗文化財に選ばれました。しかしながら、この伝統は生産者の減少、中山間部からの人口流出、製造労力の問題などにより、無くなってしまう危機にあります。私たちは、学科を超えてのチームを結成し、専門性を生かした研究活動に取り組みました。自分たちでお茶の栽培、製造団体から技術を学びました。実際に製造を行うと、製造工程の労力だけでなく標高による菌繁殖の問題や製造施設の問題、平成30年7月の西日本豪雨被害と大変なことも多くありましたが、自分たちの手で石鎚黒茶を製造することができました。イベントでの販売や全国への発送も行っています。そして、お茶を使った加工品やスイーツを製造し、商品化も行いました。また、栽培キットの製作やワークショップなどの普及活動を展開しています。
 私たちの取組が評価された今年は、製造団体からの栽培技術指導を兼ねた交流会の依頼や石鎚黒茶振興協議会の試飲会にも参加させていただき、スイーツの試食会や研究活動報告を実施しました。

石鎚黒茶が全国放送で特集されるなど、認知度は高まっていますが、まだまだ普及には至っていません。今後は、もともとのお茶のルーツである四国八十八か所でのお遍路さんへの提供を目指し、寺院との調整中です。また、製造団体の収支を参考に経営面からの栽培製造の分析、食品としての健康機能性の証明などを行っていきたいです。先輩方の活動を引き継ぎ始まった私たちの活動は、後輩たちが引き継ぎ、今後も伝統的に続いてほしいと思います。地域の伝統文化である石鎚黒茶を少しでも普及し、新たな時代へと伝承していくためこれからも頑張っていきます。

石鎚黒茶製造の様子
製造した黒茶イベント販売や全国へ発送している
振興協議会への活動報告

受賞者コメント

 先生から受賞の話を聞き、驚きました。このような評価をいただき、うれしく思います。今年はコロナ禍で活動があまりできませんでしたが、私たちの活動は、伝統文化を伝承し、地域を活性化させることが目標なので、この受賞で少しは地域に貢献できたと思います。
 私たちの活動は、先輩たちの活動を引き継ぎ、始めた研究活動です。それぞれ学科を超えてのチームを結成し、専門性を生かした研究活動に取り組みました。地域の伝統文化である黒茶を少しでも普及できればと思い、コンテストに応募しました。実際にお茶の製造を行ってみて、石鎚黒茶は他のお茶と比べると製造に手間がかかり、菌の繁殖にも苦労しました。研究活動を行う中で、生産団体や農家のみなさんとかかわり、思いを知ることができ、人間的にも成長することができたと思います。
 まだまだ地域のためにできることはたくさんあります。どんどん地域に出て行って、地域の人と関わりを持ってください。また文章のまとめ方など苦労したので、しっかり研究内容を整理するよう心掛けてください。これからの更なる活躍に期待しています。

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