普段、身近すぎて当たり前のような風景や生活様式、民話などに着目して調査・研究を行い『探究活動』の一環としても取り組める本コンテスト。どのように取り組んでいるのかを第16回「地域の伝承文化に学ぶ」コンテストの受賞者と指導教諭に聞いてみました。

【募集内容】
●地域文化研究部門(個人・団体)
…祭り・伝統行事・郷土料理・方言などの調査研究
●地域民話研究部門(個人・団体)
…昔話・伝説などの民話の調査研究
●学校活動部門
…学校やクラス単位での生徒による調査研究や活動実績に関する報告と、
 担当教員による活動を通じて生徒の「学び」がどのように向上したか
 についてのレポートを合わせたもの
 最優秀賞を受賞した2作品について聞いてみました!
 
  1ページ目  【地域文化研究部門(個人)】最優秀賞・折口信夫賞   
          鹿児島県立屋久島高等学校  寺田 雅 さん
                  指導教諭      嶽釜 将 先生
  
  2ページ目  【地域民話研究部門(団体)】最優秀賞
          栃木県立矢板東高等学校   リベラルアーツ同好会
                        坂本 慶 先生

受賞者インタビュー

【地域文化研究部門(個人)】最優秀賞・折口信夫賞 

鹿児島県立屋久島高等学校  寺田 雅 さん

 
 

 

―伝承文化に興味を持ったきっかけを具体的に教えてください

音楽に親しんでいくうちに、日本独自の民謡にも、興味を持ち始めたことです。

―このコンテストに応募しようと思った理由を教えてください

屋久島の人口は高齢者の割合が高く、それに比べて若者は進学や就職のため島を離れることが多いために、地元にはほとんど残りません。私たち高校生を含む島の子どもたちが民謡に身近に触れる機会は少なく、このままでは屋久島の「文化」も失われてしまうため、島の人々に屋久島民謡『まつばんだ』を身近に感じて貰うための方法を研究しました。その調査結果をより多くの人に伝え、伝統継承につなげたいと考え、応募しました。

―調査・研究のきっかけとなった出来事や体験したことを教えてください

私は音楽が好きで、今まではクラシックなどの西洋音楽に親しむことが多かったですが、しだいに日本独自の民謡などの邦楽にも興味を持ち始めました。そんな時に、あるテレビ番組のオープニングで流れた奄美大島の民謡を聞いて、私の中で心がぎゅっと掴まれるような歌い手の方の故郷への想いを感じました。そこで、私の住んでいる屋久島にもこのような民謡がないかと調べていくうちに『まつばんだ』について研究したいと思うようになりました。

 

 

―今回、探究活動をするにあたって、一番重要視したことを教えてください

一番は、自然な形で町民の生活に寄り添っていけ、このコロナ禍でも実施できる「町内放送」を使った民謡の伝承方法を考えたことです。

―伝承文化を継承していくことについてどのように考えますか? また、伝承文化の魅力は?

伝承文化を継承していくことはその地域とってとても重要な事だと思います。「伝承できる」「伝承できない」に関わらず、『伝承していこう』という気持ちが何よりも大事なことだと私はこの研究を通して感じることができました。

伝承文化の魅力は、祖父母から父母へ、父母から子へ、地域の人たちから子供たちへと、世代を超えてさまざまな人たちと交流をしたり、触れ合うことのできることがとても素敵なところだと思います。

―探究活動を通して、成長したことや学んだことを教えてください

研究活動を通して、学んだことは2つあります。

一つ目はプレゼンテーション能力を鍛えることができたことです。研究を発表できる場をたくさん用意していただいて、場数を踏むことが出来たので、良かったと思います。

二つ目は、さまざまな視点を持つことです。研究を進めていく中で、アンケートやインタビューなどを行っていくと、自分とは全く違う意見や考えの方がいて驚くことが多かったです。「そういう意見もあるんだ」とさまざまな視点から考えることを見つけたり勉強できて、自分の世界を広げることができました。

 

指導教諭インタビュー

鹿児島県立屋久島高等学校 嶽釜 将 先生

―なぜ本コンテストに取り組んだか教えてください

本校には、普通科環境コースが設置されており、主に屋久島の自然・地形・生命・伝統・文化・産業等を学び研究しています。寺田雅さんもこちらに所属し、屋久島民謡『まつばんだ』について研究を始めました。ですからその授業の一環として取り組みました。また、前年度の同コンテストにおいて先輩である中島渚さんが受賞しており、本人にもコンテストへの応募についてアドバイスしたら興味を示したので、一緒に取り組んでいきました。

―ご指導はいつ、どのようにされましたか?

環境コースの指導は理科・地歴公民科・家庭科の先生方を中心に行います。生徒の研究テーマを見ながら担当を決め、主に授業を中心に本人の研究テーマに合わせ、私自身も学びながら取り組みました。指導をしていくうちに屋久島の自然・伝統・文化・産業など理解が深まり、教師も勉強になります。また、文化祭等での中間発表や最終発表会などで研究の成果を発表する場も設定しており、プレゼンテーション能力も身に着けられるよう工夫しています。

―具体的にどのような指導・アドバイスをされていますか?

インタビュー調査やアンケート調査では、関わりのある方々の様々な考えを理解しながら、1つの事項に対して多面的な意見や見方があることを考えさせました。この多面性が将来の人間関係の構築やものの見方に反映されると思うので、生徒に意識させました。また、自分のテーマの研究をするに至った動機や研究を進めていく中で生まれてきた本人の思いなどを大切にしながら指導することを心がけています。

―探究活動は高校生にどんな影響・効果を与えると思いますか?

自分が決めたテーマを探究することで、物事の理解を深めることができると考えています。また、多面的に物事を見る力もついてくると考えます。自分のテーマについての一連の探究活動をとおして、完成させたときの達成感や充実感の効果も現れ、生涯に渡っての探究心の高揚が期待されます。

 

併せて聞いてみた!

―2022年から「総合的な探究の時間」が実施されますが、貴校ではどのような学習内容を想定していますか

本校普通科では、「総合的な探究の時間」を『黒潮キャンパス』という名前で行っており、既に3年経ちました。また、情報ビジネス科では課題研究という科目が設定され、商業分野における研究(探究)活動を行っています。生徒全員に研究テーマ発表、中間発表、最終発表の機会が与えられ、学校全体でプレゼンテーション活動が行われています。評価においてもルーブリック評価を採用し、自他の評価を見ていきながら自分の研究をチェックする機会も設けています。

【応募者必見!】受賞作品を読んでみよう
  地域文化研究部門   地域文化研究部門   学校活動部門
 こちらも必見!
 本コンテスト審査員を務める小川 直之先生(國學院大學教授)インタビュー
 
 探究活動で役立つ!ダウンロードして活用しよう「探究活動攻略ガイド」
  課題決定~レポート作成までの手順を紹介。
   個人はもちろん、授業で取り組んでいただく際の教材としてもご活用ください。