【目次(TOP)】【最優秀賞】【優秀賞】【佳作】【入選】
優秀賞 「あたし、17歳」 西寺 芙美加(さいたま市立大宮国際中等教育学校2年生)
いつもの電車 最後尾 端っこの席 わたしだけ
最寄りまで4駅
教科書ひらいて頭の中で読み上げる
ソクラテス
柔らかい光が顔に当たって外を見た
空はオレンジと水色の混じった青春のような色
スマホをかざして空を見た
この瞬間だけ主人公になったみたい
最寄りまであと3駅
さっきの続きを読み直す
ソクラテスは、
コツコツと鳴った音につられて前を見た
たまに会うあの人だった とっても素敵なあの人
目があって慌てて教科書を見た
ちょっとだけ少女漫画のヒロインになったみたい
最寄りまであと2駅
全然頭にはいってこない
そくらてす
またコツコツと鳴った音につられて顔をあげた
ここで降りるあの人 あたしを睨みつけた薬指の指輪
空は濃いオレンジでなんだか終わりのような色
終わり 終わり 終わり
寂しいような恋しいような 知りたいような知りたくないような
最寄りまであと1駅
口だけ動かして
そくら、てす
ソクラテスも 将来も 学校も 日常も 私自身も
全部知らないし知り合えないところに行きたい
でも臆病なあたしはいつもそれを越えられない
もうすぐ最寄りだ
鞄に手をかけ顔を上げた
ドアが閉まった
空は優しい青 肯定するような青 少しにじんだ青
降りようとした私を引き留めたきれいな青
これからどこまで行くのか 何がしたいのか あたしは知らない
でもこの空とならどこへでも行ける、 気がした
受賞者コメント
この度は優秀賞にご選出いただき、ありがとうございます。賞をいただけるとは思ってもいなかったため、驚きと嬉しさが混ざっています。何よりも好きなことで賞をいただけたこと、認めていただけたことがとても嬉しいです。これからも好きなことを表現していきたいです。
以前から創作活動に興味があり、コンテストに応募してみたいと思っていました。全国高校生創作コンテストは高校生を対象にしており、コンテストの第一歩として応募しやすかったため、このコンテストを選びました。通学時や帰宅時に電車に乗っていると、このまま最寄駅を乗り過ごして、知らないところまで行ってみたくなります。今まで、それを実行できたことはありませんが、壁を破って踏み出せた新しい世界はどのようなものなのか、何が待っているのかという未知への期待を込めた作品にしました。
この作品には、自己肯定感、自己否定感、優越感、承認欲求、劣等感、将来への不安、焦り、不満、期待など、日頃から抱く、ありとあらゆる感情を詰め込みました。形容し難く、繊細な感情を大切にしたいという思いも込めました。工夫したことは、最寄駅に近づくにつれて濁っていく感情と、未知の世界に踏み出した後の澄みきった感情の対比を、空の様子で表したことです。苦労したことは、言語化しにくい感情をどのように表現するかです。独りよがりにならないように、多くの人が想像しやすい表現を考えるのが難しかったです。
楽しかったことは、全てです。創作活動にもともと興味があり、初めての今回は何もかもが新鮮で楽しかったです。一つの感情を表現するのにも、たくさんの表現方法があるので、シチュエーションによって方法を選ぶとより繊細に綺麗に伝わると思いました。具体的な方法については学んでいませんが、空などの風景や感情の描写が繊細かつポップな作品が好きなため、そのことを心がけて創作しました。
人にはそれぞれ、その人だけの素敵なアイデンティティがあるので、「好き」「やりたい」という気持ちを大切に、まずは書きたいことを書き出してください!
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優秀賞 「プールルーム」 佐藤 柚花(愛知県・同朋高等学校3年生)
きづいたら、ここにいた
鏡のように静かな水面
あおいタイルが見せるつめたさ
ひかりの線が揺れながら踊る
壁に映る影は何も語らない(なにかはなしてよ)
久しぶりにお外に行こうとしただけなのに(わたしは引きこもりなんです)
ここは隠れた場所、心の奥底
いつもきこえる苦手なそとの喧騒は届かない
ただみずの音が低く響く
心拍と呼吸が波紋となり広がっていく
プールの縁に立つとき
醜いわたしの姿が映り込み
深淵を覗く瞳に気づく
水底の暗闇が優しく手招く(こっちにぃおいでぇって)
泳ぐことを忘れたわたしのからだ
ぷかぷか浮かぶ感覚に身を任せ
重力を離れた自由の中で
わたしのいま、過去、みらいの記憶が泡となり消える(くるしいばかりなのでこれでよい)
ここでは時間が溶け
一瞬とえいえんが混ざり合う
沈むことも昇ることもない
ただ流れるだけの無音の空間
この世に存在しない空間
ほかになにもなくてもうつくしい空間
プールルームは心の鏡のへや
心の中のふかみをうつしてる
水面に広がる波紋のように
思考はたくさん巡り、そうしてもどる
このみずが語ることは何もない
ぷかぷかぷかぷかと浮かんで、みずに映るわたし
ふわふわと心の中に問いかける
ちんもくの中で見つめる自己 (わたし)
答えは深みに、まだ潜んでいるのだろうか
水面に映るわたしを見つめてるわたしは思うのかもしれない
まるで忘れ去られた屋敷の主、生きているのに死んでいる人間みたい、と
けれども、わたしは軽蔑を込めて言い放つだろう
それは死者よりかはよっぽど魅力的で素敵ではないかって
受賞者コメント
この度は優秀賞にご選出いただき、誠にありがとうございます。まさか自分の作品が選ばれるとは思わず、恐れ多いながらも、心から嬉しく思っています。こういったコンテストでの受賞は初めてで、正直、夢でも見ているのではないかと思ってしまうほどです。過去の優秀賞作品を拝見すると、どれも素晴らしい詩ばかりで、その一つ一つに心を打たれた記憶があります。そんな素晴らしい作品たちと同じ賞をいただけるとは、本当に光栄の至りです。私の作品が少しでも皆様の心に何かを残すことができたのであれば、こんなに幸せなことはありません。
今回の作品は、私自身の心の中にある静寂や孤独、そして自己との対話をテーマにしています。創作する中で最も苦労したのは、心の深い部分をどのように言葉で表現するかでした。目に見えない感情を詩として形にするには、何度も書き直し、言葉の選び方や表現方法に試行錯誤を重ねました。それでも、詩を完成させる過程は非常に楽しいものでした。言葉を紡ぎながら、自分自身を深く見つめ直すことができたからです。また、普段の生活ではなかなか気づけない心の動きや感覚に触れ、それを詩に落とし込むことで、新しい発見をすることもできました。この作品を通じて、自分の内面と向き合う大切さを改めて実感しました。今回の受賞を励みに、これからもさらに深い表現を追求し、自分らしい詩を創作していきたいと思います。
この詩は徹夜続きのある日の深夜に布団の中でふと浮かんだ情景から生まれました。普段の生活の中で、忙しさや喧騒に押され、自分の心の声に耳を傾けることができていないと感じる瞬間が多くありました。そんなとき、私は心の奥底にある“静けさ”のような場所をイメージしてみようと思ったのです。最初に思い浮かんだのは、水面が鏡のように静かなプールの風景でした。冷たい青いタイルと揺れる光の線、そしてその場所に立つ自分。そこには日常の雑音や時間の流れが一切なく、ただ静寂だけが満ちているように感じられました。この空間は、私にとって心の中の「隠れ場所」であり、日々のストレスや不安をそっと置いておけるような、特別な場所でした。
詩を書く中で、自分の中の深い思いや記憶が水面に波紋のように広がっていくのを感じました。それは、自分自身と向き合う怖さもありましたが、同時にその深みの中に安らぎや希望のようなものも見つけることができた瞬間でした。この詩は、自分の内面を静かに見つめ直す過程と、その中で得られる発見を表現したものです。日常に疲れたとき、誰もが心の中に「隠れ場所」を持つことで、自分自身をリセットし、新たな一歩を踏み出せるのではないかと思います。
書くにあたって、最も工夫したのは、心の中の静寂や深みをどう表現するかでした。具体的な言葉で描きながらも、読み手が自由にイメージを膨らませられるよう、抽象的な表現やリズムにこだわりました。苦労したのは、自分の感情を正確に言葉にすることです。心の奥底にある複雑な思いを、伝わりやすく表現するために何度も推敲を重ねました。それでも完成したときは、ようやく自分の気持ちが形になったと感じられ、達成感がありました。
一方で、創作の過程そのものはとても楽しいものでした。普段見過ごしている自分の感覚や心の動きを丁寧にすくい上げ、それを言葉で表現することで、自分自身をより深く知ることができたからです。この経験は私にとって大きな学びとなり、これからも表現を楽しみながら挑戦していきたいと思います。この詩を書く中で、私は自分自身と深く向き合う時間を持つことの大切さに気づきました。最初は、自分の心の中を言葉で表現することに戸惑いもありました。どんな言葉が自分の感情や思考を正確に伝えられるのか、何度も考え直し、推敲を重ねるうちに、自分の中の本当の気持ちを見つけられるようになりました。
一番大きな成長は、自分の心の声に正直になる勇気を持てたことです。これまでは、自分の弱さや不安を隠そうとしていた部分もありましたが、詩を書く過程でそれを受け入れ、それも一つの自分だと思えるようになりました。また、普段見過ごしていたような、日常の中にあるささいな感覚や風景にも目を向けられるようになりました。さらに、言葉で思いを形にすることの難しさと喜びを同時に感じました。自分だけの空間をイメージし、それを他の人にも伝わる形にする作業は、とても挑戦的でしたが、その分、完成したときの達成感は何にも代えがたいものでした。
この詩を通して「自分を知る」という新しい一歩を踏み出すことができました。そして、創作は単に表現するだけでなく、自分自身を成長させてくれる力を持っていると実感しました。これからも、もっと自分らしい表現を探求していきたいと思っています。創作活動の魅力はいくらでもあると思いますが、強いて言うならば自分の今の気持ちや感情、精神状態を文章や絵で表現できる事です。創作活動はいわば日記みたいなものです。その時の気持ちを留めておくには何らかの作品として残さないといけないと思い込んでいます。昔の自分を思い出させるタイムカプセルのようなものでもあります。
日常のルーティーンとして、自分の気持ちや思った事を文章などにする事を心掛けています。デジタルでもアナログでも書けるものなら何でも良いです。字が綺麗でも汚くても構いません、自分が読めればいいので。それと、自分のこの時の気持ちを言葉にするならばどんな表現がいいだろうかと考えてから感情などを描写するような感じで書いています。
良き睡眠が良き作品を作る種となると思います。それとやりたい!と思った時にやって、今は無理だなと少しでも感じたらSNSやインターネットにある作品を見るのでなく名の知れた作品を読んだりしてから、自分と向き合い続けるのがおすすめです。散歩とかする感じでやり始めるのが良いと思います。ふと思った言葉を忘れないでほしいです。その思った一瞬を大切にしてほしいです。皆さんもぜひ創作活動の世界を楽しんでください。