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優秀賞 
 「セレモニーのあの子」  鹿島 あかり(愛知・中京大学附属中京高等学校2年)
 「ぼんやりと」  岩田 一心(千葉・市川高等学校3年)

 

優秀賞 「セレモニーのあの子」 鹿島 あかり(愛知・中京大学附属中京高等学校2年)

ぱりっと開けた障子から
爽やかなあの子がすうっとはいって
私の頬をふわりとひと撫でした
かと思ったら
つぎはくすくす笑いながら
茶せんをくらくらさせてみたり
茶しゃくをきゅるきゅるさせてみたり
飛しゃくをちょんちょんしてみたり
案外 いたずらっこみたいな面もあるらしい
あ!スカートぺらぺらするの
ちょっとはいいけど ほどほどにしてね
あと
先生の髪に
やけに優しくちょっかい出すの
私たちまでくすくすしちゃうから
それもほどほどにね
(でもそれをするユーモアはすき)

ひょこひょこ歩く白い先生
聞きまちがってどっかん!
な発言でばくだんが落ちる
優しいのと厳かなのを味わって
ほんとうにきらきらしたすっきりとうめいなお喋り

ぜんぶ ぜんぶすき
だけど
極めつけはやっぱり
あの子のお陰ですうっと香る
緑の六畳

受賞者コメント

まさか私が書いた詩を優秀賞に選んでいただけるなんて、びっくりしました。自分の好きな空間と雰囲気が伝わったようでとても嬉しいです。ありがとうございます。
現代文の授業で、せっかくの機会だから自分の好きなことを詩にしようと思い、そのとき浮かんだのが茶道です。私は茶道部に所属していて、和菓子や自分の点てたお茶を、友達とおしゃべりしながら飲む時の穏やかで楽しい時間がお気に入りです。特に、開け放した窓から入ってくる風が、作法室を畳の香りで満たしてくれる時が大好きで、この詩を読む人全員に、何にも追われていない和やかな時間を感じてもらいたいと思ったのがきっかけです。
穏やかな、和やかな、楽しい気持ちを表現するのにオノマトペを一番熟考して書きました。音として読み上げた時にも、柔らかい雰囲気が出るよう母音を意識しました。詩の題名も、ティーセレモニーからとっています。また、顧問の男性の先生の雰囲気とその和やかな性格をユーモラスに表現するのにも力を入れたので、くすっと笑ってもらえると嬉しいです。
創作活動を通しては、自分が感じていることをそのまま書き表すことの難しさが身にしみて分かりました。それと同時に、本を読む、ということがどれだけ大切かというのも分かりました。自分の表したい感情をそっくりそのまま文字として表そうと思った時に、自分以外の作家さんだったり詩人さんだったりする人がどのように気持ちを文字で伝えているのかを知っておくだけで、自分が表現する番になった時の助けになると思います。
今現在、私は文学部への大学進学を希望しています。大好きな国語についてもっと学びを深めたいと思っています。そして、将来は国語の教師になって国語のおもしろさを伝えることが私の夢です。
詩を書くことは、その題材にした何かを新しく、普段とは違った視点で見つめ直すことだと思います。私は、このコンクールの存在を授業で知り、初めて詩を書いたことで茶道への自分の気持ちを深く考え、自分のことを以前よりも知る事ができました。後輩の子たちにも、詩だけに限らず、俳句でも短歌でも、何かを文字にすることによる自分の再発見とそのちょっとした驚きを体験してみてほしいです!

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優秀賞 「ぼんやりと」 岩田 一心(千葉・市川高等学校3年)

夢の中で僕は追われたが 今は彼に追いつかない
片足と側頭部は甘ったるく溶け滲み
それでも追いつかない 追いつかない
醒めてみても 怖くて仕方がない
惹き合わないであろうものに対して
こんなことになるものか

磁⽯はエス極どうしでは引きつきません
偉大なる科学者はどうかこれを破ってくれますか?
ドロドロになってしまった人たちは少しずつ救われるかもしれないです

銀⾊のパックに十錠薬が入ってて
一日たつと八錠に減るように
一日一日はずっと思っても願わない方向に進んでいる気がします
このままうまくいったとしても、本当にそれは「うまくいった」のでしょうか
今日はもう一錠飲む

色、くっきりと
ごちゃごちゃでは過ごせないラインがそこにあって物凄く不安で。
そのラインを越えないように、越えてもごちゃごちゃで、
それこそなんかの間違いで西から太陽が昇ったり、雨が地上から涌き出たり、
エス極どうしがぴったりくっついたり、それともエヌ極と交わって溶けてしまう?

受賞者コメント

優秀賞を受賞できて大変光栄です。作品は自分の詩の読み方を映す鏡だと思うので、作品を評価していただいたことで自分の詩の読み方にも自信が持てます。ありがとうございます。成長した自分がこの詩を見た時にどう思うか分かりませんし、もしかしたら笑ってしまうかもしれませんが、思春期の渦の中の自分をこの詩に留めておきたいです。
昨年、書店でたまたま手に取った『中原中也詩集』に感銘を受け、その後全集を通読しました。その影響で自分も詩を書いてみたくなり、折角書くのなら誰かに読んでもらいたいと思ってコンテストに出してみました。
この詩を書く上でこだわった点は「色感」「バランス」にあります。僕は普段から数学、漢字、アルファベット、人、などに色を感じることが多いのですが、今回の作品は「虹色のように全部の色が出てきてしまうほどの強さはないが、様々な色が混ざり合っている」というくらいを意識しました。自分がどういう時に何色感じるのかというのは論理的には全くわからないので、沢山作品を書いてみて理想の色感に近づけました。そして、「バランス」にもこだわりましたが、これはつまり「夢と現実のバランス」ということです。夢に寄り過ぎるといわゆるクサさが出てしまい、逆に現実に寄り過ぎると面白味が消えてしまうので、ここも試行錯誤の連続でした。
詩を書いている時は誰にでもなれることが学べました。自分は生物的に男性ですが、女の子になりたい時はそのように、男の子を好きになりたいときはそのように、詩を書いているときは自分が無色透明のゼリーみたいになれることが分かったのが成長です。
卒業後は大学の文科系学部に進みそこでじっくりと将来について考えたいと思います。
もっと密度濃い人になりきれるように、もっと人生経験を積みたいです。また、特に繊細で学校に行くのも辛い人たちにぜひ詩を読むことをお勧めしたいです。

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