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  入選
「星空」 河端 琉夏 (神奈川・川崎高校3年)
「貯金」 田野 美珠稀 (神奈川・川崎高校1年)
「ゆれる悪夢」 杉野 迅 (岡山・津山工業高等専門学校1年)
「可愛いはつくれる、ただし」 菅野 夢夏 (青森・弘前中央高校3年)
「四日目」 香山 華奈 (鹿児島・鹿児島第一高校2年)
「私の幸せ」 柴崎 萌加 (兵庫・西宮高校1年)
「子供」 渡邊 陽基 (茨城・土浦第一高校3年)
「うらやましい」 加藤 遥香 (北海道・富良野緑峰高校3年)
「浴槽」 姉帯 凜音 (岩手・福岡高校3年)
「不定積分」 藤田 凜々子 (神奈川・平塚中等教育学校中高一貫 6年)

 

入選 「星空」 河端 琉夏(神奈川県立川崎高等学校3年)

君が百年ずっと居た場所
僕が百年ずっと待つ場所
涙みたいにしょっぱくて
眠ったみたいに暗くって
だけど
あったかくてふわふわしてて
星が降ったみたいにキラキラしてて
とても綺麗で寂しいところ
きっと気にいるはずだよ
君のいた場所に
星を集めて敷き詰めよう
上の方ばかり気にしていた君には
ここはきっと退屈だったろう
見上げなくてもいいように
惨めになんてならないように
僕らで星を見下ろそう
百年めいっぱい使って
君のために作るから
僕らだけの星空を
おかえり

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入選 「貯金」 田野 美珠稀(神奈川県立川崎高等学校1年)

好きなゲームを買ったつもり
外食をしたつもり
夏祭りに行ったつもり
カフェで君と話したつもり
ねえ、もう貯金箱がいっぱいだよ
ずっしりと重くなったそれを持つと金属の匂いがした
鼻の奥がつんとする
ねえ、まだ貯金しないといけないの
貯金箱を机に置いて、プシュと手にスプレーをする
さらりとした肌に見えないバリアができる
つけていたマスクが息をするたびに口に張りついて
くるしかった
ひもが耳にずっとかかっていて
いたかった
「ねえ、君のとなりは、いつおとずれるかな」
ちゃりん と小銭が落ちる音

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入選 「ゆれる悪夢」 杉野 迅(岡山・津山工業高等専門学校1年)

私たちを包み込む、広大な雲海と
鮮やかな空。
白く広がる私だけの海から
鳥がバサバサと汗をかいて飛んで
ゆく。
一瞬、この身を支えるこの足が
自分のことを鳥だと勘違いしたよ
うに
私の体は逆さまになった。
生まれた時からここにある
大地に裏切られた。
時間が遅く流れる。
体中に痛みが走る。
やがて手と足と頭と腹が
地べたに張り付いて、
一滴の涙が流れた。
皆今夜は、長く長く、
揺らぎに揺らぐ夜を過ごすことだ
ろう。
まだゆれてる。
   まだ、ゆれてる。

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入選 「可愛いはつくれる、ただし」 菅野 夢夏(青森県立弘前中央高等学校3年)

化粧とやらを始めてみた。
理由はない。みんなやってて、可
愛くなりたかったから。
化粧水を肌に染み込ませ、化粧下
地を塗る。
この段階じゃまだ変わってない気
がする。
正直意味なんてない気がするけ
ど、それが無駄じゃないことは
知ってる。なんとなくね。
パフを手に取り、ファンデーショ
ンを頬につける。
ここで漸く、私変わったんじゃ
ね?と思えてきた。
クレーターといい勝負が出来るほ
ど荒れた私の肌が平坦に均されて
いく。鏡を見ると、そこには少し
だけ顔色のいい私がいた。
フェイスパウダーもつけてみた。
中々いいんじゃね?また顔色がよ
くなった。
チークもつけてみよう。ピンクと
かどうかな。
つける。鏡を見る。もう一度つけ
る。鏡をみる。
変わってなくない??
まぁ、これでいいことにしよう。
続いてはアイメイク。
睫毛をバチバチに上げる。時々瞼
が挟まって痛い。
眉毛は前髪で隠れるから省略。マ
スカラも私は睫毛の主張が激しい
方なので省略。
ならば、アイシャドウをしよう。
桜色のアイシャドウを瞼全体に乗
せる。やはり見えない。
私は学んだ、私の肌は桃色と共生
できないのだ。
気を取り直して二重幅に先程より
も赤に近いピンクを乗せた。
今度ははっきりと、いや寧ろ目立
ちすぎるほどに肌に映えてしまっ
た。
共生できなかったはずなのに。い
きなり手と手を取り合おうとしな
いで欲しい。
でもまぁこれでいいことにしよ
う。私はこの数十分で学んだのだ。
可愛いはつくれる。ただし満点の
可愛さはすぐにはつくれない。
どこかで自分の中での及第点をみ
つけて、そこから満点に近づけれ
ばいいだけだ。
数時間後、用事が済んだのでシー
トで化粧を落とす。
拭き取ったシートを見て思わず
笑ってしまった。
チーク、濃かった。

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入選 「四日目」 香山 華奈(鹿児島・鹿児島第一高等学校2年)

巣を張らずに何日生活できるか
検証してみた!
というわけでね、
今日で四日目です。
いやー
家、無くてもやっていけますね
ご飯はまあ、何とかなりますし
最近は雨も降らないので
流されることも、ないっ!
……でもですね、一つだけ。
ちょっと辛い点がありまして、
自分、
どこにいればいいのかなあ
って、分かんなくなっちゃうんで
すよね
まあ、一言で言えば、
〝居場所〟って感じ?
風が吹いたら
巣を張って
ガキに木の枝でくるくるって壊さ
れては
巣を張って
というような毎日だったんで、
巣を作るの放棄してたんですけ
ど、
一見無駄に見えても
〝巣〟作るって大事ね。
ってことで、
この検証四日目で私、
リタイアします!
期待してたみんなごめん(笑)

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入選 「私の幸せ」 柴崎 萌加(兵庫・西宮高等学校1年)

夏の匂いが薄れていく
私はいつもうっかりしている
すこし寒いねと 昨日の帰りに
言ったのに
朝だけは色が暖かく思うもんで
また半袖で歩いている
夏の奥で冬の待つ夜は
いつもいつも肌寒い
私には これがどうも懐かしい
毎年 毎年
今年の夏と私たちは
天気の都合がやけに合わなかった
丁寧に折り合いをつけようとする
うちに
十九時 公園にて花火 の文字が
いくつもいくつも消えていった
だから今日 秋花火
私はまたうっかりしている
秋にしかしない
けれども決して秋の匂いではない
 この匂い
もうすぐ 白い息にはしゃぐかな
今日からはうっかりしないらしい
君がすこし寂しそうに言った
それでも私はうっかりするのよ
どこかの秋のなか
いつかの私の声がする
すべての秋を忘れられないのは
いつまでも違わない(たがわない)
この匂いと寒さのおかげ
秋花火を またいつか思い出す
毎年 毎年
過ぎてしまったと全身で嘆きなが

懐かしいと思う
うっかりをやめない
私の幸せ

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入選 「子供」 渡邊 陽基(茨城県立土浦第一高等学校3年)

花は誰かに見られるために咲くも
のではないので
誰にも見られずに咲く花、と言っ
て褒めるのは不適当である。
しかし父よ、こんな理由で不適当
0 0 0
などと言うわたしも
また不適当なのである。
あなたが人生でいくつの花を見て
きたのかわたしには分らない
あなたはまた新しい花を見ていく
に違いない

父よ
あなたの見る花にあなたの全てが
あるなどと
わたしは言うつもりはない
あなたがそれを見てきたから
ここにわたしがいるのだとしても
その対偶もいつも成立するのだか

 2
秒針の刻む音を聞いていると心の
落ちつくことがある
時間は前進するものではなくただ
足踏みしているからだ
それはつまり聖書の時間とは今だ
ということだ
――母よわたしの目を見れば
何でも分るとは言わないでくれ
それは何か難しいことを言ってい
るようで言っていない
考えていると秒針の音はうるさく
しか聞こえない
つまりそういうことなのだ
何を言うことも子供であるわたし
にはできない
だからあなたに待っていてもらい
たいと思うのだ

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入選 「うらやましい」 加藤 遥香(北海道富良野緑峰高等学校3年)

声帯が震わせた空気を感じた
窓に写った彼女と外を一緒に、複雑に見つめた
それで良かったのだと思えるように、耳に音楽を詰めて
どうして日が長くなってしまったのだろうか
夜が月に置いてかれる
夜がすずめ達に脱がされて、空が痩せた
心が痩せた

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入選 「浴槽」 姉帯 凜音(岩手県立福岡高等学校3年)

手足があれば、仲間はずれにしな
かったよね。
塩素の痛みに襲われた缶詰は
あくまで忠告を模したまま硝子玉
を消化して
曖昧な密度は 人工物の品質証明
書を担う
浸透圧。 細胞片はゆりかごに寄
進する
もぬけの殻を演じたジェラートの
香りに
日本海は孤独を映して 芽吹く
宥める 最終便の余白が
新月の隠れ家を申し出て意思を持

三番叟の容認は カンロに託される
疑心暗鬼する浜辺の桜貝が
ツタに梟を飾り付けて
ご都合主義な空耳を 裸電球に浴
びせた
儚いと吐露できるのは君だけで
しょうに。
律儀な自虐は紅花よりも薄く
耐性という色で 図画工作を始め

無力を道徳よりも先に嫌いになる
のは
木蓮の断絶に 絶望が添えられた
ままだから
個性が殺めて、浄化する。
首筋を伝う 四十九日の数珠の音

最期の睡魔を引き留める

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入選 「不定積分」 藤田 凜々子(神奈川県立平塚中等教育学校6年)

f(x)=xを微分すると1
ヒトも微分を繰り返せば細胞か
原子か
1を積分するとx+c
cは積分定数
原子の積分は…?
人間なのかもしれない
星屑かもしれない
それぞれ固有の定数を隠し持って
いる

インテグラル
言葉=ヒト+cとする
誰しも定義は知っている
実践問題は?
cを書き忘れたり
公式すら思い出せない
断片から姿形を想像するという無

結局「解ったつもり」で赤点か
自分に触れた全てのものが
限りなく集まって自分
領域もない
始まりも終わりもよくわからない
大宇宙
相変らず明らかでない定数c
微分の方がずっと簡単
傾き=変化の割合
ごく小さな断片を求めること
次元を下げる
世界を切り分ける
いろんなことに目を背けるだけ
未知数x
無限に可能性はある
ただちょっとミスが多いだけ

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