明和県央高校ラグビー部は、いわるスポーツ伝統校ではない。全国高校ラグビー大会(花園)に初めて出場したのは3年前の創部26年目だ。それまでの10年間は、あと一歩のところで涙をのんだ。そのうち5回は決勝戦での競り負けだった。

「その都度、戦力には自信があった。でも最後のところで負ける。それはなぜだろう、というところから今が始まっています」

成田仁監督が就任したのは13年前。それまでコーチとして3年間指導にあたった。彼の理想は「俺の言うとおりにすればいい」というスパルタ監督像だった。しかし、試合で追い込まれた時、生徒たちは監督の顔色をうかがうばかりで、自分たちの判断ができていないことに気づいた。

「自分たちはどうしたいのか、そのために何をすれば良いのかを生徒たちに投げ掛けて、その答えを辛抱強く待つようにしました。勝てるようになったのはそれからです」

花園に2009年以来3年連続の出場を果たしている。去年は初の「年越し」となる、ベスト16に進出した。キャプテンの熊倉尚也君(3年)は、花園に出られなかった時代を知らない。でも、高校に入ってからラグビーを始めた熊倉君がチームを見つめる目は冷静だ。「一人一人では負ける。まとまらなければ勝てないと思います」

新チームに3年生のレギュラーは5人しかいない。花園出場を自分たちの代で途切れさせるわけにはいかない。熊倉君は「そのプレッシャーはあります」と率直に言う。「まだ先生に頼り過ぎているけど、少しずつチームとして成長しているので伝統はつながると思います」

1年生の時からゲームメーカーとして出場している今泉尚輝君(2年)は「プレッシャーはないです。花園に行ってベスト16を超えます。そのために練習しているんです」と対照的だ。 今年の県新人大会は3位。去年は2位だった。「大丈夫です。去年も夏から強くなりましたから」。監督の自信は揺るがない。2年生中心の新チームがどこまで結束を強めるか。県大会4連覇はその先に待っている。(田家伊都子、写真は学校提供)

学校紹介

1983年創立。田村仁校長。生徒数964人。全国的にも数少ない少人数学級を創立時から実現するなど生徒と教師の豊かなコミュニケーションが特徴。