文系の高校生から人気の高い経済学部。卒業後は、どんな分野に就職する学生が多いのだろうか? 慶應義塾大学経済学部長の駒形哲哉先生に聞いた。(野口涼)

コンサル人気が上昇

―どんな分野に就職する学生が多いですか?

経済学部の就職先は、「金融・保険業」「情報通信業」「製造業」の3つが柱でしたが、産業構造の変化によって製造業の割合が縮小し、最近ではコンサルティング会社に就職する学生が目立ちます。

さらに慶應義塾大学の卒業生の場合、以前は大企業に入って定年まで勤め上げるというのが一般的なあり方でしたが、大企業といえども社員の終身雇用を保障することが難しくなった昨今、ポジティブな転職がごく当たり前になり、さらに自ら起業する学生も多くなっています。

経済学部の主な就職先

学部によって専門として学ぶ内容は異なります。ですが本学の場合、経済学部、法学部、商学部の就職先はほぼ同じです。ですから高校生の皆さんにはいつも「出口は一緒なので、何を勉強したいかだけを考えてください」とお話ししています。興味があることを突き詰めることが、もっとも自分の能力を伸ばすからです。

もちろん、大学院に進学する学生もいます。

院卒の就職は不利?

―経済学部卒業後、大学院に進学すると就職に不利になると聞いたことがあります。

慶應義塾大学経済学部の場合、大学院に進学する学生は約5%です。一般論として大学院に進むと就職時の年齢が高くなることもあり、学部卒よりも就職が難しくなる側面もあります。

そもそも日本の大学院というのは、従来、研究者や大学の先生の養成を目的にしてきました。ところが18歳人口の減少などで、最近では日本国内で大学の先生になるのが非常に難しくなっています。同時に一般社会で求められる思考力やスキルの水準は高まってきています。

そこで慶應義塾大学の経済学研究科では、博士課程に進学して研究者になるという流れを維持しつつ、修士課程ではより社会で役立つ高いレベルの教育を行い、高度な研究開発能力を持った人材をシンクタンクや金融機関、コンサルティング会社、データサイエンス系の企業に送り込もうという取り組みを始めています。実際に修士課程を修了した学生の企業への就職状況は非常に良好です。

 
 
駒形哲哉(こまがた・てつや) 1988年慶應義塾大学経済学部卒業、97年同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、1989年~1990年南開大学(中国)留学、(財)霞山会職員、獨協大学専任講師を経て、2000年慶應義塾大学経済学部専任講師、03年より助教授(07年より准教授)、11年より教授、21年10月より経済学部長。専攻分野は中国経済論(特に中小企業)・地域経済論。