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 佳作
「ロンダンさんの見た景色」 上原 菜々陽(神奈川県立藤沢西高等学校3年)
「あたし性格わるい」 内田 心桜(新潟県立高田高等学校1年)
「秋巡る」 杉山 咲(秋田県立湯沢翔北高等学校1年)
「花車」 マーリー ネベヤ(神奈川・北鎌倉女子学園高等学校3年)
「ゆら」 木村 美月(東京都立大泉高等学校2年)

 

佳 作 「ロンダンさんの見た景色」  上原 菜々陽(神奈川県立藤沢西高等学校3年)


ロンダンさんがわたしを探している。

道ゆく人の眩い話し声に顔を歪めながら
ハサミで世界を切ろうとした

私に隠れるところなんてどこにもなかった
小さな傷がたくさんの手で、近くにあった空き缶を拾うと、手が滑って
カランと乾いた音を立てた
ロンダンさんがこちらを向いた

つけていたヘッドホンで大好きな曲を流してみた
Bluetoothが繋がっていなかったらしい
大きな音が携帯から流れた
ロンダンさんが近づいてきた

近くにきたロンダンさんは、笑っていた

それから、わたしの足に手を置き涙をこぼした

落ちていく夕日を2人そろって見た
出来ないのに、何かを蹴りたくなった
何も出来ないのに、何かをしたくなった
ロンダンさんは目が見えない
見れないロンダンさんは世界を見ていた
地球が歌う歌を聞き、時に幸せな音を恨んでいた

夕日からこぼれる可憐な音を心に書き留めた。
辺り一面を包む、眩しすぎるオレンジの音が止むと、夜が来た。

一瞬で空気が変わる感覚がいとおしくて、おかしくて
2人は笑った。

生きててよかった
ただ生きててよかった
どこかのタイミングで死ななくてよかった

ロンダンさんは何を思っているだろう

今日だけはなんだか走れる気がした。

受賞者コメント

 とても嬉しかったです 。文章を書くのが好きなので、高校生のうちに何かに応募してみたいと思いました。
 夜だったり、1人でいる時などに、孤独で寂しくてたまらない瞬間があるのですが、もやもやする、とか、気持ちが晴れない、などの言葉ではなく少し長い詩として、そのなんとも言えない気持ちを表したい、と思って書きました。そんな気持ちの時ほど景色が綺麗に見えたり、友達の優しさがいつもに増して嬉しかったりするので、そういうところも含めて誰かに伝わったら嬉しいなと思って書きました。 人が読んだ時にどう感じるかな、と考えて作るのが楽しかったです。
 伝えたいことを言葉にする作業の中で、自分の思いにぴったりの言葉が私の知識にないことがあったので、やはり語彙力はとても大切だと思いましたし、そこでたくさんの言葉を調べて自分の言いたいことをより正確にしていくことが出来てよかったです。
 創作活動を意識して生活してみると、小さな事に感動したり、素敵な言葉に出会えたり、学校生活がより彩られるなと感じます!
 私は技術も知識もありませんが、じっくり考えて書いてみたらとてもお気に入りの文章がたくさん書けました。自分の楽しみが増えるので興味がある人は挑戦してみてください!

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佳 作 「あたし性格わるい」 内田 心桜(新潟県立高田高等学校1年)


明後日のための言葉ばかりを大切にしたあなたは、その曲がり角で鳥を庇って、きっとしぬ

一番近い銀河系の惑星で、おかぁさんが生まれたのであなたのこうふくは少し擦り減ったと、宇宙の安寧を理解できないあなたはデブリの波に飲まれて銀食器に帰る。

そういう星の運命の元に生まれたんですよね、そう言ってくださったら、不運を全部幸福な人がいるせいにして、私はあなたに縋り付いて可哀想なぬいぐるみをまだ捨てられないみたいにみれんたらしく瞼を閉じる時の脳にふっと刺さる罪悪感を植えつけたのに。

シーツの皺と、カーテンのその隙間にあなたをパズル的な価値観で垣間見るなんてこと私ならしなかった。私なら、躊躇いもせず、あなただけよと可哀想なお姫の真似事をしたのに。
あなたは私にするべきだった。絶対に。
この子はあなたには不釣り合いだったと、そう言い放って首筋をそっと、笑って、
忘れられるのは好きだった飲み物くらいになるはずだった。

かわいそう
この子を救える気になっていたのね
かわいいこ。
君には絶対やりません。
私ごときで我慢して、彼女を重ねて泣くぐらいにしておいてね。

動物庇えるのがすき。
明日の朝食みたいにビックバンについて語って、朝食を作って、あの子を見送って、
君に嘘をついて酷く泣かせてしまうかも。

受賞者コメント

 まさか、と思いました。誰かにちょっといいなと思っていただけたのなら満足です。久しぶりに完成させることができたものをスマホのメモだけに留めておくのはなんとなく憚られると思ったので応募しました。
 自分の中ではいちおう作品のモデルにした人物がいます。身近な人でした。本人にも他の人にも、まだ秘密です。
 独りよがりだけれど、なんとなく寂しさを感じてもらえる作品を目指しました。時間はかかりませんでした。思うままに書いて、推敲も碌にしていません。しかし、愛着はけっこうあります。スマホにぽちぽちと詩をうっておくと、自分なりの逃げ場を作れます。
 詩を見るのが好きです。リアルなものでもなんでも。だから、できたらあなたの詩たくさん見せてください。

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佳 作 「秋巡る」 杉山 咲(秋田県立湯沢翔北高等学校1年)


夏の香りがヒトみたいに
手を笑顔と呼び
髪を群れと呼んだ
わたしは誰よりも鏡を見つめて
「私を見つけて」と削り落とした
ピラミッドと未来の手帳に
ぬるい雨が降る
カメレオンがかき混ぜた
成長する暗闇
朝の通学
走って帰る流れ星の
広い背中
照りつく思考
行先不明のランドセルが

車椅子の私を介護し
微笑む
そんなふうに増えた毎日を
一・二・三度呼び
四度目で
春の溶けた柔らかい水が
冬の折り目がつらくて
直線がなぜか円を描くから
はやく 
 消えてしまいたい?

戦争が祖母に指輪を贈った
いまだに聞こえる戦車のワルツと
その手の銀の重い輪を見て
私は
わたしは
額で押したキーボード
無視という罪の重さに

ひどく、ひどく
安堵した。

受賞者コメント

 自分の作品を他者に評価して頂き、このような形で結果が残ったという事実がとても嬉しいです。これまでの受賞作品を読み、現代詩というジャンルの全く新しい感性や表現に衝撃を受けました。自分の創作活動への刺激にもなるいい機会だと思い、コンテストへの応募を決めました。
 日々の授業や新聞の記事、家族の会話などで得たことから、現代社会が抱える様々な問題をイメージしながら書いた詩です。詩の中の視点は私一人だけのものではなく、年齢や性別の違いでそれぞれが、異なる価値観や生きづらさを感じていることを表現しました。
 普段の創作は日記のような、ありのままをありのままに書く文章ばかりなので、「詩を書く」というのは私にとってひとつの挑戦でした。工夫した点は、季節や時代の巡りが分かるような表現を入れているところです。詩についての基本的な知識が乏しかったこともあり、作成には時間がかかりましたが、完成させられたことへの達成感は非常に大きなものでした。
 詩を書くにあたって、テーマの内容について自分なりに深く考え、その過程から、私たちは今以上に思考の幅を広げることができると感じました。
 自分が普段考えているような何気ないことが、文章におこすことで形になり作品になるところが創作活動の魅力です。日常の中にある些細な「あるある」を文章に落とし込むのが好きなので、自分の行動や考えをメモに残すようにしています。
 より理想的な表現のためには知識が必要ですが、まずは新しいものを自分の手で創り出すことに楽しさを見出だしてほしいです。

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佳 作 「花車」 マーリー ネベヤ(神奈川・北鎌倉女子学園高等学校3年)


うまれた瞬間にぴすとるで撃たれ
また撃たれ
ぴすとるの爆撃が呼吸と錯覚するまで
あなたの身体は撃たれている。

ぴょんとぴすとるが轟き
また轟き
されど肺は酸素をかかえて
錯覚の爆撃に脳は踊らされ
ぴょんといって繰りだされる弾丸に
あなたの花車な身体はたえている。

あなたは気づかない
ぴすとるのぴょんぴょんわらう爆撃を
あなたは気づかないまま
それがしあわせなんだよ。
しあわせとは無知であること
しあわせとは莫迦であること。
なにもしらないあなたはしあわせ
なにもしらないわたしはしあわせ

みんな莫迦で、いまこの瞬間もぴすとるに撃たれてて、肺が酸素をつかまえて、生きてて、死んで、やっぱり生きて、脳がほんとのことを忘れようとしてて。

だれかが隠した真実が、だれかの花車な身体を撃って、
隠した真実を知ると、しあわせになるために自分の花車な身体を撃って、
今日も莫迦で、
莫迦で、
死にたくなっても莫迦は莫迦のまま。

いい月がでている
まるで解剖台の照明みたいな月あかりに
脚をなげ、河童の指を投影した。
みにくい河童の指を投影した。
なにもしらないあなたは
解剖台の照明に銃口をむけて
「しあわせ」といった。
…花車なあなたの身体が
秋の夜風に吹かれて痛そうだった。

受賞者コメント

 このような輝かしい賞をいただけた事を嬉しく思います。審査してくださった先生方、本当にありがとうございました。書き溜めていた詩を、「このまま死蔵してしまうならどこかに投稿してみよう」と思い立ち、今回応募させていただきました。
 お風呂場で髪を洗っているときに、いい表現を思い付きます。頭の中にいつもある考え事や悩み事を、詩が持っている「自由さ」を借りて言語化してみようと思いながら、自分らしく詩作しています。私が作る詩は、まず間違いなく萩原朔太郎の詩の影響を受けていると思います。中でも「てふてふ」というオノマトペは彼の偉業のひとつだと思っています。「チョーチョー」とは読まず「てふてふ」、蝶が飛ぶときに翅で空気を打つ感覚を写したもの、と説明を読んだとき、本当の意味で詩を理解できたような気がしました。私も「てふてふ」のような、何事にも捉われない、鮮やかでみずみずしい描写ができるよう言葉を作っていくようにしました。それが苦労であり、詩を作る楽しさだと思います。
 自分の書いた詩が誰かから評価されたのが今回が初めてでした。この経験を糧に、今後も成長し続けたいと思っています。創作活動の魅力は、どんな自分でも肯定してくれるところです。醜い感情を否定しない、ありのままの自分を映してくれるのが「創作」という行為であって、創作しているときの人の姿がとても好きです。幸せな気持ちを言葉に託す人、怒りや嘆きを言葉に託す人、その瞬間は誰もがありのままの姿でいられます。それが、「創作」の魅力です。
 言葉はどんなものにもなれます。お薬や絆創膏にもなれますが「ペンは剣より強し」という言葉があるように、ときに銃や爆弾よりも力を持ちます。ですが私は、言葉に剣や銃や爆弾のような力は欲しくはありません。あえて言うなら、マッチ棒のような言葉を生み出していきたいなと思っています。何かのきっかけで人に温かさを与えられる。人の心に火が着くように、印象とインパクトを残せる。そんな言葉を、これからも探していきたいです。
 創作の良いところは、上手いか下手かが存在しないことだと思います。自分の言いたいことや書きたいことを形にすれば、それだけでひとつの素敵な作品です!小説でも詩でも、俳句でも短歌でも、どんな形を借りても自分の作品は自分にしか書けません。

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佳 作 「ゆら」木村 美月(東京都立大泉高等学校2年)


夕やけ小やけでまた明日
「せかいにでんせんがのびるまえ とりはどこにとまってたんだろうね」、
なんて
きみはわらうの
くすくすくす
けろけろけろ

べつにたいしたことじゃないけどさ
いまさっき
そこに大きなかにがいたのさ
ええどこに
ほらそこさ
きちきちきち
ぽこぽこぽこのぽこ

ゆるゆらり
プールの中のきみのかみはすこしだけ
ゆでパスタ

からから とんてんしゃん
とっぴんぱらりのぷう
てろてろ  かんらんしゃ
まちゅかぴちゅか
つてとら

せかいは大きないねむりネコのゆめです
だから今日のなんだかうすむらさきな空も
するむいたひざも
あすのしゅくだいも
ぼくは何にも気にしなくていい。

今日、君が死んだ
僕はこの不可逆変化万物流転諸行無常の世界で生きていかなきゃいけない
きっと、これからも
そんなことは紀元前から語られ尽くしていた
詩人も
船乗りも
その辺の蝉も
とっくのとうに知っていた
でも僕だけは歌い足りなくて
小学二年生にでも戻って、いっそ出会わなければ、なんて考えたりして
目の端の揺曳を恨み

惰性で息を続けている
惰性で息を続けている

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