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【 最優秀賞 】

「夢見草」 泉 まいこ(神奈川県立湘南高等学校2年)


つぼみが緩めば、うっすらと色づきはじめる
淡桃色と表せば、不貞腐れてしまうだろうか

同じ時期に満開になる花は可哀想
いや、得なのか

「まだ咲かない」

その花が目に映る違和感、既視感
つぶつぶと、しゅわしゅわとした

振り向いて気がつく
こんなに美しい道を通って来たのかと

「その並木に信号機はあまりにも映える」

手を伸ばせば届きそうなのに、決して届かない位置に咲くのがもどかしい
でもそこが、ずるがしこくて好きだという

届かないのに手を伸ばす子供は滑稽か
ただその姿は美しく、彼らはいつかきっと届く

「何が誇らしくてこんなに満開になるのか」

暖かい風に一心不乱にその花を散らし
春を降らせる

交差点の真ん中で踊る花びらの気持ち
ホームの線路上で遊ぶ花びらの願い事

「その木の影は青いという」

その花は拾いたくなる
花びらは指の間をほろりとぬける

散りゆきはしないと想うだけ
光の粒のように舞いゆくだけ

「桜を殺せるのは曇天だけ」

 

最優秀賞の受賞コメントは近日公開!

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