2021年10月31日(日)に4年ぶりとなる衆議院議員選挙(総選挙)が行われる。18歳以上の高校生も有権者だ。今回初めて投票に行く人はもちろん、今後、選挙権をもつ人にも知っておいてほしい、総選挙の仕組みや投票の仕方を基本からわかりやすくQ&A形式でまとめた。(黒澤真紀)

Q 解散総選挙って何?

総選挙は、衆議院議員の任期満了(4年)によるものと、衆議院の解散によるものの2つがある。たいてい任期満了を待たずに解散されて選挙が行われる。

衆議院の解散とは、任期切れを待たずに、全衆議院議員の身分を失わせること。解散には、首相の判断による場合と、内閣と国会が対立して内閣不信任案が可決されるなどした場合の2パターンがあるが、多くの場合は首相の判断による解散だ。選挙を行うことで、そのときの政治課題や政策を国民に問い直し、民意を政治に反映する意味合いがある。

今回は、任期満了(10月21日)直前の10月14日、岸田文雄首相が衆議院を解散し、31日に総選挙を行うことを決めた。

Q 今回の総選挙の特徴は? 

今回の選挙は、戦後初めて衆議院議員の任期満了日以降に投票が行われる。実質、任期満了選挙に近い。

解散から投開票日まで17日しかなく、戦後最も短いのも特徴だ。政党や候補者からみれば短期決戦、選ぶ側からみれば短期間で投票先を見きわめることが求められる。

Q 投票日はいつ?

10月31日(日)午前7時~午後8時だ。ただし、投票所によっては早めに投票が締め切られるところもあるので、投票所入場券などで確認しておこう。

Q 誰が投票できるの?

投票日に満18歳以上の日本国民。法律上は誕生日の前日に歳をとるため、今回の衆院選では、2003年11月1日以前に生まれた人に選挙権がある。

Q 投票所はどこにあるの?

住んでいる市区町村の選挙管理委員会から公示日(10月19日)のころまでに、住民票に記載された住所宛に世帯全員分の「投票所入場整理券」(入場券)が入った封筒が郵便で送られてくれる。そこに投票所と投票時間が記載されている。

転入届を出してから3カ月未満の人は新しい市区町村の選挙区で選挙人登録が済んでいないので、前に住んでいた市区町村で投票する、または不在者投票ができる。

Q 投票日に投票できない人はどうすればいいの?

公示日の翌日10月20日(水)から投票日の前日10月30日(土)までの午前8時30分から午後8時までの間に、「期日前投票」ができる。期日前投票所の場所や投票時間は、投票所入場券などで確認しよう。選挙期間中に誕生日を迎える人は、満18歳になるまで期日前投票をすることはできないので不在者投票を利用しよう。

仕事や旅行などで、長期間住民票のある市区町村を離れている人も、あらかじめ手続きをすれば、「不在者投票」ができる。

衆院選の投票用紙の書き方(総務省の資料をもとに高校生新聞編集部が作成)

Q 投票のやり方は?

衆院選では、小選挙区選挙と比例代表選挙の2つに投票する。選ばれる議員の数は、小選挙区選挙から289人、比例代表選挙から176人で計465人だ。

小選挙区選挙は、289の選挙区ごとに行われ、有権者は住民票のある選挙区に立候補した人の名前を1人書いて投票する。1つの選挙区で一番票を獲得した候補者1人が当選する。

比例代表選挙は、11の選挙区ごとに行われ、有権者は住民票のある選挙区に届け出た政党名を1つ書いて投票する。得票に応じて政党に議席が配分され、政党が提出した名簿の上位から当選する。

衆院選では、小選挙区と比例代表の両方に立候補する「重複立候補」が認められている。そのため、小選挙区で落選しても、比例代表区で所属政党が獲得した議席数によっては、「復活当選」できる場合もある。ただ、誰が重複立候補しているかまでは確認しなくても、小選挙区、比例代表区とも投票できる。

衆院選の投票の流れ(総務省の資料をもとに高校生新聞編集部が作成)

Q 投票所では何をするの?

大まかに次のような流れだ。10~15分くらいみておけばよい。今回、衆院選の投票に加えて、最高裁判所裁判官の国民審査の投票も行われる。

  • ①投票所に入ると、「受付の人」「選挙人名簿を確認する人(名簿対照係)」「投票用紙を手渡す人(投票用紙交付係)」の3人が座っている。投票所入場券を渡せば、選挙人名簿と確認してもらえる。
  • ②まず小選挙区選挙の投票用紙を受け取る。
  • ③記載台で、受け取った投票用紙に自分が投票しようと思う候補者の名前を記入する。横から覗かれないよう間仕切りがついている。鉛筆はその場においてある。記載台には候補者一覧が貼られているので、名前を忘れても大丈夫。
  • ④小選挙区の投票用紙を投票箱に入れる。
  • ⑤比例代表選挙と最高裁判所国民審査の投票用紙を受け取る。
  • ⑥比例代表選挙の投票用紙に、投票したい政党名を記入する。投票できる政党名の一覧が記載台に貼られているので、参照してもよい。国民審査は、やめさせたい裁判官がいたら、氏名欄に「×」を記入する。
  • ⑦比例代表選挙の投票用紙を投票箱に入れる。
  • ⑧国民審査の投票用紙を投票箱に入れて、投票所を出る。

Q 「投票所入場整理券」を失くしたり、忘れたりしたら?

投票所入場券がなくても大丈夫。本人確認ができれば投票できるので、係の人に聞いてみよう。学生証などがあるとスムーズに本人確認をしてもらえる。

Q 投票するときの注意は?

投票用紙に2人以上の候補者名、立候補していない人の名前、関係ない記号やメッセージが書かれている場合や、どの候補者の氏名を書いたのか判別できない場合など無効になる。どの立候補者に投票したかったのかが明白なら有効になるが、候補者の名前は間違えないように投票台にある一覧を見て書くのが望ましい。

Q 誰に投票するかを相談してもいいの?

投票所に入る前までは、家族や友達と意見交換したり、親と話をしたりして、自分の考えを巡らせるとよいだろう。ただし、誰に投票するかは自由である。自分の価値観を大切に投票に臨もう。投票先を明かしたくなければ、家族も含めて他人に言う必要はない。

Q  情報の集め方は?

各党や候補者の情報の集め方は、インターネット、政見放送、新聞・テレビ、選挙公報、選挙公約(マニュフェスト)などいろいろある。

候補者の経歴や意見、政党の政策が掲載された「選挙公報」が投票日の2日前までに各世帯に届けられる。

政党の主張などは「政見放送」としてテレビやラジオで放送される。放送予定は都道府県の選挙管理委員会のホームページなどで確認できる。

通常行われる街頭演説は、新型コロナウイルスの感染防止のため、あまり行われない可能性が高い。一方、インターネットでの選挙運動として、政党や候補者は、ホームページやツイッターなどSNS、YouTubeなど動画サービスを利用して政策や主張を届けようとしているので、自分の選挙区の候補者や気になる政党のものをチェックしてみてもよい。

新聞社や放送局、ポータルサイトなどが候補者へのアンケートや政策の比較などのページを作っている場合もあるので参照してみてもよい。

政策は幅広いので、すべてを理解しようとする必要はない。自分の関心のある領域に焦点を絞って考えてみるのもいいだろう。たとえば、「環境問題にどのように取り組むのか」「少子高齢化の対策をどう考えているのか」という視点で党や候補者を選ぶのもよい。