高校生記者リポート 第8回全国高校生英語ディベート大会

第8回全国高校生英語ディベート大会が12月14、15日、松本大学(長野)で開かれた。各都道府県の予選を勝ち抜いた64校が「日本政府は輸入米の関税を撤廃すべきである。是か、非か」を議題に、白熱したディベートを展開した。 (文・写真 田崎陸)

歴代優勝校破り決勝へ

各校が5試合ずつ予選を戦い、成績上位8校が決勝トーナメントに進んだ。このうち4校は歴代の優勝校。その中で異彩を放っていたのが神戸女学院高等学部の2年生4人だ。

同校にはもともとディベートの部活はなく、4人は有志の集まり。他の部活と掛け持ちしている生徒もいる。親から英語ディベートについて教えてもらった栗本英理子さんが「参加しよう」と言い出したのがきっかけだった。

4人は、1年生の秋から英語ディベートを始めた。栗本さんは「初めて練習試合をした時は、ディベートにならなかったが、ディベートに取り組んでいる近畿の高校からアドバイスをもらいながら上達した」と語る。

歴代優勝校を破って上り詰めた決勝の相手は、地元長野県の伊那北高校。神戸女学院はじゃんけんで否定側となった。メンバーが異口同音に「得意」という否定側。栗本さんは「運が味方している」と思ったという。

■白熱の決勝戦

 

決勝が始まった。伊那北が「関税撤廃で競争力が高まり、日本の農業が復活する」と立論したのに対して、アタック(反論)担当の石丸莉誇さんが「海外ではコメの価格を下げるために大規模農業を展開できるが、日本は地理的に無理だ」と主張。ジャッジ(審判)から「相手の立論の弱みを完全に突いた反論」と評価された。

一方、神戸女学院の立論では、松崎可鈴さんが具体的な数値を挙げて農家への打撃を強調。また「海外から汚染米が流入する危険がある」とも主張した。伊那北が「汚染米は、必ずしも人へのダメージがない」と反論したのに対し、ディフェンス(再反論)担当の栗本さんが中国での死亡例を挙げて深刻さを指摘した。最後の総括では、山田珠久さんが自分たちの立論を整理した上で相手の弱点を指摘した。

最優秀ベストディベーターにも選ばれた山田さんは「一人一人がリサーチして戦略を練ることができた」と振り返った。

メモ   英語ディベートとは 

1つの議題について、肯定側と否定側に分かれて英語で討議する。1チーム4人が立論、アタック、ディフェンス、総括を分担する。口論ではなく、発言時間やルールが厳密に制限される中で、ジャッジを説得できる証拠を出して主張することがカギになる。

全国高校英語ディベート連盟(HEnDA)常任理事の宮川純一さんは「どのチームも肯定・否定の両方を担当することによって、物事を両面から見ることができる」と意義を語る。まだ出場校を出していない県もあり、「10 回大会までに、全ての県に英語ディベートを広めたい」と話す。

 取材を終えて 

私も群馬県大会に出場したが、全国のレベルの高さは想像以上だった。日本語でさえ難しい内容を英語で議論するのは、さらに難しい。事前に相当準備をしたはずだ。

優勝した神戸女学院は英語ディベートを始めてから1年にもかかわらず、選手たちは「優勝を目指していた」と話す。取材中、チームメートが互いに努力をたたえ合っていて、団結力がうかがえた。互いを信頼し合っているからこそ、全国の頂に立つことができたのだろう。 ( 田崎)