作家の朝井リョウさんは、平成生まれの日本を代表する作家の一人です。私は朝井さんの大ファンです。私が考える作品の魅力を紹介します。(高校生記者・まいなん=3年)

2009年のデビュー作『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しました。その後も『何者』で直木賞を獲得、『チア男子‼』や『世にも奇妙な君物語』など数々の話題作や、幅広い年代の心に響く作品を執筆されています。

苦難と同じくらい希望があると教えてくれる

朝井さんの作品の魅力はたくさんあります。まず、たくさんの別れや苦難がある中でも、同等の希望、喜びが未来に待っていると私たち読者に気づかせてくれるところです。

それを特に感じる作品が『世界地図の下書き』です。

児童養護施設の同じ班で生活する5人の子どもたちの成長物語です。

『世界地図の下書き』朝井リョウ著(集英社文庫、680円=税抜)

5人のうちの1人である佐緒里が泣きながら、「希望は減らないよね」「そう思ってないと、負けそう」と話す言葉が、特に深く心に刺さりました。この言葉から、私は、朝井リョウさんが「納得がいかないことと同じくらいの希望がある」というメッセージを伝えている、と感じました。

私は今、特に自分の進路について悩むことが増えました。そんなときは逃げ出してしまうこともありますが、友人や家族という存在が私を鼓舞してくれます。

これからの人生において、いつもそのような存在に出会えるとは限らないと思います。4月には3年生になり未来に向かっていく中で、この本から感じ取ったメッセージを思い起こします。

10代が思わず共感する心理描写や行動

そして、私たちのような10代と年齢が近い登場人物の物語を多く執筆されています。現代のネットが発達している中での友人や家族とのコミュニケーションの取り方や、登場人物の心、行動の描写一つ一つにとても共感が持てます。

朝井さんの作品を読んでいると、だんだん自分自身もこの本に登場しているのではないかと錯覚してしまうほどなんですよ。

私は一度読み始めると、終わりまで一気に読んでいます。そして、現在から未来に向かってどう自分らしく生きていくかを考えるきっかけになります。

朝井リョウさんの作品は、中高生や学生、今を生きる人々に共感を与えてくれるはずです。