喜びに沸く中崎圭斗(写真中央)ら福岡大大濠の選手たち

全国高校総合体育大会(インターハイ)バスケットボール競技は8月2日、あづま総合体育館(福島)で男女決勝戦が行われた。男子は、福岡大大濠(福岡)が明成(宮城)を61-60で下し、3年ぶり4度目の優勝を飾った。(文・写真 青木美帆)

前日は4度延長、極度の疲労救った選手層

残り2.0秒、決まれば同点という明成のフリースローが外れた。試合終了のブザーが鳴ると、選手たちは弾けるように味方ベンチに向かい、思い思いに喜びを表現した。

死闘をくぐりぬけて手に入れた頂点だ。準決勝の帝京長岡(新潟)戦は、異例中の異例となる4度の延長戦。通常40分間で決着がつくところを、20分も余分に戦った疲労は隠せず、決勝戦はスタートからいきなり0-11と離された。準決勝で相手のキープレーヤーを守り抜いた永野聖汰主将(3年)も精彩を欠いていた。

しかし、分厚い選手層がそれを助けた。永野と交代して出場した土家大輝(2年)は、アウトサイドシュートの調子が悪い中田嵩基(2年)に代わってシュートを決め、ドライブやパスでチームに勢いを与えた。準決勝で3点に終わった中崎圭斗(3年)は「準決勝は後輩に頑張ってもらった。決勝は3年生がしっかりしないといけない」と積極的にシュートを打ち、両チームを通じて最多の20得点を稼いだ。「(インターハイの)6試合は5人では戦えない。アウトサイドの選手層は優勝の大きな要因だったと思います」と片峯聡太コーチは話した。

永野聖汰主将に代わって大活躍した土家大輝

2年連続初戦敗退、「きれいなバスケ」を捨てた

一昨年、昨年と、福大大濠は2年連続で初戦敗退を喫している。「悔しかったけど、自分の代は絶対優勝するという気持ちでやってきた」と振り返る永野は、チームのスタイルを一新させることに力を注いだ。

「去年まではかっこよくてきれいなバスケットだったけど、今年は全員で声を出して、泥臭くプレーしようとしてきました。最初は切り替えるのが大変だったけど、意識することが気持ちいい、泥臭くやることが楽しいと思えるようなりました」

永野や中田はコート内外で常に仲間を鼓舞し、井上宗一郎(3年)や横地聖真(1年)はファインプレーに何度も吠えた。ストレスから来る吐き気に悩まされ、自分を表現することが苦手という中崎も「みんなが支えてくれたおかげで、最後は気持ちを入れてプレーできました」と振り返り、試合終了後はまぶしいほどの笑顔に。ベンチメンバーも応援団も、昨年までの福大大濠からは想像もできないほどに、豊かな感情を体中からほとばしらせていた。

唯一のセンターとして体を張り続けた井上宗一郎(左)

ノーシードからのインターハイ優勝という最高のスタートを切った、新生・福大大濠。追われる立場となるウインターカップでどのような戦いを見せるのか、今から楽しみだ。

【チームデータ】
1951年創部。部員33人。インターハイ優勝4回、ウインターカップ優勝2回。OBに金丸晃輔、橋本竜馬(ともにシーホース三河)、津山尚大(琉球ゴールデンキングス)など。
3年ぶり4度目のインターハイ制覇となった福岡大大濠