東京・豊南高校に昨春、手話同好会が発足した。所属する20人全員が手話の素人だったが、今ではろう者と簡単なコミュニケーションを取れるまで成長した。将来のため、友達を増やすため……。メンバーはそれぞれの思いを胸に手話を学んでいる。 (東憲吾)

昨年4月、手話を学んだ経験を持つ顧問の水野冬馬先生が「一緒に手話を学ぼう」と、授業の終わりに生徒に呼び掛けた。現在部長を務める神谷梨鳳さん(2年)はその話を聞き「小学生のころから興味はあったけど、学ぶ機会がなかった。良いチャンスだ」と友達などを誘い、集まった7人で手話同好会を設立した。

練習は週3日、放課後2時間。初めは単語やあいさつなどの簡単な手話を、水野先生に教わった。しかし、会話を学ぶ段階になると「ぐんと難しくなりました。1つの手の形に、2つの意味があるものが存在します。例えば『大丈夫』と『できる』は同じ形。会話中にどちらの意味かを判別するのが難しい」(神谷さん)。

神谷さんはインターネットの動画サイトを見ながら自宅でも勉強を続け、11月には簡単な会話ができるレベルの手話検定4級を取得した。将来は手話を生かせる仕事に就くのが夢だ。

手話が通じて感動

文化祭で公開手話講座を開き、ボランティア活動でろう者と交流を深める。10月に入会した菊地彩香さん(3年)は「将来は保育士になりたい」という。「園児の親にはろう者がいるかもしれない。そういう人に頼られたい」と勉強中だ。

常陸悠弥君(2年)は、9月に東京・大塚ろう学校の文化祭に遊びに行った。「サイダーを売っている場所を手話で尋ねたら通じた。それだけの会話でもうれしかった」と目を輝かせる。「今後もろう者と交流できる機会を増やしたい」と語った。