ウシガエルやアメリカザリガニは、日本の生態系を脅かす恐れのある「特定外来生物」だ。外来種による問題を「食べて解決」しようと、隠岐高校(島根)の2年生5人は、隠岐の島に生息する外来種を使った「外来種カフェ」を開催した。代表して北野藍さんに、カフェのコンセプトやこめた思いを聞いた。(写真・学校提供)

外来種を「食べて」問題解決

―「外来種カフェ」のコンセプトを教えてください。

外来種カフェ「CAFE LINK」とは、隠岐の島の外来種を適切に扱い、料理にしてお客さんに提供するカフェです。食を通して外来種を知る機会を提供し、外来種について一人ひとりがいろんな視点をもって考えることができる場を目指しました。

外来種カフェの運営メンバー。左から野津華澄さん、出口渚紗さん、中濱速人さん、北野さん、横地直也さん

―外来種カフェを運営しようと思ったきっかけや理由はなんですか?

学校で「隠岐の島の課題を見つけて解決しよう」という授業を受けたことがきっかけです。隠岐の島には、外来種による問題がたくさんあります。

例えば、隠岐の島にはいたるところに、特定外来生物の「オオキンケイギク」というキク科の植物が生息しています。量が減っている地域もあるものの、まだまだ駆除が追いつかず増えているんです。繁殖力や生命力が強いので在来種の成長を妨げてしまい、隠岐の島の生態系が崩れる恐れがあります。

特定外来生物のオオキンケイギク

―隠岐の島に生息する外来種の駆除活動は誰が行っているんでしょうか。

環境省や隠岐高校の先輩が行っています。隠岐高校では授業の一環で外来種駆除に取り組むんです。しかし隠岐の町民にはあまり知られておらず、駆除活動をしても外来種がどんどん繁殖していて……。町民にも参加してもらうための方法を考え、「まずは外来種について知ってもらおう」と思い、外来種カフェを思いつきました。

外来種は厄介者に見えるけれど、命がある生き物です。なので、ただの駆除活動ではなく、「命をつなげる活動をする」という意識を持ってもらうためのカフェを企画しようと思いました。

ウシガエルもおいしい料理に

―どんなメニューを提供しましたか?

1回目は昨年9月に学校の図書館で、2回目は今年1月に隠岐の島のカフェを借りて、それぞれ1日ずつ開催しました。

1回目で提供したメニューは3種類で、交流のある北海道の三笠高校と一緒に考えました。1品目は「マレンゴ風ウシガエル」という料理。マレンゴとは、トマトをベースにしたスープ料理です。もともと鶏肉やマッシュルーム、エビ、刻んだ玉ねぎを入れるのですが、今回は鶏肉を特定外来生物のウシガエルの肉に、エビを同じく特定外来生物のアメリカザリガニに変えて作りました。ウシガエルの食感は鶏肉に似ていて、臭みもなく味もおいしいと言っていました。

マレンゴ風ウシガエル。鶏肉の代わりにウシガエルを、エビの代わりにアメリカザリガニを使用している

2品目は「シャカシャカポテト」。特定外来生物の「ウチダザリガニ」を加工して塩と混ぜ、ポテトにふりかけています。ウチダザリガニは、私たちと同じく外来種の活用について研究している福島県の猪苗代高校に提供してもらいました。3品目は「ブタナパン」。キク科の植物「ブタナ」をパンに練り込んで作りました。

2回目のカフェで提供したメニューは、オオキンケイギクを使ったキッシュとケーキです。この回ではただ料理を提供するのではなく、お客さんにオオキンケイギクの駆除活動に参加してもらい、そのあとに料理を食べてもらいました。

オオキンケイギクの味は春菊に似ています。少し苦いのですが、お客さんには「キッシュに入れるとアクセントになっておいしい」と言ってもらいました。

オオキンケイギクを使ったキッシュ

ケーキには3年生から、授業で育てているさつまいもで作った、さつまいもクリームを提供してもらいました。このさつまいもにも、肥料にオオキンケイギクが使われています。

―お客さんは何人くらい来ましたか?

1回目は同級生3人が、2回目は隠岐の島の町民30人くらいが来店してくれました。同級生やその家族が多かったです。他にも親子で、友達同士で、とたくさんの方に来てもらいました。外来種のことや私たちの活動に興味を持って質問してくれるお客さんもいて、とてもうれしかったです。

メンバーと協力し準備重ねた

―カフェを開くまでに苦労したことはなんですか?

自分たちが思っていた以上に準備が必要だったことです。外来種カフェを開く時に、材料となる外来種を捕獲したり、その外来種を使って料理を考えて試作したり、メニュー表を作ったり、カフェをする場所を確保したり……いろいろな準備が必要で、メンバーで分担して進めました。何かを計画して実行するには、かなりの準備が必要だということが分かりました。

料理に使うアメリカザリガニを捕獲した

―今後の展望を教えてください。

外来種カフェをどうやってつなげていくかを考えています。私たちが外来種カフェを開いた目的は、いろいろな人を巻き込んで、さまざまな形に変化することができる外来種カフェというものです。

私たちが3年生になったら、今より活動することが難しくなります。他の人でも外来種カフェを運営できるよう、継続に向けて外来種カフェのマニュアルを作れればと考えています。