岡島花蓮さん(神奈川・公文国際学園高等部1年)は昨年夏、カンボジアを訪問、小学校へ100冊の英語の絵本を届けた。幼少期から英語に親しんできた岡島さんが語る、英語がはぐくむ力とは何か。活動にかける思いを聞いた。(写真・本人提供)

絵本で英語力がついた子ども時代

―なぜカンボジアに絵本を届けようと思ったのですか?

私自身が子どものころに英語の絵本をたくさん読み、英語が好きになったからです。私はネイティブの先生がいる幼稚園に通っていたので、3歳から英語を話す環境にいました。

岡島花蓮さん

母が私に「英語に親しんでほしい」と考えていて、家ではマザーグースのCDを聞かせてくれたり、英語の絵本を読み聞かせてくれたりしました。家には日本語のほか、英語の絵本が1500冊くらいあったと思います。

―英語の絵本をはじめとして、たくさんの本に親しんできたのですね。

洋書の多読を始めたのは幼稚園児の頃です。5歳のときには祖母の勧めで英検3級の過去問に挑戦。解いてみると合格点を越えていたので、英検を受検し3級に合格しました。

準2級は難しくて、英単語帳を買いました。私自身の経験から、英検3級程度の英語力があれば、日常会話ができるので意思疎通ができます。そして英検3級程度の英語力は、洋書の多読をすればかなり身につくことを実感しました。

英語の力で開発途上国を救いたい

―洋書の読書経験が、国際支援への関心にどうつながっていったのでしょうか。

先進国から開発途上国への支援が継続できない原因の一つに、「現地で言葉が通じない」ことが挙げられます。世界共通語の英語ができれば、国力が上がる。私の洋書の多読による原体験を、開発途上国の子どもたちのために活かせないかと考えました。

調べていく中で、カンボジアは他の開発途上国と比べて英語教育を行っているものの、英語の先生や英語の絵本が不足していると知りました。そんな時に、海外研修を通して国際的な課題に触れる「JCI JAPAN グローバルユース国連大使」(日本青年会議所国際グループ  グローバルピース委員会主催)で8日間のカンボジア研修に行くことを知り、「絵本を届けたい」と応募しました。

毎朝校門に立ち絵本を100冊回収

―カンボジアに持っていく絵本はどうやって集めましたか?

通っている学校の生徒に協力を呼びかけました。中等部と高等部の全教室に英語の絵本の寄付を呼びかけるチラシを貼り、毎朝、学校の正門の前に立って絵本を回収。おかげで100冊の英語の絵本が集まりました。

―絵本を届けた際、どんな反応がありましたか?

先生たちはとても喜んでいました。子どもたちは初めて英語の絵本を見たのか、食い入るように見ていたことが印象的で、お辞儀のポーズをして感謝を伝えてくれました。

カンボジアの小学校で英語の絵本を配っているところ

カンボジアの絵本は、かつて行われた大量虐殺の影響で表紙が怖かったり、怖いお化けが出てきたりするものがあります。そのため、子どもたちにとって絵本が近しい存在ではないと感じます。しかし、英語の絵本を見つめる子どもたちの真剣な表情を見て、学ぶ意欲にあふれていると感じました。

貧富の差に驚き

―現地の人との交流で驚いたことはありますか?

貧富の差が激しいことが印象的でした。道端で物を売ってくる子どももいれば、ブランド物のバッグを持っている人もいることが驚きでした。

カンボジア人は集合時間になかなか来ないため、私たちの予定が狂うことが多かったです。グローバルユース国連大使の活動の一環としてカンボジア人と一緒にプレゼンを行ったのですが、日本人は徹夜をしてプレゼンを完成させようとするのに対して、カンボジア人は時間内にやればよいという考え方で連携がとれず、価値観の違いを感じました。

国連事務次長を表敬訪問

―活動報告のために国連本部を訪れ、国連事務次長を表敬訪問したとうかがいました。

国連本部では総会などの会議場の中に入りました。日本が座る席を見て、他国と意見交換をしてくれる方がいるからこそ、今の情勢が保たれていると実感し、感謝しようと思いました。

国連本部で、国連事務次長の中満泉さんと

国連事務次長の中満泉さんを表敬訪問しました。私の「今の若者に国際社会で必要な力は何か」という質問に、「パッションがある限り、あまりつらいとは思わない。恐れずに、新しいことに挑戦する勇気」と答えてくれました。

「国際平和に役立ちたい」

―今後はどんなことに取り組む予定ですか?

今後も英語の絵本を活用した活動を行い、国際平和に役立ちたいです。次は、開発途上国の小学校で、直接、英語の絵本を使用した授業をしたいと考えています。

―将来の目標や夢を教えてください。

国際弁護士を目指しています。日本や世界に貢献できる人物になりたいです。日本の英語教育も問題点が多くあると思うので、海外で得た知見を日本にも活かせればと考えています。