競泳女子個人メドレーの新星として、今年世界の舞台を経験した成田実生(東京・淑徳巣鴨2年)。負けず嫌いな性格は、競泳でも、勉強でも成田を成長させている。「苦手克服」をキーワードに、パリ五輪の決勝の舞台を目指す。(文・田坂友暁、写真・中村博之)

初の日本一に輝く

今年4月に行われた競泳の日本選手権。成田は女子個人メドレーの200mと400mで、東京五輪金メダリストの大橋悠依(イトマン東進)を抑えて、初の日本一に輝いた。

2023年シーズンは日本選手権2冠に続き、福岡で開催された7月の世界水泳選手権、そして10月に中国で行われたアジア競技大会と、初めてのことばかりだった。シニアの国際大会の代表入りをしたのも初めて。

4月に行われた日本選手権での成田

しかし、その舞台で思い通りの泳ぎができなかった。

世界水泳では400m個人メドレー8位、アジア大会では400m個人メドレーで銅メダルを獲得したものの、同じレースで自己ベストを更新して銀メダルを獲得した谷川亜華葉(近畿大学)の活躍には及ばなかったことが悔しかった。

「今シーズンを振り返ると、世界に比べると水泳の実力もそうですし、メンタル面でも自分はまだまだなんだな、ということを痛感しました」

「パリ五輪の決勝で泳ぎたい」

そんな今シーズンはずっと不安を抱えたままだったという。その原因は、わかっている。目標設定の考え方にあった。

世界水泳選手権で自分がどんな泳ぎをしたいのか。アジア競技大会で何色のメダルがほしいのか。今シーズン、日本代表に入れたまでは良かったが、その先の明確なビジョンがなかった。

そのため、代表に入ってからの練習がいまひとつかみ合わなかった。不安を拭えず、自分らしく諦めずに頑張りきることもできない。その不安定さが、自己ベストを出せずに今シーズンを終える結果として残ってしまった。

日本選手権で力強い泳ぎを見せた成田

「400m個人メドレーで一緒に泳いだ谷川さんは、金メダルを獲る、という目標を持ってやっていて、結果は銀メダルでしたけど自己ベストを更新していました。私はそこまで考えられていなかったので、もっと高くて、明確な目標を持たないといけない、と気づいたんです」

そして、設定した目標は「パリ五輪の決勝の舞台で泳ぎたい」だった。

「五輪に出たい、だけだったら、代表になって終わりです。でも、その先まで目標にしていたら、さらに練習も頑張れますし、良い結果にもつなげられるんじゃないかと思います」

勉強も全力、不明点は友達に質問

今シーズンは海外遠征も合宿も多く、学業との両立も苦労した。そんなとき、成田の助けになったのは学校の友人たちの存在だった。

「授業のノートを写真に撮って送ってもらったり、わからないところは質問して教えてもらったりしていました。本当に友達に助けられて勉強ができているな、ということを実感しました」

学校の友人に支えられていると話す成田(写真・椎木里咲)

好きな科目は英語。アジア競技大会では、ボランティアと英語で話し、ピンバッジを交換したという。「会話できたのがすごく楽しくて。もっと頑張って、海外の選手の人たちとももっと話したいと思いました」

反対に苦手な科目は日本史と古典。2年生になった最初のテストで点を取れなかったことが引き金だった。しかし、「今回受けたテストはうまくできたので、少しずつ苦手意識は克服できていると思います」とはにかみながら話す。

できない自分が「悔しい」

成田はどちらかというと、得意なことを伸ばすよりも、苦手を克服することに重きを置いている。

「得意なことだけじゃなくて、苦手なこともやらないといけないときってあると思うんです。そういうときにできないと、悔しい気持ちが出てくるので」

淑徳巣鴨高校では、毎朝3分間、古文単語や英単語の朝テストが行われる。そこで最初は全然点が取れなくて前向きになれなかったが、成田は諦めなかった。

「最初はなかなか単語などを覚えられなくて本当に嫌でした。でも、何が何でも100点を取ってやる、という気持ちになってからは、少しずつできるようになっていって……そこから苦手意識はなくなっていきました」

できない自分が悔しい。やれない自分が悔しい。学業の面でも競技の面でも、そんな負けず嫌いの思いが、成田をアスリートとして大きく成長させた根幹だ。絶対に諦めないという強い気持ちを持って課題に取り組んだり、テストを受けたりと、何事にも前向きに取り組む原動力になっている。

試合期間中はスマホを見ない

また、不安になったときの対処法も見つかった。それは、「やるべきことをやる」ことだ。

試合前の練習で、「これ以上泳ぐと疲れてレースで力が出せないかも」と思って消極的なウオーミングアップをしてしまうときがある。そうすると、決まって結果を出すことはできなかった。

いろいろと余計なことを考えるから、迷いが生まれ、不安が大きく広がっていく。だからこそ、やるべきことに集中するようにしていると成田は言う。

大会期間中に、スマートフォンを見ない、というのも、成田の不安払拭(ふっしょく)法のひとつだ。空いた時間ができるとスマートフォンを見てしまいやすいが、ライバルの状況やニュースなど、見ようと思っていなくても、自然と情報が入ってきてしまう。

「そういう情報が入ってこないようにするためにも本を読んでいます。本を読んでいれば気持ちが揺らぐようなこともありません。最近読んで面白かったのは、近藤史恵さんの『ホテルピーベリー』や、さくらもももこさんのエッセーです。」

同世代の頑張りに鼓舞されて

それでも不安な気持ちになったときには、同世代の選手たちの頑張りに目を向けると、気持ちが盛り上がってくると話す。

「今年1月に遠征に行ったとき、練習もきついし試合も続いていたし、本当にしんどくて心が折れてしまったんです。でもそんなときに、同じようにしんどいのに頑張っている同世代の選手たちの取り組みを聞いたり、どうやって頑張っているかを聞いたりしていたら、だんだん私ももっと頑張らなきゃ、って気持ちが沸いてきたんです」

だから「もし自分の取り組みに不安があったり、疲れて心が折れそうになってしまったりしたときには、ぜひ同級生の頑張りに注目してほしい」と話す。

「私も同級生の頑張りには、すごく刺激をもらっています。私も頑張って、パリ五輪の決勝の舞台で泳ぐ、という目標をかなえるために頑張るので、一緒に頑張りましょう!」

なりた・みお 2006年12月18日、東京都生まれ。葛飾区立常盤中卒。金町SC所属。生後8カ月から水泳を始め、小学生で全国大会に出場。中学進学後に頭角を現し、3年時に200m個人メドレーで全国中学大会を制する。高校1年生でジュニア日本代表入り、2年となった今年はシニア日本代表入りを果たし、アジア競技大会では400m個人メドレーで銅メダルを獲得した。