第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)郷土芸能部門の「和太鼓部門」で、最優秀賞である文部科学大臣賞を受賞した松蔭高校(愛知)和太鼓部。8月26日に東京・国立劇場で行われた優秀校東京公演にも参加し、一糸乱れぬパフォーマンスを披露して会場を熱気に包みこんだ。(文・椎木里咲)

曲ごとにストーリー性持たせ

同部が披露したのは「神楽太鼓組曲『祈り』」。愛知県尾張南西部に伝わる「神楽太鼓」と、地元に伝わる「町之切獅子舞」という、2つの伝統芸能を組み合わせて作られた曲だ。

副部長の加藤さくらさん(左)と部長の佐藤大将さん(右)(写真・椎木里咲)

楽曲は3曲構成で、全体を通して「ストーリー性を持たせることを意識した」(部長の佐藤大将(だいすけ)さん・3年)という。1曲目では「飢饉(ききん)や疫病で無念の死を遂げた人々の苦しみ」を、2曲目では獅子とともに「飢饉や疫病で苦しんだ人を忘れず、これからの幸せを祈願する祭り」の様子を、3曲目では「かつての人々の思いを受け継いで、高校生である部員たちがこれからどう生きていくのかという決意」を表現した。

    掛け声出さず息そろえて

和太鼓は大きな掛け声を出しながらパフォーマンスすることも多いが、佐藤さんは「あえて掛け声を出さずにパフォーマンスをした」と話す。神楽は神様にささげることを目的とした郷土芸能のため、大きな掛け声を出すよりも「息をそろえる」ことが大切とされているのだ。

「バチを回しながら、ある意味黙々と真剣に太鼓と向き合うのは『自分との戦い』です。そんな姿をお客さんに見せたいし、見届けてほしい」(佐藤さん)

厳しい言葉で気持ちを鼓舞

佐藤さんと副部長の加藤さくらさん(3年)は、「部員のモチベーションにばらつきがあって、技術も向上しない停滞期があった」と振り返る。佐藤さんは部長として、時には「このままだと全国で勝負にならない」「何を表現したいのか伝わらない」と厳しい言葉も投げかけた。

優秀校東京公演にて。一糸乱れぬバチ回しで会場を熱気に包みこんだ(写真・主催者提供)

「まずは危機感を持つために、部員に『このままだとやばいんじゃない?』と声を掛けて。危機感を持ったら部員みんなで話し合って、大会に向けて気持ちを作っていきました」(佐藤さん)

「うまい人を観察」して上達

優秀校東京公演では迫力ある和太鼓の音と一糸乱れぬバチ回しを披露し、会場から割れんばかりの拍手を浴びた同校。佐藤さんは「伝統芸能は『先輩』がたくさんいます。ひたすら練習するよりも、うまい人を観察することが上達のコツです」と笑顔で語った。

松蔭高校和太鼓部

1989年に「神楽太鼓同好会」として発足。部員87人(3年生31人、2年生23人、1年生33人)。これまで全国高校総合文化祭に11回、優秀校東京公演に11回出場している。