埼玉県・戸田市議会には、聴覚障がいを持ちながら活躍する議員の佐藤太信さんがいます。聴覚障がい者の母を持つ私は、障がい者の政治参加について調べているときに佐藤さんの活躍を知りました。佐藤さんに「議員を志したきっかけ」などについて伺いました。(高校生記者・はーちゃん=3年)

障がい者の支えになりたい一心で

佐藤さんは、2歳のときに高熱が原因で聴力を失いました。お母さんの「人の倍、頑張りなさい」という言葉で、何事にも全力で頑張る学生時代を過ごしたそうです。

とても気さくで優しい人柄の佐藤さん。理想の社会実現に向けて一緒にガッツポーズ

「障がいのある人たちの支えになりたい」という思いから大学院に進学。難関の臨床心理士の資格を取得し、聴覚障がい者として全国2例目の快挙を成し遂げました。

ろう学校等でスクールカウンセラーとして子どもたちの悩みをサポート。その後、米カリフォルニア州に留学し、日本のバリアフリーの遅れや障がいに対する考え方の違いを実感したといいます。

バリアフリーの促進に尽力

市議会議員に立候補したきっかけは、2014年に手話言語法の制定を国に求める請願活動をしたことでした。これは手話を「言語」として認め、聴覚障がい者が手話でコミュニケーションができる環境づくりや理解の啓発を進めていくための法です。

点字付きで全ての人が読める佐藤さんの名刺

佐藤さんは、無事請願が採択されたことで「実際に政治で社会を変えていけるんだ」と実感し、市議会に挑戦することになります。戸田市議会議員となったあとは、関係者団体や市職員と協議を重ね、2020年、戸田市に「手話言語戸田市条例」を制定させました。

現在も、当事者の気持ちに寄り添い、政治の場で障がい者のバリアフリーの促進に尽力しています。

障がいをマイナスに捉えない姿に感銘

佐藤さんが選挙の街頭演説をしていた時に、市民の人々が手話で「頑張ってね」と応援してくれたことがあるそうです。その時に「自分のことを見てくれる人がいる、僕も頑張ろう」と思えた瞬間だったと話していました。

これまでに学校や仕事、日常で大変だったこともあった中で、「自分にはできない」と決して諦めなかった佐藤さんはかっこいいと思いました。さまざまな経験を経て、市民の気持ちを汲み取って議員としての使命を全うしている佐藤さんの姿に感銘を受けました。そして、議会に障がいのある議員がいることはとても意味があると実感しました。

健常者にとっては当たり前でも、人によっては不便なこともあります。佐藤さんは、見落とされがちな不便さにも気づき、マイノリティーの当事者の声を政策に反映し続けています。

いろいろな視点を取り入れたバリアフリー設計は、誰もが暮らしやすいまちづくりを進める上でとても大切だと教えていただきました。障がい者も健常者も関係なく、みんなでバリアフリーの充実について考えていける社会にしていきたいと思います!