「夢をとことん書いてやろう」高校生作家・青羽悠君に聞いた作品への思いと学校生活

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小説すばる新人賞受賞作『星に願いを、そして手を。』を刊行した青羽悠君

 愛知県の高校2年生、青羽悠君が書いた『星に願いを、そして手を。』が2月24日に単行本として発売された。この小説で、第29回小説すばる新人賞(集英社)を史上最年少で受賞した青羽君に、作品への思いと学校での素顔について聞いた。(文・写真 山口佳子)

学校でのあだ名が「先生」に

――新人賞の受賞、おめでとうございます。今はどんな気持ちですか?

 多くの人に読んでもらえる小説を書きたいと思っていたので、もちろんすごくうれしいのですが、そのうれしさよりも不思議でフワフワとした感じの方が強いです。賞をとった自分を、少し離れた位置からボンヤリ眺めているみたいな気もします。

――賞を取ったことで、周囲からはどのような反応がありましたか?

 学校でのあだ名が、「先生」になりました(笑)。イジれる要素が増えて面白いと思っている友人が多いようです。「おめでとう、本を予約したよ」と言ってくれる友人もいて、素直にうれしいですね。

――賞金の200万円を、学園祭の打ち上げの焼き肉に使おうと友人が盛り上がったという話も聞きました。

 最近は、「僕が1冊本を買ったら、先生にはいくら印税が入るんですか」とネタにする友人もいます(笑)。実際は、僕には1円もお金は下りてきていなくて、急に羽振りがよくなったとか、豪遊しているなんてことは全然ありません。貯金をしてくれた母から「良かったね。このお金で大学行けるじゃない」と明るく言われて、「オイオイ学費を出す気がなかったんかい」と突っ込んでしまいました。

受賞作が初めての作品 毎晩1時間コツコツ書いた

――受賞時の選評には、「小説として欠点が多すぎる」など、厳しい指摘も多かったようですが。

 受賞したうれしさとともに、厳しい選評が一気に押し寄せてきて、正直、普通にへこみました。でも、一人称が統一されていなかったり、無駄に長すぎる部分があったりするなど、確かに直すところはたくさんありました。今回の単行本化にあたっては、編集担当の方にみっちりしぼられながら、かなりがんばって校正作業を行いました。

――受賞作が初めて書いた小説だそうですね。

 高校1年生の4月から小説を書き始め、翌年の2月に書き上げました。以前から思いついたことをメモ帳にちょっと書くというようなことはしていたのですが、小説として書くのは挑戦でした。毎年、新人賞にはたくさんの人が応募しているのですが、「みんなこんなに長いものをかけるなんてすごいな」と思っていました。

――毎日忙しい高校生活だと思うのですが、いつ執筆していたのですか?

 夜、勉強が終わった後、午後11時か11時半から、毎日1時間程度コツコツと書き続けました。ノルマというほどではないけれど、今日は疲れたから寝てしまおうと思ったとしても、2日以上はあけないようにしようと決めていました。学校が休みの土日に5、6時間まとめて書くという方法もあったかもしれないけれど、僕はコツコツ積み重ねていく方が向いているなと思ったんです。何度かくじけそうになることもあったけれど、とにかく最後まで書き通すことが第一の目標でした。

著書を手にした青羽君

「何かになりたい」ずっと悩んでいた

――なぜ、小説を書こうと思ったのですか?

 僕にはずっと、「何かになりたい」という夢がありました。でも、音楽家になるには楽器ができないし、研究者になるにはいろいろと勉強しなくてはいけない。それに比べて小説を書くことは、パソコンやノートやペンがあればできることでした。自分自身にできることがあまりなかったからこそ、小説を書き始めたのだと思います。それと、中学時代にいろいろな本を読んだことも大きかったと思います。特に伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」を読んだ時の衝撃は今も忘れません。文章だけで映像や音を見事に表現していて、キャッチーなのに機知に富んでいる。いろいろな伏線が思わぬところに着地して、現実世界では決して正しいことではないけれど、主人公を力強く肯定している。「小説ってこんなことができるんだ」と純粋に驚きました。

――受賞作のテーマも、まさに「夢」ですね。

 「何かになりたい」という漠然とした夢に、僕自身が悩んでいました。だったら、「夢をとことん書いてやろう」と。そして、「もし夢がかなわなくても大丈夫だ」と肯定できるものを書こうと思いました。自分自身の未来への保険みたいなつもりで書いたといってもいいかもしれません。小説の中には、夢を探す僕たちのような高校生世代、夢をかなえたり諦めたりした24~25歳くらいの世代、夢に破れた壮年世代 の3世代を登場させています。自分よりも年齢の高い世代の人たちを描いたら説得力に欠けるかなという迷いもありましたが、「夢を全部書いてやろう」という思いが強かったので、どうしても3世代を描く必要がありました。この小説を読んで、僕のように夢に悩んでいる人が勇気を持って前を向いてくれたらうれしいです。

――今回の受賞で、青羽君の夢はかないましたか?

 はい。「世に出る小説を書きたい」という夢はかないました。夢がかなうということは、夢がなくなることでもあるんだなぁと感じています。もちろんこれからも書きたいという思いはあって、今後は、直木賞などプロのための大きな賞を目指すという考えもあるのでしょうけれど、職業として書き続けていこうという覚悟はまだできないでいます。

幼いころから宇宙が大好き 

――小説の登場人物たちは宇宙への憧れのようなものでつながっていますが、青葉君自身も宇宙に興味があるのですか。

 幼いころから小説に描いたような地域の科学館や図書館に通っていて、宇宙は大好きでした。小・中学生のころは科学者になりたいと思っていたので、あの頃の僕が高校生になって小説を書いている僕を見たら、「は?」と言うと思います。今回の小説で「夢」を描こうと思った時、宇宙への気持ちを題材にしようと自然に思いました。

――宇宙が好きだということは、学校では理系コースを選択しているのですか?

 現在は理系クラスにいるのですが、3年生になったら文系コースに変更しようと思っています。理系クラスにはめちゃくちゃ優秀な人がいるし、僕自身の興味も文系科目にあるのではないかと気づいたんです。僕は今も宇宙が好きですが、研究者にはならないだろうなと思っています。でも、それで絶望しているわけではありません。小説にも、幼いころの夢がかなわずに違う仕事をしている自分を肯定する登場人物を描いたのですが、今の僕も同じような気持ちです。

ジャグリングを披露する青羽君

ジャグリング部の経験が小説に生きた

――学校ではどんな生徒ですか?

 クラスでは、しょーもないことを言って盛り上げるタイプです。でも、どこか常に自分を客観的に見ている。「自分はこうしたい!」と主観的に熱くなれる人がうらやましいと思いながら、それを演じる時もあったりして。自分がどう見られているかを常に意識していて、そんな自分自身を「イタイ」と思ったりもします。

――部活動は?

 中学生のころからジャグリング部に所属していて、今も毎日3時間くらい練習しています。競技人口が少ないため大学生や大人と一緒に練習する機会も多く、こうした経験が、3世代を描いた今回の小説にも生かされているかもしれません。そろそろ大きな大会があるので、がんばらなくてはと思っています。

――得意な科目は?

 数学。文系の数学は易しいので。現代文は苦手ですね。成績はぼちぼちかな。

受験勉強と平行して小説を書きたい「将来の自分のために」

――そろそろ3年生。大学受験のため、小説の執筆は一時休止ですか?

 確かに、今はもう受験にかなり重きをおいています。だけど小説も、少しずつ書き続けています。確かに休むという選択肢もあったのかもしれないですが、正直、怖いんですよね。今回の受賞作は偶然できたものかもしれない。小説を書く技術もまだまだ未熟だし、物語の構成ももっと勉強したい。そんな僕が今書くのをやめてしまったら…という不安があります。それに、現役高校生だというアドバンテージもあるのかなと思っています。今の僕じゃないと書けないものがあって、今書かないと、きっと後悔すると思うんです。将来の自分のために書いていると言ってもいいかな。もちろん、大学受験はすごく大変だけど、先輩たちも1時間くらいはゲームをするよなんて言うので、だったら、そのゲームをする1時間の代わりに小説を書こうかなと思っています。

 *青羽君の授賞式でのスピーチはこちらから。

「星に願いを、そして手を。」
プラネタリウムのある町立科学館で一緒に過ごしてきた幼なじみの男女4人が登場する青春小説。宇宙への好奇心でつながっていた4人だが、高校卒業後にそれぞれの道に進んでいた。20代半ばになった夏、「館長の死」をきっかけに4人が再会してからの出来事が、高校時代の回想も交えて描かれる。(集英社、税込1728円)*詳細はこちらから。

(高校生新聞オンライン2017年2月24日更新)

【文芸】

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