4月に発売されたアルバム「SHINE north」を持つ臼澤さん(盛岡市、久保陽子撮影)

真っすぐ届く歌を

岩手県大槌町出身の高校2年生、臼澤みさきさんは、東北の民謡独特の節回しと、ポップなメロディーを融合させた独自の「里唄」を歌い上げる。4月にアルバムをリリースし、7月からは初のライブツアーで東北6県を巡る。「歌を真っすぐ、聴く人に届けたい」と語る「東北の歌姫」だ。
(久保陽子)

最初は「蚊の鳴くような声」

透明感と力強さを併せ持った声を持つ臼澤さん。歌の特徴は、民謡をベースとした独特の節回しだ。民謡を始めたのは、岩手県大槌町で暮らしていた小学3年生の時。近所の人に歌のけいこに誘われたことがきっかけだった。

 生の民謡に触れたのはその時が初めて。節回しに驚き、圧倒されつつも「こういう音楽があるんだ!」と、弟とけいこに参加することにした。民謡の発声は見よう見まねで、ひたすら反復練習。最初は「まさに蚊の鳴くような声」だったが、少しずつ声が出るようになるとともに人前で歌うことにも慣れた。やがて民謡コンテストでグランプリを受賞するまでになった。

震災の慰問を機にデビュー

 2011年、小学6年生の時に東日本大震災で被災。大槌町は津波で大きな被害を受けた。民謡教室のボランティアで避難所を訪れ、歌う姿が音楽事務所の目にとまり、12年、中学2年生の夏に歌手としてCDデビュー。東北を中心に各地のステージやラジオ番組に出演するようになる。

 現在は親元を離れて盛岡市内の高校に通っており、午前中は学校、午後からはライブというハードな日も。「かえって勉強に集中でき、メリハリのある時間の使い方ができるようになった」という。

伝統を感じられる幸せ

デビューから約3年、プロとしての自覚も芽生えてきた。「民謡の魅力は、一つ一つの曲の背景の違いにある」と言い、「昔の人々が作った曲の歴史と伝統を感じながら歌えることが幸せです」と笑みをこぼす。

 今年4月には東北6県の夏祭りをイメージした楽曲を含むアルバム「SHINE north」をリリース。等身大の自分を表現することに挑戦した。中でも、大人になっていく中での喜びや葛藤を歌った収録曲「鳥になりたい」は、今の自分の姿や心に重なるという。「親元を離れて高校に入り、ときどき中学校の仲間に会うのですが、みんな大人に近づいていると感じる瞬間があります。同じように自分も成長しているんだな、という気持ちが歌詞とリンクするんです」

故郷思い歌う

7月には、東北で初のツアーが始まる。「聴いてくれる人の心に、真っすぐ届く歌を歌いたい。観客の皆さんから伝わってくるものを感じながら、自分だけの『里唄』を追求していきたい」と語る。

 大好きな故郷・大槌を思い浮かべながら、今日も彼女は歌い続ける。

うすざわ・みさき
1998年10月8日生まれ。岩手県大槌町出身。小学3年生で民謡を習い始め、多くのコンテストでグランプリを獲得。日本レコード大賞新人賞受賞、日本ゴールドディスク大賞「ベスト演歌/歌謡曲ニューアーティスト賞」など受賞。7月24日から東北ツアー「SHINE north TOUR TOHOKU 2015 舞」が始まる。8月にはアルバム収録曲「鳥になりたいfeat.江崎とし子」をシングル発売する予定だ。