審査委員長

鎌倉女子大学 家政学部長
吉田 啓子 教授
 

最優秀賞  三重県立相可高等学校
中村 天さん(2年)

「宮川が大好きなおじさん」へ 「地元を感じる弁当」

朝の眩しい光の中で鮎釣りをするお父さん、タオルを肩に汗を拭きながらトマトやお米を収穫するおばあさん、そして将来の夢に向けて勉学に励む本人、宮川の清流と緑豊かな自然に囲まれて繰り広げられる夏の情景が、お弁当箱いっぱいに表現されています。鮎の塩焼きは新鮮で今にも飛び出しそうです。鮎の背景に、ハンバーグ、トマト、ブロッコリー、ニンジン、若菜ご飯と彩りも豊かで水面に見え隠れする岩や水草などにも見えてきます。「おじさん」に向けて書かれた手紙は温かく、真心が伝わります。コロナ禍で沈みがちな気持ちが、これらの情景を思い描くといっぺんに吹き飛んで晴れ渡るような気がします。なかなか帰省できないおじさんも、このお弁当を見たらきっと帰りたくなるに違いありません。

 

審査委員の皆様

 
 
 

特別審査委員

阿部 了 (写真家)

ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。NHK「サラメシ」にてお弁当ハンターとして出演中

特別審査員賞  京都府立綾部高等学校
山口 未来也さん(2年)

「家族」へ 「いつもありがとう弁当」

お弁当の思い出は、日本人なら誰しもが何かしらあると思う。なければそれもエピソードだ。この山口君の思い出弁当、一番はマカロニを口にくわえて「ピーピー」のエピソードだ。笛のような音を鳴らすと、父と母と姉もおもしろがって家族みんなで鳴らしたそうだ。なんて微笑ましい家族なんだ。琵琶湖を見渡す山の上でのおべんとうの時間。情景が目に浮かんできて、その時を共有しているような気持ちになる。時代が変わってもみんなが大好きな定番メニューだが、俵のおにぎりや、おかずの詰め方に、優しさを感じるのである。それは山口家の温かい日常が、おのずと詰まっているからであろう。いい弁当です。また時間を作って家族で「ピーピー」出かけてください。そして自身が家族を持ったら、先頭になって「ピーピー」してくださいね。私も「ピーピー」鳴るのか試したくなりました。

 

 
 
 
 

特別審査委員

阿部 直美(ライター)

ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。近著「おべんとうの時間がきらいだった」

 

特別審査員賞 京都府立亀岡高等学校
奥 祐貴さん(1年)

「中学の部活の後輩」へ 「部活お疲れ様!弁当」

誰のためにお弁当を作ろうか。最初に考えるのは、そこですよね。奥祐貴君は、中学時代の部活の後輩のために作りました。あれ?と思ったのは、奥君は高校1年生ですから、新しい学校生活が始まって友達も環境も一変したはず。なぜ中学時代の後輩に?と意外な気がしたのです。文章を読んで、はっとさせられました。6人制のバレーボールなのに、自分たちの学年の部員は5人。1つ下の後輩がいてくれたから、大会に出場して頑張れた、とのこと。その後輩には同学年の仲間がおらず、今年度で廃部も決定。奥君が、卒業後もずっと後輩を気にかけてきた気持ちが、痛いほど伝わってきました。密かにエールを送っていたのですね。ハンバーグや卵焼きを入れたお弁当は、あの頃一緒に食べた思い出とも重なるのかもしれません。「お弁当」が、中学時代の宝物のような時間を呼び戻す役割にもなっていて、素敵だなあと思いました。

 

特別審査委員の阿部了さん・阿部直美さん

 
 
 

審査委員

鎌倉女子大学 家政学部
髙橋 ひとみ 教授
 

優秀賞 東京都・目黒日本大学高等学校
下川 己撞さん(1年)

「宝くじを買う母」へ  「絶対当たる!開運弁当」

盛りつけ、テーブルコーディネートにも工夫を凝らした目を引く作品です。
 この弁当は、食べてもらう人に想いをどのように伝えるか、すなわちお母さんに元気になってもらうよう、宝くじを当てるというシチュエーションが明確で、その想いがお弁当にうまく表現されている点が優れていると思います。
 「絶対に宝ぐじが当たる」と表現するほど、小判の卵焼きが目を引きます。運気を上げる食材を調べ、上手に料理を仕上げたと思います。また神社の箸、旗を準備し、手をかけたことが伝わってきます。このお弁当をプレゼントされたお母さんには、喜ばせてあげたいという気持ちが伝わったと思います。そして宝くじが当たればさらに嬉しいことでしょう。夢と愛があるお弁当で、すてきだと思います。

優秀賞 群馬県立高崎高等学校
小松 学叶さん(1年)

「私」へ  「勝利の腸活弁当」

とてもユニークなお弁当で、審査員の評価が高い作品でした。タイトルは「勝利の腸活」と注目が集まるタイトルで、そのタイトルの理由はお弁当に込めた想いに軽快な文章で書かれており、「私はどうやら母親似のようだ。」で始まる文章は一気に好奇心が掻き立てられました。さらにお父さんと友達のような関係で排便の状態を競い合いコミュニケーションをとっている様子を読むと、自然に笑みがこぼれ、すてきな家族だなと感じました。
 お弁当の内容も食物繊維を増やしたいと、十六穀米ご飯や海藻、根菜類を使った内容になっており、その食材の組み合わせや、調理法に小さな工夫を感じました。たとえば塩こんぶやひじきを使うとどうしても黒色の食材が増えてしまいます。そこで枝豆で緑色、卵焼きで黄色、カニカマなどで赤色を使い、楽しい盛りつけに仕上げられています。しっかり食事をして、お父さんに勝利される日々を期待しています。

 
 
 
 

審査委員

鎌倉女子大学 家政学部
山口 真由 講師

 

優秀賞 奈良県・奈良女子大学附属中等教育学校
池浦 歩さん(中高一貫4年)

「志賀直哉先生」へ  「奈良のうまいもん弁当」

この度は優秀賞受賞、おめでとうございます。
 文豪、志賀直哉先生といえば『奈良にうまいもんなし』。奈良にゆかりがある人にとってざわつく文言です。しかしながら池浦さんの文章からは、奈良の食べ物はこんなにもおいしいのに!という熱い思いを感じましたし、悪い噂を一瞬で払拭するようなお弁当は、おいしそうで心躍ります。
 おそらく奈良で食事をした方は、「噂とは違って奈良は食べ物おいしいね!」となるはずです。ギャップ、意外性は人の心に深く刺さります。文豪もそのことをあえて狙ったのではないでしょうか。志賀直哉先生、調べてみると奈良に10年以上、住んでいたとのこと。小説家はどこに住んでも問題ない職業ですが、自らの意思で奈良に長く滞在したということは、奈良をよほど気に入っていらしたのでしょう。文豪と池浦さんの奈良に対する強い愛を今回のお弁当を通じて感じることができました。

優秀賞 静岡県・浜松学院高等学校
山内 杏介さん(1年)

「姉」へ  「めでたい!弁当」

この度は優秀賞受賞、おめでとうございます。
 カラフルな鯛が2匹跳ねている、とても華やかでタイトル通りのめでたさが目を引くお弁当です。2つ並んだお弁当、特に文章には書いてありませんでしたが、自分とお姉さんとで食べるというより、お姉さんと結婚相手の方と2人で食べてね、というお弁当かと推察しました。よく見るとたいへん凝っていて、ずいぶんと時間がかかったのではないかと思います。メニューを考え、材料を調達し、作って、美しく詰める。その間、いつもより長くお姉さんのことを考えていたはずです。昔は喧嘩ばかりしていたけど、と過去を振り返り、我々も大人になった、と現在、そして姉には幸せになってほしいと未来を願う。お姉さんの好物をたくさん見映え良く詰めて、喜こんでもらいたいという気持ち、そしてお相手の方と一緒に食べてもらいたいという配慮、お弁当を通じてお姉さんとお相手を祝う気持ちが強く伝わってきました。

 

審査風景

今年もたくさんのご応募、誠にありがとうございました。
来年も開催を予定しております。素敵なお弁当に出会えることを楽しみにしております。


鎌倉女子大学のホームページでは表彰式について掲載しております。
*表彰式の模様はこちらからご覧いただけます。