どこまでも青空が広がる見事な秋晴れの1日となった11月6日(日)、鎌倉女子大学の学園祭と同時に開催された「第11回お弁当甲子園」の表彰式。当日は、全国362校9,651作品の中から選ばれた受賞者が、北は北海道、南は沖縄まで全国から集まり、家族や先生とともに受賞の喜びを分かち合った。
地元の清流で育った鮎をメインにしたお弁当が9,651作品の頂点に
コロナ禍で中止となってきた表彰式を、3年ぶりに実施した第11回お弁当甲子園。優秀賞を2名から4名に、入選を5名から10名に増やした結果、にぎやかな式当日を迎えた。
鎌倉女子大学・福井一光学長
開式にあたり、主催者挨拶に立った鎌倉女子大学の福井一光学長は「北海道から沖縄まで全国から多くの応募を寄せてくださり、ありがとうございます。お弁当は人の想いや思い出が詰まっています。私がヨーロッパに滞在していた時にこんな思い出があります。小学生の息子には、いつも甘い卵焼きの入ったお弁当を持たせていました。しかし、ほかの児童はりんごなどフルーツだけだったそうです。まわりのみんなが欲しがるほど、息子の卵焼きは評判になりました。ご家族をはじめ、今日はみなさんにとって大事な方たちが後ろに座っていらっしゃいますが、毎日お弁当を作ってくれるその想いを、みなさんもお弁当を作ってみて感じられたのではないでしょうか」と語りかけました。
家政学部長・吉田啓子教授
家政学部長・吉田啓子教授も審査委員長として挨拶をした。
「みなさんは1万人弱の中から選ばれた方たちですが、どうして選ばれたのか不思議に思っているのではないでしょうか。選考は大変でしたが、表現力があり、小さなお弁当箱の中がイキイキと輝いている作品が審査の対象となりました。それぞれに良さがあり、審査に迷いました。コンテストで賞をもらったことは自信になりますし、これからの人生でもいろいろこだわってほしいと思います」と受賞者にエールを贈った。
表彰状授与で最初に名前を呼ばれたのは、最優秀賞の中村天さん(三重・相可高校2年)だ。緊張した面持ちながら、福井学長から表彰状をしっかり受け取った。その後も一人ひとり名前が呼ばれ、表彰状が手渡された。拍手し、我が子の姿を写真におさめる保護者の姿からも喜びと誇らしさがにじむ。
最優秀賞・中村 天さん
最優秀賞受賞者・中村さんの作品は、帰省できないおじさんのために作ったお弁当で、地元・三重を流れる宮川の清流で育まれた鮎の塩焼きや、名産品の柚ドレッシングで調味した地産野菜のサラダなど色とりどり。
「最優秀賞を受賞できてうれしいです。地元の食材を生かしたお弁当で、その魅力がみなさんに伝わればいいと思いました。私は高校で調理と食物について勉強しているので、これからも精進していきたいです」という今後の意気込みに、会場から大きな拍手が起こった。
食べる人への思いを個性的に表現できたお弁当が受賞
左:髙橋ひとみ教授/右:山口真由講師
審査員講評では、はじめに高橋ひとみ教授(家政保健学科)が講評。
「想いに優劣はありませんが、想いを料理でどう形にしているのか、どう盛り付けて表現しているのかを審査しました。優秀な成績をおさめたみなさんのお弁当を見ると、どれも独自性、個性が出ています。その想いは食べる人に伝わるのではないでしょうか」と称賛した後、「みなさんの机に『大船軒』のお弁当(※高橋ゼミとのコラボ弁当)がのっています。お弁当には『食べてもらう対象が1人』という生活の中のものと、商品としてたくさんの人に食べてもらうものがあり、もっと食について知りたいと思った場合、職業にもつながります」と、一過性で終わらない料理の将来性についてもふれた。
山口真由講師(管理栄養学科)は、「みなさんが上位に選ばれたということは、作品に込められたエネルギーが感じられた結果だと思います。甲子園といっても、野球と違って毎日練習しなくてもいいですし、また来年も応募をお待ちしています」と話した。
特別審査委員・阿部 直美 氏
特別審査員は、NHK「サラメシ」に出演するお弁当ハンターこと写真家・阿部了氏と、ライターの阿部直美氏の夫妻だ。直美氏は、「みなさんの家庭の中をのぞかせてもらった気がします。家族や大切にしているものや思い出が、小さなお弁当箱の写真と短い文章に込められていました」と講評した。
上:特別審査委員 阿部 了 氏/左:特別審査委員賞 山口 未来也 さん/右:優秀賞 池浦 歩 さん
最後に、阿部了氏が高校生全員にインタビューを行った。お弁当のこと、家族のことなど、了氏からの様々な質問に受賞者が答えていく。受賞者たちはみな、言葉を選びながらも、素直な気持ちを発言。それぞれが作品に取り組んだ場景や想いを強く感じさせる時間となった。
今年度は、家族を応援するためのお弁当以外にも、後輩や先輩、地元に由来する文豪、お世話になった社会人などを対象に、色とりどりのお弁当が集まった大会だった。多くは「学校の課題」で応募したものだったが、食べてもらいたい人への想いが、それぞれの心のうちに真に宿っていたことがうかがわれるお弁当ばかりだった。
料理が、食べてくれる人の健康や幸せを願ってつくられるものだということを実感した経験は、参加した高校生たちを少し大人に近づけたに違いない。
第11回お弁当甲子園入賞者
- 【最優秀賞】
- 中村 天(三重県立相可高等学校2年)
- 【特別審査員賞】
- 山口 未来也(京都府立綾部高等学校2年)
- 奥 祐貴(京都府立亀岡高等学校1年)
- 【優秀賞】
- 下川 己撞(東京都・目黒日本大学高等学校1年)
- 小松 学叶(群馬県立高崎高等学校1年)
池浦 歩(奈良県・奈良女子大学附属中等教育学校4年)
山内 杏介(静岡県・浜松学院高等学校1年) - 【入選】
- 栗田 紗希(東京都・目黒日本大学高等学校2年)
- 林 海音(大阪府・大阪教育大学附属高等学校 平野校舎2年)
- 木村 翔哉(大阪府・大阪教育大学附属高等学校 平野校舎2年)
安座間 理音(沖縄県・昭和薬科大学附属高等学校2年) - 塩谷 神温(群馬県立沼田高等学校1年)
小関 愛心(山形県・日本大学山形高等学校2年)
鈴木 日優(山形県・日本大学山形高等学校2年)
橋本 京花(山形県・日本大学山形高等学校2年)
黒田 想乃(愛媛県立松山北高等学校2年)
酒井 爽晴(北海道・立命館慶祥高等学校2年) - 【佳作】
- 南保 一葉(東京都・目黒日本大学高等学校2年)
松井 涼馬(富山県・高岡龍谷高等学校3年)
池上 陽菜(神奈川県・カリタス女子高等学校1年)
渡部 凜(福島県立会津工業高等学校3年)
小林 亜美(山梨県立上野原高等学校1年)
牧野 瑠香(山梨県立上野原高等学校1年)
鈴木 拓翔(千葉県・東京学館船橋高等学校1年) - 中川 真奈美(岡山県・倉敷翠松高等学校1年)
- 梁本 真優(東京都・かえつ有明高等学校2年)
- 堀田 優月(愛知県立岩津高等学校2年)
- 佐藤 そよ(福島県立福島西高等学校1年)
- 竹田 彩乃(大阪府立清水谷高等学校2年)
- 安川 胡桃美(東京都・三輪田学園高等学校2年)
- 田川 幸絵(東京都立目黒高等学校3年)
- 渡部 文花(京都府立綾部高等学校2年)
- 【学校賞】
- 愛知県立春日井高等学校
東京都・目黒日本大学高等学校 - 大阪府立清水谷高等学校
- 【鎌倉女子大学賞】
- 神奈川県・湘南学院高等学校
- 群馬県立高崎高等学校
- 山形県・日本大学山形高等学校
*鎌倉女子大学のホームページでは表彰式について掲載しております。
*受賞作品はこちらからご確認いただけます。