国際協力特別賞

小さな子どもたちの笑顔のために

学校法人創価学園 関西創価高等学校 2年 吉瀬 茉城

「この服、どうする?」

世界中を巻き込んでいる新型コロナウイルスの影響で、家にいる時間が増えて、日本ではたくさんの不用品やゴミが出たとニュースで流れていた。我が家でも、普段は毎日外に出て忙しくしている母がずっと家にいて、長年手を付けずにいた物置の片付けをせっせとしていた。

私は今、学校で、地球規模の課題に対し世界市民として何ができるのかということを学んでいる。国連が掲げるSDGs についても、推進のための具体的な関わり方を考察し、お互いの意見を発表しクラスメートたちとディスカッションしている。そのようにして知った様々な問題の中でも特に、世界で5歳の誕生日を迎えることなく亡くなる子どもの数が年間520 万人、約6秒に1人という事実に胸がとても痛くなる。その大半の子どもたちは安全な水の不足、安価に予防、治療できるはずの病気が原因で命を落としてしまうのだ。人の命の重さや尊さに違いなどあるはずがないのに、生を受けた環境によって差が生まれてしまうという悲しい現実。その原因になっている貧困や地域格差をなくすために、今の自分に何かできないのかと調べるほど、その歴史や問題の根深さを知り、自分の微力さに歯がゆい思いを抱いていた。

そんなある日、片付けで出てきたたくさんの服。母が「この服どうする?」と聞いてきたので、深く考えずに「どうするって、もう着てないのは捨てるんやろ?」と私。すぐにサイズアウトしてほとんど袖を通さなかったようなきれいなたくさんの服を前に、母が「捨てるなら『古着deワクチン』に送ろう」と言い出した。

「古着deワクチン」とは、古着回収キットを購入して、開発途上国へ送り、古着の再利用だけでなく、現地での雇用創出、さらに開発途上国の子どもたちにポリオワクチンが届けられるというものだ。また日本国内においても、専用回収キットの製造や発送の仕事で、障がい者の方の雇用も生んでいるそうだ。

コロナ禍でゴミが増えたとあったが、衣服がゴミとして廃棄された場合、再資源化されるのは5%ほどで、そのほかはそのまま焼却埋め立て処分される。その量は年間で約48 万トンになるそうだ。毎日大型トラック約130 台分がそうして処理されている。この大量の衣服の処理によって、環境負荷が生じていている。それを解決すべく、SDGs でも推進されるサステナブルファッションというものが最近注目されるようになった。アパレル衣服の生産から廃棄までの一連のプロセスにおいて、持続可能であることを目指す取り組みだ。最近ではリサイクル素材を使用するなどの工夫や、地球環境や労働環境など、包括的にサステナブルであることを目指した取り組みをしている。

今回「古着deワクチン」のことをいろいろ調べて、自分でも人の命を救う役に少しでも立てるんだという希望が見えた。だが開発途上国への寄付や支援が本当にその国の未来のためになるの か、様々な角度から考えるといろんな意見があると思う。古着を送ることも、実際は現地で必要のないものが送られて来て、迷惑になっていないのか、これは社会貢献をしたいというだけの自己満足ではないのか、そんなことも考える。けれど何もしないでただ自分は安全なところから、 何も出来ないとあきらめるのはもうやめようと思う。

私は一歩でも行動を起こす人でありたい。なによりこのコロナ禍の一年、私はたくさんの人に支えられていることを実感した。私はこの感謝を何かの行動で表したい。

早速届いた大きな回収袋に、丁寧に服を畳んで入れる。これで小さな命が少しでも救われるんだ、と祈るような気持ちでお気に入りだった服を入れる。「気に入ってくれたら嬉しいな」と、遠く離れた国の小さな子どもたちの笑顔を思い浮かべながら。