優秀賞

小さなアクション

函館ラ・サール学園 3年 岩本 勝太郎

「クラスター発生」「全員PCR検査」「濃厚接触者隔離」今年七月、僕の住む寮は大変なことになった。しかし僕は何の役にも立たず、陰性の結果後すぐに帰省した。九州の家に帰り、二週間の自主隔離後家の前の海で毎日釣り三昧の日々。両親は忙しく働いている。ここでも役立たずだ。唯一感謝されたことは、夕食の魚を釣ってくることだけ。

僕が世界を動かす?無理、無理。日本?無理、無理。学校?無理、無理。だってコロナだから。学校行事はことごとく中止。生徒会長である僕は名ばかりで何の役にも立っていない。「だってコロナだから」の言葉は便利だ。こうやって何もやらずにこのまま終ってしまいそうな嫌な予感 がした。

今、父は熊本で単身赴任。母は鹿児島で一人でレストランを始めた。それもコロナが流行する一ヶ月前に。普通なら辞めるところ、全てテイクアウトにして今ではテレビ局が取材に来るほどの人気店だ。母は、「だってコロナだからね。チェンジ&チャレンジ」と言う。そうだ!僕も最初はこんな気持ちだったんだ。生徒会長になってコロナ禍の学校生活を有意義に過ごせるように変化して挑戦しよう!が公約だった

 この夏休みに僕が出来ること、この状況で、この環境で出来ること、鹿児島の小さな港町で出来ることは、海岸のゴミ拾いだ。一ヶ月拾って拾って拾いまくった。毎日いろんな物が流れ着く。中国や韓国から流れてきたペットボトルやゴミ、日本のペットボトルやゴミもだ。ということは、他国に日本のゴミも流れ着いているはずだ。拾っている時、砂浜でキス釣りをしている一人の男性がいた。彼が帰った後、砂浜に餌が入っていたプラスチックパックが捨ててあった。大人だ。 それも僕がゴミを拾っていたのを見ていた人だ。でも腹は立たない。だってそのゴミを拾ったから。

僕の家の前の海にはウミガメがいる。近くの砂浜には産卵に来る。そんなきれいな海を守るためにほんの少しだけ僕は役に立った。今僕は海洋プラスチックごみでできた靴をはいている。かっこいい靴だ。気に入っている。今僕に出来ることはほんの小さなことだ。世界規模、地球規模で考えると馬鹿みたいに小さなアクションだ。長い夏休みも終わり、八月十七日帰寮しいつも通りの寮生活が始まった。今何が自分に出来るのかを常に考えたい。「だってコロナだから」と逃げるのではなく「だってコロナだからチェンジ&チャレンジ!」という気持ちで前向きに一人一人が小さなアクションを起こす。そして大きなアクションへと変化していけばいいと思う。具体的に何をやればいいのかまだわからない。

僕の将来の夢は日本一の漁師だった。しかしこの夏、少し変わった。世界中の美しい海を守るために何かをしたい。僕がはいているこの靴が五年後には幻の靴となり、海洋プラスチックごみゼロとなる日が来るかもしれない。そうなってほしい。