優秀賞

「小さな一歩から」

香川県立高松商業高等学校 1年 池田 理那

あんこがぎっしり詰まったお饅頭。戦国時代から受け継がれている東かがわ市の伝統菓子「ぶどう餅」。季節のフルーツが宝石のように輝くケーキ。私の家は曾祖父の代から続く和洋菓子店だ。駅前にお店を構えていることから、観光客の方や通勤・通学の方がよく菓子を買いに来てく れる。

そんなお店で昨年から始めたプロジェクトがある。「びんリユースプロジェクト」だ。プリンやゼリーに使用している容器の瓶をお客さんに返却してもらい、熱殺菌してもう一度容器として利用する。返却した瓶が二十個になると五百円分のクーポン券をお渡しする仕組みで、徐々に返却される空き瓶の数が増え、ごみの削減につながっている。

このプロジェクトを私が提案したきっかけは、中学三年生の時のごみ処理施設見学だ。そこではごみが私たちの身長の五倍以上の高さまで積み上げられていた。案内係の人によると、この量のごみが連日運ばれてくるそうだ。想像をはるかに超える量に圧倒され、私たちが日ごろいかにたくさんのごみを出していることかと身につまされた。

このことから私はごみ問題について知り、改善策を探したいと思うようになった。一年間に約五千万トンものごみを排出している日本の現状に対して私たちが考え、実行できることは何だろう。その結果私が思いついたのが、「びんリユースプロジェクト」の看板を製作し、店頭に置くことだ。看板が人の目に止まる時間はわずか一瞬。そのため、デザインや内容などお客さんに興味を 持たせるためにはどうすればよいか。何度も家族で話し合いをし、試作を重ねやっとの思いで看板を製作した。

看板を設置した数日後、お店に行った私は目を疑った。すでに何人かの人が瓶を持ってきてくれていたのだ。予想では、瓶をお店まで持参するのは面倒だから返却する人はあまりいないだろうと思っていた。お客さんたちの意識の高さに驚かされた。さらに、周囲の人にもこのプロジェ クトを伝えてくださったおかげで多くの人が興味を持ってくれるようになった。自分からプロジ ェクトを提案する際は実行できるのか不安で苦労もあったが、いざ行動してみるとそれ以上に私が学んだことがある。

一つ目は些細なことでも始めてみることが大切だということだ。大きなことをしようとすると 難しいと感じ、二の足を踏む場合が多いが、身近なことなら取り組みやすい。たとえば環境問題は地球規模の深刻な問題だが、私たちが少し意識を変えて行動することが大きな変化につながるはずだと私は考える。

二つ目はみんなで協力することの力だ。実際、リユースプロジェクトは私一人の力では成り立たなかったと思う。看板製作や瓶の殺菌に協力してくれた家族、そしてたくさんのお客さんが私に力を貸してくれたからこそ成功したのだ。ごみ問題に限らず世界の問題についても、もっと多くの人が考え協力すれば、解決が可能になるのではないか。

今世界中で新型コロナウイルス感染症が蔓延し、日本では外出自粛が強く求められている。このような状況の中、私たちのお店でも新たな問題が生じた。それは、食品の廃棄量の増加だ。客足が少なくなったことで売れ残る商品が増え、フードロスにつながってしまう。そこで現在私が考えているのは、売れ残った商品を格安価格でオンライン販売することだ。食品の廃棄量を減らし、必要な人に安価でおいしいお菓子を楽しんでもらえる。

どんな問題にぶつかったとしても、違った視点から物事を捉え直し、周囲を巻き込みながらチャレンジすることで道は開けると私は思う。できないとあきらめる前に自分に何ができるのかを問い続け、小さなことでも取り組んでいきたい。この小さなプロジェクトがごみやフードロスの削減に向けて、そして地球規模の問題の解決の一助とすると信じて。