審査員特別賞

世界中の女性に笑顔を

学校法人市川学園 市川高等学校 1年 衛 千尋

「生理の貧困」という言葉を聞いたことがあるだろうか。もしかしたら、あまり耳にしたことがないかもしれない。しかし、「生理の貧困」は世界中に潜んでいる深刻な衛生問題の一つである。

私は今年の夏休みに、アメリカの高校生と一緒に、私たちの地球で起きている様々な社会課題について話し合うオンラインワークショップに参加した。その中で「生理の貧困」についても取り上げられた。私は今まで全く知らなかった生理事情についてたくさん知り、とても驚いた。

「生理の貧困」といえば、経済的な理由で生理用品を購入できない女性や女の子がいる、ということだけを考えがちだが、実はそれは問題のたった一部である。例えば、きちんと性教育がされていなく、生理に関する知識が乏しい人が多かったり、衛生問題の解決には欠かせない清潔な水道水がなかったりする場所はたくさんある。また、生理を「汚いもの」「恥ずかしいもの」とみなし、隠したり、隔離生活を生理中の女性にさせたりする慣習がある国も少なくない。しかし、「生理の貧困」の中で、最大の問題としては、先進国・途上国問わず、生理や性教育について話すことがタブーであるという風潮が強いため、問題自体が話し合われず、解決しづらいということである。

ワークショップ終了後、参加したメンバーから有志で日本の高校生三人とアメリカの高校生三人でチームを作り、「生理の貧困」をどう解決していくか話し合った。このグループ内には、南米にルーツを持つアメリカで育った子や日本に生まれたアフリカの子などもいて、様々な視点から議論することができた。

私たちは案を出し合った結果、来年春にメンバーひとりの出身地、南米ペルーで「生理の貧困」を解決するためのNPOを立ち上げることにした。ペルーは発展途上国の中でも比較的安定した経済成長を遂げているが、男女格差があったり、教育の質が低く、中途退学率が高い。また、学校では性教育をほとんど行っていなく、いわゆる「生理の貧困」が深刻な問題となっている国の一つである。

活動の第一歩として、生理の仕組みや生理に関する情報などを一冊にまとめた絵本を作り、家庭に配布する。この絵本はすべて絵で描かれているため、字が読めない方でも内容を全て理解することができる。また、家族の男性の方も絵本を読むことによって、生理についての知識をより広げることができる。さらに、NPOとしては他の途上国に事業を拡大する際、翻訳する手間を省けるという利点もある。

次に、都市部の学校や公民館など人が集まりやすい施設を訪ねて、一角にブースをつくり、作った絵本を置き、さらに不定期で生理や衛生についての講習を行うことにする。たくさんの方に気軽に聞いてもらいたいため、このブースでは無償の生理用品も置く予定である。

また、学校などの施設にアクセスしづらい農村部では、バスを使った移動式教室で講習を行う。バスの中にはもちろん都市部と同じように絵本や無償の生理用品も置く。農村部でも都市部と同じような衛生教育を実施することで、地域間格差を少しでもなくしていくことができる。さらに、国全体で「生理は恥ずかしいものである」という風潮の打破も目指していきたいと思っている。

この活動はペルーで始めるが、今後他の途上国や地域にも進出し、世界へ広げていくことが私たちの目標だ。経済は成長しても、「生理の貧困」の問題は我々の知らない場所で女性や女の子をこれからも蝕んでいくだろう。だから私はこれらの活動を通して、彼女たちの苦痛を少しでも和らげてあげたい。そして、「生理の貧困」を地球の新しい未来からなくしていきたい。