外務大臣賞

「人の繋がりで出来ること。」

豊中市立第十四中学校 3年 稲中 瑞希

ある日、私の元にケニアに住んでいる友達から一枚の写真が送られてきた。それはコロナ禍のケニアの様子だった。私はその写真に衝撃を受けた。写真に写るケニアの人はマスクをしていなかった。その代わりに、パンやみかん、アボカドの皮にゴムをつけたものを口にあてていた。その頃は日本でさえもマスクの流通がなかった。貧困格差の大きいケニアはもっと厳しい状況にあるのは間違いない。何か行動できることはないか、しばらく考えていた。

私は小学校時代をケニアで過ごした。今でもケニアの人たちによくしてもらった思い出を大切にしている。とにかくマスクを作ってみよう、そう考えた。手芸屋さんで布とゴム紐を買ってきた。せめて気持ちだけでも、と華やかな柄を選んだ。実際、作ってみると一枚作るのにも時間がかかった、何とか五十枚が完成したところで、もっとできることを模索した。でもどれもこれも「一人の力」では限界があった。そこで私は生徒会役員に立候補し、マスクをケニアに届ける計画を立会演説会で公約にした。想いを言葉にしたら、多くの人が賛同してくれ、計画を進めるための準備が始まった。まずマスクを生徒会の仲間と集めた。すると予想以上のマスク、そして文房具まで集まった。しかし次の壁があった。それは「どうやってケニアに届けるのか」だ。ケニアにその荷物を送るためには約二万円もかかることがわかった。そこで生徒会の仲間と相談して募金活動をすることにした。毎朝昇降口で呼びかけてみると、あっという間に目標金額を達成でき、嬉しい驚きがあった。そんな中、私たちの計画を母校のナイロビ日本人学校の先生に話す機会があった。私は小学生の時に交流したナイロビのスラム地区にある小・中学校に寄付したいと話した。私の友人が通う学校だ。先生は快く協力して下さり、日本人学校の生徒と物資を届けてくれることになった。みんなで荷造りした物資が無事ナイロビに到着した連絡を受けた時、私はマスクが届いたことの感動とともに、人の繋がりに感動した。この計画は絶対に一人では実現できなかった。物資の寄付や募金に協力してくれた多くの生徒、準備を支えてくれた生徒会の仲間や先生方、現地でマスクを届けてくれた日本人学校のみなさん。色んな人の繋がりが私の小さな国際貢献を支えてくれた。

私は自分の言葉によってたくさんの生徒が行動してくれ、私だけでなくみんなも一緒にアフリカの人々と繋がれたということがすごく嬉しかった。誰かが平和のことを考え、それを言葉にすれば人が繋がる。そして行動を起こせば、地球のこれからや、どこかの国の誰かを変えるきっかけになる。このことを一人ひとりが信じることでどんどん世界は一つになっていくはずだ。今は世界中が大変だ。しかしその中でも、地球のために私達に何ができるのかを考えるだけできっと何かが動き出していく。私はそのことを強く感じた。