中学 優秀賞
世界へ羽ばたけ、日本のトイレ
福岡大学附属大濠中学校3年 今西 由莉香

私は毎晩、家のトイレ掃除をしています。その理由は、昔からトイレには神様がいると 言われていますし、掃除を終える度に、一日の疲れた心まで浄化されるからです。家族からの「いつもトイレがピカピカで嬉しいよ。」という言葉は、私のやる気をさらに奮い立たせてくれます。

実は、私は外でトイレを使う時も、次の利用者のために、自分が入った時より、出る時 の方が綺麗であるように心掛けています。こうした日本人の公共意識によるトイレの清潔 さは来日外国人を感嘆させています。また、公共トイレだけでなく、優れた多機能トイレやユニバーサルデザインのトイレが無料で使用できる事も世界では類を見ない事実ですが、それを普段意識している日本人はさほど多くありません。

世界一といわれる、清潔で便利なトイレが日本では利用されていますが、世界では不衛 生なトイレからの細菌感染で一日に一六〇〇人の子供が死亡し、九億人近い人々が屋外排 泄をしていると言われています。中には、衛生的なトイレの普及にあと四〇〇年かかると 言われている国もあるほどです。また、世界の学校の三分の一には適切なトイレがなく、中学校の八分の一にはトイレそのものがありません。この事実を知った時、私は二ヶ月ほど前のある体験を思い出しました。学校があと十分ほどで終わるという時に突然、「本校の トイレは故障により今から使用不可です。」という校内アナウンスが流れたのです。故障の 原因は学校で行われていた工事に貯水タンクの水が大量に使われた事でした。幸い短時間 で済み、困った生徒は少なかったのですが、もしこれが丸一日続いていたとしたら、全校 生徒、職員を併せると二三〇〇人以上もの人達が大変な思いをした事でしょう。しかし、 同じ地球上には、学校にいる間、ドアも仕切りもなく不衛生な場所で排泄をしなければならない同世代の子供たちがいます。彼らの中には、家にすらトイレがない子もおり、真夜中も遠い場所まで歩いていかなければなりません。進化を続ける日本のトイレ技術には、そのような状況を大きく変える力があると私は思います。その例として、水道設備不要の水洗トイレが挙げられます。トイレ内部に蓄えられた水で排泄物を流すと、汚水と排泄物を微生物が分解し、綺麗な水にして戻してくれるというものです。元々は災害用に開発さ れ、二〇一七年の九州北部豪雨でも活躍したそうです。「日本のトイレは素晴らしい」とただ言われるだけではなく、素晴らしいからこそ、その技術を世界が抱える課題の解決に役立てるべきではないのでしょうか。

私は今晩もトイレ掃除をします。実は毎回十円の報酬を貯金しているのですが、先日、 その貯金を世界のトイレ普及のために献金しようと決めました。その日から、貯金箱に十円玉が入る時の「チャリン」という音を聞く事が一層楽しみになっています。