「創作活動って興味はあるけど、何をしたら良いかわからない…」そんな方に必見!創作活動をするにあたってのポイントを、第24回全国高校生創作コンテスト短歌の部の受賞者と高校教員に聞いた。

短歌の創作ポイントを押さえよう!

西日本短期大学附属高等学校  城 尊恵 先生

―短歌の魅力を教えてください

日常の暮らしの中で心が動いた瞬間を切り取り、それを五・七・五・七・七の調べにのせて表現する短歌は、老若男女を問わず親しむことができる文芸です。
 歌人で文芸評論家の三枝昂之氏が短歌について「短歌は人の体温に一番近い表現形式」と述べておられますが、ここに短歌の最大の魅力があるように思われます。日常の実感の中から生まれる言葉であるからこそ、人の心を育てることができるのだと思います。 

【基本とポイント】
①いのちを慈しむ気持ちを創作の立脚点とすること。
②自分の実体験から創作の題材を探し、実感に基づいた表現をすること。
③心の揺らぎを感じた場面や事柄をしっかりと捉え、その情景などを具体的に言葉にしていくこと。
④平易な言葉を用いること。
⑤散文的な説明に陥らないように心がけること。

【身につく力】
①豊かな情操が培われる。
②自己を客観視する力が養われ、自己理解が深まる。
③お互いの作品を読むことで、想像力が鍛えられ、他者を理解する力が高まっていく。
④表現力や語彙力が身につく。

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短歌の部 受賞者インタビュー

最優秀賞 西日本短期大学附属高等学校  副島  亜海 さん

 

―このコンテストに応募しようと思った理由を教えてください

古典の授業の時、こちらのコンテストについて担当の先生から説明があり、その授業の中で短歌と俳句をはじめて創作しました。自分が表現したいことを短い音数にまとめるのは難しかったのですが、先生にアドバイスをいただきながら、何度も推敲を重ね、ようやくできあがった作品を応募することになりました。

今回は自主的にコンテストに応募しようと思ったわけではありませんが、新たなことに挑戦してみて自分自身の心の成長を感じることができました。

―受賞作品の誕生秘話(こんな場面で思いついた など)や込めた思いを教えてください

今、私は祖母と一緒に住んでいますが、以前は別々に暮らしており、休日になると大好きな祖母の家によく遊びに行っていました。祖母の家には畑があり、祖父が亡くなった後、祖母はたった一人で畑を耕し、野菜などを作っていました。暑い日も、寒い日も一生懸命に畑仕事に励む祖母の姿が印象に残っています。

先生から「自分の心が揺れたときことを作品にしなさい」と言われ、朝から畑仕事に精を出す祖母のことを歌に詠みたいと思い、創作しました。  

―受賞作品の創作にあたって、工夫したこと、苦労したこと、楽しかったことをそれぞれ教えてください

詠みたいことははっきりとしていたのですが、はじめての短歌の創作のため、どのように表現したらよいのかわからず、言葉選びに苦心しました。自分自身が伝えたいことを31音にまとめることは、とても難しく、書いては消し、書いては消しを繰り返しました。

しかし、納得のいく言葉を探すために辞書などを引いていると、今まで知らなかった言葉に出会うことができ、苦心しながらも言葉を獲得していく過程が楽しく感じられました。

―受賞作品の創作を通して、得たことや成長したことがあれば教えてください

短歌は五・七・五・七・七という少ない音数で自分自身が伝えたいことを表現しなければなりません。伝えたいことを的確に表現する言葉を見つけ、読む人にそれが伝わったとき、今までに味わったことのない喜びを感じることができました。

そして、普段から自分の心の動きに敏感になることや「伝えたい」という明確な意識を持って言葉を発信することの大切さに気づくことができました。この発見が短歌の創作を通じて私が成長できたところだと思います。

―これからコンテストに応募する人に、創作にあたって心がけるとよいことなど、アドバイスをお願いします

まずは、難しく考えすぎずに、素直に自分が伝えたいことや自分の思いというものを歌に詠んでみるとよいと思います。

私の場合はここからさらに焦点を絞り、その情景を具体的に表現していくようにしました。なかなか言葉が見つからず苦労しましたが、あきらめずに推敲を重ねていくうちに納得のいく言葉を見つけることができました。

実際に短歌や俳句の創作をしてみて、何気ない日常の一コマの中に創作の材料があることがわかりました。

―創作活動に苦手意識や難しさを感じましたか?

今回はじめて短歌と俳句の創作にチャレンジしましたが、創作用紙を渡されてもすぐには歌や句が思い浮かびませんでした。

短歌は31音、俳句は17音と音数に制限があり、その上俳句には、季語を入れなければならないというルールもあります。苦手意識はありませんでしたが、難しいと感じたのは、自分が詠みたいと思うことを少ない音数で表現しなければならない点で、字数に合う言葉をなかなか見つけ出すことができませんでした。

―初めて創作するにあたって、どのように方法を学びましたか?

先生は最初、本校の卒業生や在校生の全国コンクール入賞作品を例に挙げて、創作を行う際の心構えや創作のポイントについて説明をされました。

次に「心が揺れた出来事」についてよく思い出すように言われました。それから、写真を撮るとき、被写体をズームアップするように、最も詠みたい対象や事柄に焦点を絞り、その情景をできるだけ詳しく言葉で描写するように言われました。

言われた手順で創作した作品を先生に見せて、アドバイスをいただき、書き直しては、またアドバイスをいただくという作業を何度も繰り返し、推敲していきました。

―今回、創作活動を行ってみて意識に変化はありましたか?

最初は難しいと感じていた短歌や俳句の創作でしたが、歳時記で季語を調べてみると、日本語には美しい言葉がたくさんあることがわかりました。また、辞書で言葉を調べていくうちに、多くの知らなかった言葉と出会うことができ、それがとても楽しく感じられました。

じっくりと自分の心と向かい合い、それを言葉で表現することのおもしろさを体験できたことで、また短歌や俳句を作ってみたい、もっと語彙力をつけていきたいという意欲がわきました。

短歌の部 指導教諭インタビュー

西日本短期大学附属高等学校 城 尊恵 先生

―本コンテストにはどのような位置づけで取り組みましたか

生徒の情操を育むことを目的とし、2006年度より短歌・俳句の創作を授業に取り入れ、生徒が創作した作品をこちらのコンテストにも毎年応募させていただいております。

ハイレベルなコンテストに挑戦するためには、生徒たちは自分自身の内面にしっかりと向き合わなければなりません。それが、自らの感性を磨くことにつながっているように感じます。

―ご指導はいつ、どのようにされましたか?

期末考査の後、二週間ほどかけて授業の中で短歌や俳句の創作を行いますが、作品の背景などについて生徒一人一人からヒアリング行い、具体的にアドバイスをしていきます。

なお、学校全体として取り組んでいることはございません。

―具体的にどのような指導・アドバイスをされていますか?

まず生徒たちには、いのちに対して慈しみの心を持つこと――これが、文芸作品を創作する際に最も大事なことである、という話をします。

次に、過去に全国コンクールで入賞した生徒作品を題材に挙げ、具体的な創作のポイントを説明していきます。

その後、実際に創作をさせ、提出された作品についてその背景などについて生徒から聞き取りを行い、「心の揺れ」を感じたときのことを、じっくりと具体的に表現するようアドバイスしています。

―創作活動に取り組むことは、高校生にどんな効果があるとお感じですか?

思春期の子どもたちの心は揺らぎやすいものであります。その多感な自身の心と対話をしながら短歌や俳句を創作する中で、自己に対する発見が生まれます。

また、お互いの作品を読み、感性を刺激し合うことが他者への理解へとつながっていくのだと思います。

こうした体験を経ることにより、生徒たちの心は成長を遂げているように感じます。

 受賞作品を読んでみよう!
  短篇小説の部    現代詩の部    短歌の部    俳句の部
 
 ★応募に関する詳細は応募概要ページでご確認ください