7月1日から募集開始となる「第26回全国高校生創作コンテスト」の短歌部門審査員を務める歌人の田中 章義先生。短歌だけでなく、世界を旅しながら、ルポルタージュ、紀行文、絵本などを多数執筆してきた田中先生に、「言葉との向き合いかた」や歌を詠むときのコツなどを聞いた。

 

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戦国武将や幕末の志士も短歌を詠んだ

―田中先生が短歌と出合ったきっかけを教えてください。

高校生の時に、劇作家であり演出家であった寺山修司が十代の頃に詠んだ短歌と出合いました。ちょうど『サラダ記念日』がベストセラーになった時で、俵万智さんのエッセイに記されていたのが寺山修司の短歌です。教科書で習う世界とは全く違った、十代だからこその躍動感や息づかいに惹かれ、自分でも詠んでみようと思ったことを覚えています。今日の気持ちは今日の自分にしか詠むことができない――そんな思いで十代だからこその表現にこだわりました。この時の短歌50首が第35回角川短歌賞候補となり、翌年、予備校時代に詠んだ短歌50首で第36回角川短歌賞を受賞し、本格的に創作活動に入りました。

―短歌の魅力はどういうところにあるのでしょうか?

短歌は、千数百年前の奈良時代末期には存在していました。「万葉集」では、時の天皇や庶民の詠み人知らずのものまで、立場を超えてさまざまな人が歌を詠んでいたことがわかります。

国語の教科書に載っている歌人ばかりでなく、戦国武将や幕末の志士など、歴史上の人物たちも実は短歌を詠んでいます。坂本龍馬や吉田松陰、高杉晋作、西郷隆盛、伊達政宗、今川義元などもすばらしい歌を詠んでいるんです。こうした人々の歌も入れた、おすすめの100首を『十代に贈りたい心の名短歌100』(PHP研究所)という本にまとめたので、機会があればぜひチェックしてみてください。

ほかの誰とも違う、自分だからこそ詠める歌を

ー歴史上の人物も詠んでいたというのは興味深いですね。

たとえば、幕末の志士として名高い坂本龍馬はこんな歌を詠んでいます。

世の中の人はなにとも言はば言へ 我がなすことは我のみぞ知る

坂本龍馬の人生は、「日本を今一度洗濯したい」と、心から願って歩んだ人生でした。他人の目ばかりを気にせず、自分の信じたものを大事に、常に社会全体のことを思い続けたのです。

みなさんも、他人と同じ、いかにも短歌的な短歌表現ではなく、かつて誰も表現しなかったようなものを、自分だからこその言葉で詠んでほしいと思います。部活動でも、恋でも、誰にも言えなかったLGBTの思いでもいい――自分にしか詠むことのできない、自分らしいテーマを見つけて、短歌を創作してほしいと思います。