ここからは「全国高校生創作コンテスト」の短歌部門に応募を考えている高校生に向けて、上達するポイントを教えてもらおう。

【ポイント1】人間以外の生きものとも対話をする

花でも、空でも星でも、風でも、雲でも、グローブやバット、サッカーシューズ、乳酸菌などでもいいので、人間以外の生きものと対話をするように、作品を詠むのもいいのではないでしょうか。

人間同士の対話はメールでも電話でもできますが、人間以外の生きとし生けるものと会話をするときには、実は「57577という不思議な携帯電話」が、とても有効です。

眼に見えない微生物とも、宇宙でいちばん大きな眼球の持ち主とも、ぜひ57577という、「ココロの携帯電話」「ココロの望遠鏡」「ココロの顕微鏡」を使って、対話してみてください。

【ポイント2】嫌われものにも、チャームポイントがある

「つくづくと鴉(からす)の黒さ見つめおりきらわれものにも命ありけり(榎早苗)」という短歌があります。ごみをあさるなど、現代の社会生活の中では嫌われがちなカラスも、カラスなりに一生懸命に生きています。日常生活で嫌われがちなゴキブリも日本に50種類以上いる中、家の中で不快な思いをさせるのはわずかに数種類のみで、残りは森などで有機物を分解してくれる、地球の「お掃除屋さん」でもあります。

ネガティブに思われがちなもののよさを見出すことも、いい歌をつくる道になり得ます。

【ポイント3】身の回りにある、生きもののパワーを見つける

「摘まれても摘まれてもなほ地に太くアスパラぐんぐん伸び上りたり」(杉山治子)という短歌があります。どんなに摘まれても、摘まれても、負けずに大空をめざして伸び上っていくアスパラガス。一度や二度の失敗で、決して大事な夢を諦めない強さ、しなやかさを植物たちも教えてくれます。身近にある自然界の生きものに学ぶことも、十代の表現を磨くきっかけとなり得ます。植物同様、私たち人間も同じ大地に育まれ、生かされているのですから。

【ポイント4】見えているものではなく、存在に思いをはせる

幕末の志士の一人に「山岡鉄舟」という人がいます。「晴れてよし曇りてもよし富士の山もとの姿は変わらざりけり」という歌を詠んでいます。見えている富士山のすばらしさを詠んだ人は、千数百年の短歌の歴史でも多いのですが、あえて「見えない富士」を詠んだところがこの歌の魅力です。晴れている富士山だけが富士山なのでしょうか。眼では見えなくても、確かにそこに存在する富士山。「もとの姿」の尊さ、本来の存在に思いを馳せた一首。いろいろなものに応用できると思います。今後に向けて、こんな詠みかたもあることを知ってほしいと思います。

ー最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

毎年、短歌部門の審査員をするなかで、多くの作品に出合います。入選作になる作品はいずれも思い入れがあるのですが、たとえば、第18回の最優秀賞を受賞した竹本聖さんの「タテからも ヨコからみても 「1」は「一」 そうだ私は 唯一なのだ」という発見の歌は、今でも印象に残っていますし、そうした歌を、自分が連載している雑誌の中などで取り上げることもあります。

イタリアには「今日という日は残りの人生の最初の日だ」という言葉があります。スペインには「多く持っていない人が貧しいのではなく、多く欲しがる人が貧しい」という言葉があります。モンゴルには「知り合いがいるのはそこに草原があるのと同じだ」という言葉があります。ドイツには「一つの平和は、十の勝利にも優る」という言葉があります。ベトナムには「実を食べて、その木を植えた人を思う」という言葉があります。

どれも、千年以上にわたって語り継がれた言葉です。短歌もこうした言葉と同じ、千年以上にわたって語り継がれたものがたくさんあります。

人間の一生よりも、言葉は遥かに長生きです。時には、「言葉の長老」たちから教わるようなつもりで、何世代にもわたって語り継がれた言葉・受け継がれた思いと向き合ってほしいと思います。それがきっと、今日という日や未来をさらに充実させることにもつながっていくと思いますので! 旧(ふる)くて新しい、短歌や言葉の魅力とぜひ向き合ってほしいと思います。

第24回高校生創作コンテスト募集要項はこちらでチェック!

 
【たなか・あきよし】
歌人。1970年静岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学1年生のとき第36回角川短歌賞を受賞。以後、「地球版・奥の細道」づくりをめざし世界を旅しながら、ルポルタージュ、紀行文、絵本など多数執筆。世界で詠んだ短歌が英訳され、平成13年国連WAFUNIF親善大使に就任。JICA「21世紀のボランティア事業を考える会」検討委員、国連環境計画・地球環境平和財団「地球の森プロジェクト」推進委員長などを歴任。短歌集の他、絵本や人物ルポルタージュなどの著述もあり、松井秀喜選手や北島康介選手の社会貢献活動を紹介した単行本も執筆。BEGINなどミュージシャンの歌詞も手掛ている。