国際協力特別賞
繋げたい、私からあなたへ
秋田県立秋田高等学校 1年 平尾 織花

私はこの夏、カンボジアスタディツアーで大切な出会いをした。私には将来、国際協力に携わり日本や世界で起きている問題に対して力になりたい、という夢がある。カンボジアに向かう前は歴史や文化などの様々な資料やデータを見て臨んだ。そして、この研修で学んだことを伝え、一人でも多くの人に国際協力に関心をもってもらいたい、自分が協力できる何かを探したいという思いで参加した。

内戦、地雷、難民、貧困。そして、「途上国」というイメージを抱いてカンボジアへ出発したが、 現地に到着してそのイメージは覆された。プノンペンには多くの日本企業が進出し、高層ビルの建設が進み、急速な都市開発が進んでいた。

しかし、都市部から少し離れると、道路も舗装されておらず、電気も通っていない家が多かった。 洋服を抱えながら物売りをする子供もいた。深刻な「格差」を感じた。

現地の小学校へ訪問した時、今の就学率はどれくらいですか、と尋ねると 「カンボジアの就学率は九十パーセントです。」 と答えてくれた。この数字を聞いた時、カンボジアの教育は以前よりは普及してきていると感じた。 小学校の子供達は、熱心に学習し、学びたいという意欲や希望が伝わってきた。そのため、私は子供達がきちんと教育の機会を得られるような環境にあるのだと思った。

しかし、この考えは単なる自分の思い込みだった。小学校へ通う男の子の家へ招かれ、家族の現状を見せてもらった。その家族は、首都から遠くはなれた農村部で暮らしていた。仕事につけないため、村から何時間もかけて歩いていった森の中で枝を集め、箒を作り販売し、収入を得ていた。 一つ十円で売られるその箒は、一日中作らなければ十分な収入が得られない。そのため、男の子は 学校から帰るとすぐに家の手伝いをしていると話した。 「僕は学校に行っているけど、そのせいで弟は学校に行けないし、勉強もできない。弟のためにも 僕が学校をやめて行かせるべきだと思っているんだ。」
男の子は自分の思いを私に打ち明けてくれた。私はこの時初めて伝わらない声や現状があることを知った。自分の家族が生き延びるために一日中働き、学ぶことより今を一番に考え、学校を途中でやめてしまう。学びたいのに学べない子供達がいる。子供達には、夢や希望がある。そんな未来やある子供達全員に学ぶ楽しさを知って欲しいと思った。数字やデータの背景には、届かぬ人の声や問 題の本質があり、私が本当に目を向けなければいけなかったのは、現状だった。数字にとらわれてはいけない。数字がすべてではないのだ。

帰国後、ずっと男の子の言葉が頭から離れず、毎日男の子のことを想っている。私にできることは何だろう。私一人の行動や言葉で世界を変えていくのは正直、難しいと思う。しかし、カンボジ アの現状や出会った男の子の声を私がかわりに伝えていく。そして、知ってもらう。私からあなたへ、この想いを伝えればそれを聞いて知った人がまた、誰かにこの想いをつたえてくれる。次々と広げていく想いは、いつか必ず大きな輪となって世界を変えていくことができるはずだ。思いやりの手を繋いで、思いやりの心を抱くきっかけを多くの人に与えたい。

私は今後、活動報告会を企画している。カンボジアの本当の現状、そして現地の人の声を聞く大 切さを伝えていきたいと思っている。私は、この男の子と出会い、知ることができなければ、こうして行動することができなかったであろう。この出会いは、私を大きく変えてくれた。だから、「私」 と「カンボジアの男の子」のように、「私」と「あなた」という一つ一つの出会いを大切にして、これからも世界中の人との関わりを持ち続けていきたい。