国際協力機構理事長賞
私を変えたその「一歩」 〜私が変われば世界も変わる〜
学校法人 聖啓学園 佐久長聖中学・高等学校 3年 大塚 悠未

 

「将来は国際協力に携われたらいいな。」小学生の頃からNGOに興味を抱いていた私は、こんなことを漠然と考えていた。

 高校二年生の秋、私は改めて自分の進路を考え直してみた。『国際協力』言葉では理解していても、具体的にイメージするのは難しかった。「現地ではどのような環境下で、どのような生活を送っているのだろうか。」「本当に必要とされている支援とは、どのようなものなのだろうか。」私は、発展途上国のリアルを知らなかったのだ。

 私は、そのリアルを知るべく、カンボジアへボランティアに行くことに決めた。最初は家族に猛反対された。正直、一人での飛行機や海外は、自分でも不安だった。でも、私は『このまま変われないこと』のほうが怖かった。だから、家族を説得し、後戻りしないと決意した。

 私には、この機会に成し遂げたいことがもう一つあった。それは、現地の人々にお米を届けるために、学校で古本回収を実施することだ。とは言っても、私は、自分からアクションを起こしたり、人前に立ったりすることが苦手だった。そのうえ、今まで学校で個人がボランティアを企画したという前例を聞いたことがなかった。初めての一歩を踏み出すのには、とても勇気が必要だった。「本は集まるのだろうか。」「運営は上手くいくのだろうか。」私は不安で動き出せずにいた。そこで、一人の先生に相談してみた。「私、古本回収をしたいんですよね。カンボジアの人々にお米を届けるために。」と。先生は、「いいじゃん!やってみれば?」と思った以上に前向きな反応を示し、背中を押してくださった。そのおかげで、私は自分の言動に少し自信を持つことができた。それから、書類を作成したり、先生一人一人に企画の説明・依頼をしたりした。時間も手間もかかる作業だったが、ようやく学校の許可を得ることができ、このプロジェクトは始動した。友人にも手を借り、回収準備や校内での宣伝活動を行った。活動していくうちに、自ら手伝ってくれる人も現れ、運営メンバーは当初予定していた倍にまで達した。宣伝活動の甲斐もあってか、思った以上に沢山の古本が集まった。

 それから私は、少しの不安と大きな期待を抱いてカンボジアへ旅立った。現地では、病院や学校、キリング・フィールドなどを訪れ、生活環境やカンボジアの歴史を学んだ。孤児院へ行った際には、日本からカレールーを持ち込み、子どもたちと一緒にカレーを作った。そのカレーと寄付したお米をみんなで食べた。子どもたちは皆、「美味しい!」と喜んでくれた。カレー鍋の前には、おかわりをする子どもたちの列ができていた。普段、募金や寄付をしても、その先を見る機会は中々ない。今回、自分で企画・運営をして、実際に支援先の子どもたちの笑顔を見ることができたのは、とても貴重な経験になった。カンボジアの教育・生活環境は、まだ恵まれているとは言い難いが、そんな中、自分の夢に向かって一生懸命努力している子どもたちの姿がとても印象的だった。今回届けたお米は、そんなカンボジアの人々のエネルギーになってくれれば嬉しい。  様々な壁にぶつかって、古本回収の実施をやめようかと思うこともあったが、最後まで続けて本当に良かった。半年が経った今でも、「二十年務めていて初めてだった。」「善意を持っている人は多いが、行動に移せる人は少ない。」と褒めてくださる先生がいる。『いくら頭の中で考えていても、行動に移さなければ意味がないんだ。』『もっと自分の言動に自信を持っていいんだ。』そんなことを教わった気がする。あのときの『一歩』のおかげで、私は変われた。知らない世界を見ることができた。

 後悔しないために、自分の成長のために、さあ!その一歩を踏み出そう。