7月1日から募集開始となった「第26回全国高校生創作コンテスト」の俳句部門で審査員を務める俳人・文筆家の堀本裕樹先生。自らの創作の傍ら、入門書の執筆や句会を開催するなど、幅広い層へ俳句の楽しさを伝えている。近年ではピース又吉直樹氏との共著など多方面で活躍している堀本先生に、俳句創作のコツなどを聞いた。

 

 

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「17音で宇宙が詠める」と語った師との出会い

―堀本先生が俳句と出合ったきっかけを教えてください。

俳句との出合いは大学2年生、19歳のときです。当時、小説家になりたいと考えていて、文章を自分なりに修行していました。その一環として俳句を詠むことが小説を書く上でプラスになると考えたんです。なぜそう思ったかというと、夏目漱石にしろ、芥川龍之介にしろ、昔の文豪は俳句に精通していましたし、良い俳句をたくさんつくっていました。だから自分も、俳句という韻文を磨く事で、小説のような散文の力も磨かれると考えたのです。それで、國學院大學に進んだ時に俳句サークルに入って、そこで俳句創りをはじめました。

大学時代の俳句サークルはきっかけにはなりましたが、そんなに熱心にのめりこんでいったわけではありません。ただ、その時のサークルの師範であった、鎌田東二先生との出会いは大きかった。鎌田先生は宗教哲学が専門で、非常に文学にも精通した方で、先生に言われたのが「俳句は宇宙を詠めるんだ」という言葉。俳句は世界一短い詩といわれていますが、その短い17音で宇宙が詠めるんだと。それがすごく胸の中に残っていました。その後、大学を卒業してから雑誌などの俳句欄に投稿し始めました。そのうちに、自分の句が次第と入選するようになり、そうなると非常に励みになって、だんだんと面白くなって。ひょっとして自分は俳句に向いているんじゃないかと思うようになりました。いろいろなところに投稿することで、自分の俳句の実力がどういうものかを確かめつつ、のめりこんでいったんです。

―堀本先生が考える俳句の魅力は?

俳句は省略の文芸といわれます。17音ですべて言うことは無理なんです。そこは潔くあきらめながら、そのなかで省略とか余白の部分を生かしていきます。生かす、というのは読み手にどれだけ想像させるかというところで、これが俳句の奥深さだと思います。

1つの句に対して、いろいろな物語が受け手によってそれぞれ広がっていきます。作品になったらそれをどう鑑賞しようが、受け手の勝手で、自由なわけです。これは、いろいろな芸術作品にもいえることだと思います。たとえば、ピカソの絵を前にして、作品の隣に本人がいれば、どういう作品か聞くことができますが、美術館はそうではないですよね。見る人がピカソの作品だけで感じること、思うこと、でいいと思うんです。作品の時代背景や作者の思いはもちろんあるわけですが、作品そのものだけではそこまでの情報量を持っていないですから。

俳句も受け手が読んで、「私はこう思う」「僕はそうではない」と、自由に考えられることが大事なんじゃないかと僕は思うんですよね。俳句は究極に情報量のない表現方法です。象徴度が高いという言い方ができると思います。象徴度の高い作品をどうやって自分なりに想像力を膨らませて、具体的に具象的に解釈するかというのが、受け手にとっても非常にスリリングなところだと思います。