優秀賞
始まり
沖縄県立開邦高等学校3年 金城 初穂

 

別にネパールに格段、興味があったわけではなかった。でも、何かに呼ばれているような気はした。

中国昆明経由で2017年、12月31日、私はネパールに降り立った。日差しが強く、目を細めながら見たその景色は日本から来た私の目をとらえて離さなかった。そんな中、私の目に飛び込んできたのはゴミである。気づけば、どこを向いてもゴミがあり、そこら中に捨ててある。ネパールに着いた時の高揚感とは裏腹に、これらの事実に私は落胆の色を隠せなかった。ネパールとゴミ。あの壮大なヒマラヤ山脈のイメージからは想像できない暗い影がネパール全体を覆っていた。

今回私は、ネパールのゴミ問題解決のために働いているNGOのビジョントリップに参加した。このトリップの中で、一番私の心に残っているのはネパールの子供たちと行ったゴミ拾いだ。それは、私たちが小学校や中学校の時にやったものとは訳が違った。「ゴミ拾い」というより「ゴミかき集め」だった。とにかくゴミが多かった。

しかし、やはりどこの国に行っても子供というものは純粋で可愛かった。ネパールはその独自の文化の中で、ゴミに触れることに抵抗を感じる人がほとんどだ。しかし、私たちがなんの躊躇もなく拾っているのを見て、なんだ、拾っていいんだと言うように子供たちはゴミを拾い始めた。得意そうに集めたゴミを見せてくる子もいた。ネパールのゴミ問題の解決の鍵は子供達かもしれない。そう思った。

ネパールから帰国して私は、あのゴミ問題を詳しく調べたいと思うようになった。それと同時に、発展途上国で活動するさまざまなNGOなどの働きにも興味が湧いてきた。「国際協力」に関わる自分が何か偉くなるような気がした。その時私は、ネパールの人々をはじめ、発展途上国の人々をかわいそうだと思った。

発展途上国のために何かしたいと思った私は、国際協力などについての本を読みあさった。その中の一つに私はショックを受けた。そこには現代社会を必死に生きる、疲れ果てた日本人の姿があった。私たちの方がよっぽど「かわいそう」だった。そのことについて考えているうちにあるものが私の頭の中に浮かんできた。それはネパールの子供たちの笑顔だ。私は、あの笑顔のどこを見てかわいそうだと思っていたのだろう。そこには私のエゴがあった。人間とは気を抜くとすぐに優越感という磁石に引き寄せられる生き物だ。

私は発展途上国への支援を否定している訳ではない。ただ、その活動をする時に、私は心に刻みたい。発展途上国で何か支援をしているからといって私は決して偉くない。ただ、私が偶然生まれた日本というこの国が、たまたま他の国より一足早くシステムを整えただけのことだ。その過程で、もちろん日本はたくさんの失敗をした。失敗をしながら今考えられるベストの体制を導き出した。発展途上国がこれから発展していく中でやはり様々な失敗の機会があると思う。その時、先に失敗してしまった先輩としてアドバイスをするのが私たちだ。何も偉くない。先進国は別名たくさん失敗しちゃった国である。

このネパールのビジョントリップは私の考え方を大きく変えるきっかけとなった。もちろん、今から経験していく中でまたこの考えも変わる時が来るかもしれない。その時もまた今回のような少しショッキングで結構面白い体験があるに違いない。最後に、たくさん失敗しちゃった国からきた人間として、私は今から失敗しちゃうかもしれない国の人々にこのように話したい。私の国はこんな感じで失敗しちゃったんだ、だから君達はこんな風にはしないでね。