独立行政法人国際協力機構理事長賞
行動して、現状を知る
福島工業高等専門学校 3年 齋藤 真緒

 

今、日本を含め、世界で多くの問題が起きている。差別、貧困、飢餓、紛争、自然災害など様々である。それらの問題に対して、力になりたいと思う人も沢山いるはずだ。では、そのために私たちには何が出来るだろうか。募金活動、支援物資を送る等、日本から出来る支援がある。私も以前は、それらが自分に出来る最善の行動だと思っていた。しかし、昨年の夏にネパールにボランティア留学をしてから、その考え方がガラリと変わった。

二〇一五年にネパールで大震災があった。私自身も二〇一一年に東日本大震災を経験した。その時の経験を生かしてネパールの人たちを元気づけたいと思い、ネパールに留学することを決意した。この留学を通して、私は今まで知らずにいたネパールの現状を目の当たりにした。私が大震災を経験した時は、一年も経たないうちに震災前と変わらないくらいの生活を送ることが出来ていた。しかし、ネパールでは未だに建物の復旧が進んでいない所があった。山間部では外で勉強することを強いられている子どもたちもいるそうだ。また、私は現地のスタッフの方に震災当時の様子と今の復興状況について話を伺った。私は彼らの言葉に衝撃を受けた。私たちが日本から送っている支援金は、ほんの数パーセントしか国民に渡っていないというのだ。お金の使い方に関するネパール政府の知識が十分ではないからだそうだ。私は、募金箱にお金を入れれば多くの人が助かると思っていた。しかし、それは間違いだった。私は現状を知らずに、支援が出来ていると勝手に思い込んでいた。実際にネパールに行かなければこのことに気づくことが出来なかった。

留学以来、より良い支援・復興について興味を持ち、帰国してから、ある企業の講演会に行った。その講演会で今でも印象に残っている話がある。その企業が災害の起こった国にお米を支援しに行ったのだが、その国にはまずお米を炊くものが災害によって全部なくなっていたそうだ。企業の方は

「私たちは現地の人たちの声を聞かなくてはいけない。現地に行かなければ、このことに気づくことが出来なかった。」

とおっしゃっていた。私はその言葉にとても共感した。

私は三年生になった春に、改めて気づかされたことがあった。それは、ネパールへの留学以来、ボランティア活動に参加出来ていないということだ。参加したい気持ちはあったが、時間がないと言い訳をして行動出来ずにいた。とても悔しい気持ちでいっぱいになり、その時から頭で考えるだけではなく、それを実行することにした。私の学校では三年次から研究室配属があり、私は「持続可能な開発」について学ぶことが出来る研究室に所属している。そして、後期の授業では東京でホームレスの方に食事を配給するボランティアに参加する予定だ。また、被災地である地元の復興に携わりたいと思った。私の実家は帰還困難区域にあり、帰宅出来る日が来ても、戻ってくる人は僅かだと予想されている。私はネパールを訪れた際、ボランティア活動の一環として、学校の壁に絵を描いた。その絵を見るために多くの子どもたちが教室に入って来て、とても喜んでくれた。その時私は、絵が持つパワーを間近で感じた。この経験を生かし、地元の建物に絵を描くボランティアは出来ないかと、町役場の方と話し合っている所だ。この活動によって多くの住民が戻ってくるかは分からない。しかし、この「行動」によって、何をすれば住民が帰ってきたくなるかを知ることが出来ると私は信じている。

今、頭で考えてはいても、中々それを実行出来ない人がいると思う。しかし、行動しなければ現状を知ることも出来なくなる。世界の幸せのために、私たちに求められているのは「行動」ではないだろうか。私はこれから生きていく中で、常に外の世界へ動き出していきたい。