国際協力特別賞
“私にいい”と“世界にいい”
豊見城市立豊見城中学校 3年 大城 弥生
「毎日を楽しみながら“私にいい”と“世界にいい”をつなげていってほしいです」
私に誰かの幸せについて考えるきっかけをくれたのは、一枚のプリントに書かれたこの言葉だ。本当の国際協力の難しさを私に気づかせてくれたのもこの言葉だった。
チョコレート。甘さの中にほんのり香るカカオの風味が感じられるチョコレートは私の大好物だ。そんなチョコレートがフェアトレードという仕組みの中で売られていることを知ったのは、中学一年の地理の授業でのことだった。フェアトレードとは、発展途上国の比較的弱い立場にある生産者と強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で取り引きすることで、貧困のない公正な社会をつくるという仕組みだ。その労働者の中には私達のように教育を受ける権利を持つ子供もいると知った。それなら消費者である私達がフェアトレードの仕組みの中で売られる商品を購入することで貧困に苦しむ人々を救うべきだ。近年先進国の間で広まるこの考えに私はとても納得していた。美味しいチョコレートが食べられてそのお金で遠くの誰かを救えるのなら“私にいい”と“世界にいい”をつなげることができる。そんな時、ある記事を目にした。「労働環境が整っていない企業の商品が多く販売されれば、その分労働者の負担が大きくなる」という内容のものだった。ハッとした。確かに販売量に伴って生産量が増えれば、労働時間も増え、収入を得たとしても自由に使える時間は無くなってしまうだろう。そうなれば働く子供達も教育を受ける時間を失ってしまうことになる。それは“世界にいい”といえるのだろうか。私達が考えていたことはただの一方的な思いやりだったのだろうか。しかし、商品が売れないことには今の困窮状態から抜け出すことはできない。その時私は本当の国際協力の難しさを知った。
今の私に、“私にいい”と“世界にいい”をつなぐために何ができるか、と聞かれても何も答えることができない。それでも答えを出すことを諦めない。諦めてはいけない。今の世の中を理解し、現地の人々の幸せに寄り添うことが、“私にいい”と“世界にいい”をつなぐための一歩になるはずだ。今、こうやって考えていることも未来への一歩になっていて欲しい。“私にいい”と“世界にいい”がつながった時のチョコレートは一体どんな味がするのだろう。