国際協力特別賞

「カンボジアの窓から見た世界」

石川工業高等専門学校 3年 髙木 大雅

コロナ禍において、簡単に海外へ行くことのできない状況の中、僕のクラスにカンボジアから留学生がやって来た。彼との出会いは僕にささやかだが、貴重な国際交流の機会を与えてくれた。仏教徒である彼は日本人の僕と比較的考え方が似ていて、共感できることが多かった。しかし、彼が住むカンボジアという国は今なおインフラ整備が十分に行き渡っていない深刻な状況であること、また、農村部を中心に子どもの貧困問題や教育問題を抱えていることを知った。だから、彼は今ここで学んでいる建築の知識や技術を将来必ず自国の発展のために生かしたいと言っていた。

祖国のために貢献したいという彼の熱い思いに触れた僕は、物事をいつも先進国の枠の中だけでしか見ておらず、新興国や発展途上国の立場から考えるという幅広い思考が欠けていたことを痛感し、恥ずかしくなった。

僕は将来街づくりに携わる仕事に就きたいと思っている。街づくりの最大の意義は、安全性と快適さの両立だと思う。そのためには水・緑・食糧の豊かさやインフラ整備は不可欠である。また、街の原動力はコミュニティの広がりであり、それを支えている要因の一つに質の高い教育があるのだと思う。ただ、街づくりと一括りに言っても、それぞれの国が抱える問題は多種多様でその問題解決の方法や手段は必ずしも同じではない。そのために最近巷でよく耳にする「SDGs」の17 の目標を糸口にそれぞれの国の状況に応じて必要な目標を組み合わせながら、解決に向けて努力することが大切なのではないかと思う。それはまるでジグソーパズルのピースを一つずつはめ込んでいくような地道でかけがえのない大切な作業のように感じる。

各国の抱える問題はそれぞれ異なるが、その一方で、「環境問題に国境はない。」といわれるように自国内だけでは解決できないような問題もある。このような問題に対しては、隣国や、同じ問題を抱える国どうしが連携を図りながら共働作業としての取り組みも重要ではないかと思う。そのためには他国の文化や歴史など幅広い知識を深めることが必要となる。それと同時に、自国についても相手にきちんと伝えられることが求められる。国と国との相互理解を深めるために僕は日本人の一人として、自国のことについてより深く学んだ上で国際交流に臨むことが最大の礼儀だと感じた。僕たちは地球という家に暮らす家族なのだという意識を持って、互いの知と知を繋げることが大切だ。そして、自分の常識を壊し、視野を広げることで、真のグローバル社会が形成されていくのではないかと思う。

先日サステナブル建築の重要性について学んだ。サステナブル建築とは、設計・施行を通じて省エネルギー・省資源などを取り入れた建築のことである。日本でサステナブル建築による街づくりを行う場合、四季がある日本の気候を利用して、夏は涼しく、冬は暖かくなるような電力消費の少ない室内環境を整えるのが大切だと感じた。また、湿度の高い日本の風土を考えると、風通しの良い間取りの工夫や水分を吸収する土壁の利用なども重要な要因となるだろう。そう考えると、元来日本家屋にはサステナブル建築の優れた要因がたくさん詰まっており、随所に日本独自の伝統技術が散りばめられていることに気づかされる。僕は昔ながらの日本家屋の良さを残しつつ、今の人が住みやすいような新しさを加えてリノベーションした家こそが今日に欠かせないサステナブル建築なのだと感じた。しかし、残念ながら近年日本では和室離れが進んでいる。僕は街づくりを通して、もう一度日本家屋の素晴らしさを見直し、日本の伝統の再構築に貢献したいと思った。

いつか時が流れてカンボジアの彼と再会した時、日本人として胸を張って語り合えるように今は世の中で起こっている様々な問題に好奇心を持ち、それにきちんと向き合い、的確に対処できる力を身につけたいと思った。