3月25日、神奈川工科大学で行われた「第3回 KAIT Racer GP」は、AIで走る自動運転カーレースだ。第1回は学内の大学生のみの参加だったが、第2回以降、高校生も参加できるようになった。今回参加した4校の生徒たちは、AI技術についてレクチャーを受け、予選で試運転を体験後、大学生と共にレースを競い、奮闘した。

 

AI技術の進化で工学と情報学が融合

「工学を学ぶ人は多いですが、その一方で、日々進歩するAI技術にはあまり触れられていないという現実があります」

大会本選のはじめに、そう語ったのは、脇田敏裕教授(自動車システム開発工学科/知能モビリティ研究室)だ。

「本学も工学部と情報学部に分かれ、互いのことを教え合う機会があまりありません。産業が発展するために必要なのは、2学部が交わること。このレースに勝つためには、工学と情報の両方の知識が大切です」と、複合的な学びの意義について脇田教授は説明した。

 

複合的な知識が求められるレースの登場

ルールは簡単だ。2分間でより多く周回したチームが勝利。途中、壁にぶつかるなどしてラジコンカーが停止した場合、人間が手でコース上に戻すことができる。公平な競技にするため、参加大学生はAIを専門として研究していない学生に限られている。また、画像を使って「ここに行け」という「目標点設定方式」で自走させることが課される大学生に対し、高校生は人が操作したものを見てAIが真似る「模倣学習方式」によってラジコンカーを走らせる。大学生とくらべ、高校生がより簡単に挑戦できる仕組みだ。

「予選では、高校生が圧倒的に速かったので、大学生から始めます」と脇田教授。いよいよレースのスタートだ。

 

AI技術のおもしろさを体感

ラジコンカーのレースを見慣れている人にとって、本レースはちょっと風変わりだ。高スピードでサーキットを走るラジコンカーレースと異なり、壁にぶつかっては止まり、探るように前進する。トラブルでしばらくスタートできない車両もある。しかし、コースを覚え、やがて順調に走り出していく。

ただし、これは短時間でレクチャーを受けた高校生(AI初心者)も参加するレースだからだ。学内では研究が進んでおり、「AIカー」と「人が操るラジコンカー」の競争は、高スピードなものとなっている。この日は雨天で中止となったが、外の広いサーキットでデモレースが予定されていた。

さて、いよいよ高校生の番だ。どうしても右に寄ったり、調整に手間がかかったりし、大学生がサポートする場面も見られた。紅一点の女子生徒が参加する藤沢工科高校のチームは、スムーズな走りを見せる。スタートまで時間がかかった相模田名高校のチームは、走り始めるとセンターラインに沿って見事な走行だった。

 

優勝は高校チーム!

結果、優勝は相模田名高校となった。2位は総合産業高校、3位は藤沢工科高校、ベストラップ賞は向の丘高校と、高校生たちの健闘が目立った。相模田名高校の新3年生の善方達也君、西川亜輝斗君、矢野克耶君の3人は、理系クラスの自動車好き。

「大学に進学した時に、必要な知識を得ることができました」と矢野君は話す。高大連携が効果的に機能したイベントとなった。

 

◆AIが走らせる自動運転ラジコンカーレースKAIT RacerGP 開催概要

【開催日時】
2023年3月25日(土)
【開催場所】
神奈川工科大学 図書館
【参加チーム】
計10チーム(大学生5チーム・高校生5チーム)